ワインといえば、白ワインと赤ワインが基本で、ロゼワインやオレンジワインも1つのジャンルとしてわかれている。しかし、それ以外にも伝統的にカラフルなネーミングで呼ばれているワインが存在する。それが、日本語に直すと、緑ワイン、黄色ワイン、黒ワインと呼ばれるもの。これらのワインの正体を、世界各国のワインを扱う「ワインマーケットパーティー」の店長・沼田英之さんに聞いた。

■“緑ワイン”ヴィーニョ・ヴェルデとは?

緑のワイン、ヴィーニョ・ヴェルデの由来は色だけではない

ポルトガルには、直訳すると “緑のワイン”となるヴィーニョ・ヴェルデというワインがある。ただ、ワインの色を見てみると、たしかに黄緑色がかってはいるが、緑と言い切るほどではない。どうしてこのような呼ばれ方をしているのだろうか?

「ヴィーニョ・ヴェルデはポルトガル北西部に位置するミーニョ地方のフレッシュな白ワインです。確かに『ヴィーニョ(vinho)」が「ワイン」、「ヴェルデ(verde)」が「緑の」を表す言葉ではありますが、ヴェルデにはそれ以外の意味もあります。ミーニョ地方は森が多く自然豊かであることから、『緑の地』と呼ばれ、それに由来しているところもあります。また、ヴィーニョは緑以外にフレッシュで若々しい印象を表しており、そうした意味でもとらえられています」(沼田さん、以下同)

実際に、ヴィーニョ・ヴェルデはブドウを早摘みし、微発泡の白ワインとして若々しくフレッシュな魅力がある。それほど熟度もないため、アルコール度数が9%程度と、軽いのも特徴。価格的には1,200円程度で購入できるものが多い。ヴィーニョ・ヴェルデのおすすめの楽しみ方は?

「ポルトガルの沿岸部で造られているワインで、現地でも魚介類と合わせられることが多くなっています。生の魚に合わせたり、調理した魚にレモンを絞ったりして、フレッシュな味わいのパートナーとして飲むのが一般的です。逆に、ヴィーニョ・ヴェルデには香ばしさがないので、パエリアのように焦がした料理と合わせてもいいですね。主役にはなりにくいワインですが、料理の脇役としてうまく付き合ってくれるワインです。現地でもガブガブと飲まれています」

価格も手頃で軽快なワインは、新鮮な魚介類が豊富な日本でもっと親しまれていいワイン。“緑のワイン”の名前のルーツをつまみに食卓で楽しみたい。

■ワイン通には知られた存在、“黄色ワイン”ヴァン・ジョーヌとは?

まさしく黄色のワイン、ヴァン・ジョーヌ

緑のワインの次にチェックしたいのが、黄色ワイン=ヴァン・ジョーヌ。白ワインは熟成の過程で色が濃くなり、やがて琥珀色になっていくが、ヴァン・ジョーヌは、その中間の黄色の状態になっている。こうした色合いになっているのは、なぜなのだろう?

「ヴァン・ジョーヌは、フランスのジュラ地方で特殊な製法で造られた白ワインです。通常、樽の中で熟成させるとき、目減りした分をウィヤージュ(捕酒)しますが、ヴァン・ジョーヌの場合は、隙間にできた産膜酵母の下で最低60カ月、収穫から6年目の12月15日までは熟成させて造ります。特殊な環境下で約6年半を経たワインなので、この黄色い色合いになります。また、酸化的な環境で造られているため、風味も独特。クミンやアーモンドのような香りがあり、シェリーのような味わいです」

ヴァン・ジョーヌができるまでには、うまく産膜酵母がつかなければならず、熟成期間も長いため、特別なワインとして珍重されている。値段も有名産地のシャトー・シャロンは1万2000円〜、レトワールは1万円〜、アルボワは8千円〜と高価だ。こうしたワインはどのように楽しむのがおすすめなのだろう?

「同じジュラ地方のチーズや伝統料理と合わせるのがおすすめです。ジュラには、コンテ、モンドール、モルビエという特徴的かつ有名なチーズがあります。いずれもナッツやクルミのような風味があって、ヴァン・ジョーヌにあいますが、中でもモルビエは酸化的なニュアンスがあってイチオシです。また、伝統料理のコック・オ・ヴァン・ジョーヌという鶏肉のクリーム煮込みは、ヴァン・ジョーヌで煮込むため、合わないはずはありません。ただ、ヴァン・ジョーヌで煮込むのはさすがにもったいないので、同じジュラのサヴァニャン種の白ワインで煮込んでみてはいかがでしょうか」

ヴァン・ジョーヌは、クラヴランという620mlサイズのボトルに入っている(写真はハーフサイズ)。このボトルを目印に黄色ワインを飲んでみよう。

■濃厚な味わい “黒ワイン”カオールとは?

黒ワイン、カオールは2000円くらいで購入できる

最後に紹介したいのは、黒ワインと呼ばれるカオール。グラスに注がれたワインは、通常の赤ワインより色が濃く、見透かせないくらい。まさに黒ワインにふさわしい色合いだ。

「その色合いから、昔から黒ワインと呼ばれているがフランス南西地方のマルベック種などで造られたカオール地域の赤ワインです。マルベックは果皮が厚く色素成分が多いため、非常に黒々としたワインになります。ただ、ミクロヴィラージュという酸素を少しずつ供給させながら醸造する製法をしている生産者も多く、昔よりはタンニンも穏やかで、でき立てから飲みやすいワインも多くなってきたイメージです。色から連想される濃厚でパワフルな味わいが心地よく楽しめると思います。合わせるのは、鴨のコンフィや牛肉などの肉料理がおすすめです」

伝統的に黒ワインと呼ばれているのはカオールだが、最近はアルゼンチンで造られる赤ワインも黒ワインと呼ばれている。

「カオールと同じマルベック種の栽培に適しているのが、アルゼンチンです。同じ品種で造られるので、当然色合いも同じように濃くなります。アルゼンチンは、牛肉の消費量が多く、マルベックのワインとの相性も抜群。特に地元のバーベキュー料理・アサードと共によく食べられています」

肉料理といえば赤ワインだが、これからは黒ワインも選択肢の1つとして覚えておきたい。

緑ワイン、黄色ワイン、黒ワインの色合いは、地域の伝統に根付いたものだった。最近は、人工的に着色したワインもあるが、そうしたものとは違って背景を探ることができるのも興味深い。色から楽しむ伝統的カラフルワインの世界をぜひ楽しんでほしい。

【取材協力:Wine Market Party】
世界から集められた1200種類のワインと、パーティを彩るワイングッズが豊富なワインショップ。テイスティングカウンターもあり、常時10種類以上のワイン試飲が楽しめる。
東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
03-5424-2580/11:00〜19:30

取材・文:岡本のぞみ(verb)