ナイフは木に命を吹き込む“第2の手”。時には使う者の手作業や作品が他者へ雄弁に語りかけるコミュニケーションツールにもなり得るのだ。

ナイフは手の延長。狙い通りに木を削り、形作る大切な道具

長野さん所有のナイフたち。ハンドルにメッセージが彫られているのはヨゲ・スンクヴィストから贈られた宝物。写真下は厚みも幅もあるブレードで、キャンプに持って行くナイフである。

ナイフはあくまで暮らしの道具を生むための道具……そう語りながらわずか30分でひとつの木片をターナーに変えたのはネイチャークラフト作家、長野修平さん。手にするのは世界一の実用ナイフ、モーラナイフだ。

かつてはホームセンターで手に入れた安価な片刃やナタを用いていた長野さんだが、ひょんなことからモーラナイフと出会い、そこから運命が動いた。

ネイチャークラフト作家・長野修平さん。
長野さんのクラフトを変えたフックナイフ。新作は先端が細くなっており、より繊細な作業ができる。

「繊細な刃先のカービングナイフとラフに扱えるアウトドア用ナイフを使い分けています。どちらも握りやすくて自由度が増した気がする。なかでもフックナイフはノミよりもスムーズにくぼみを削れるので世界が大きく変わりました。改めて、自由に削る楽しさを知ったのも収穫」

キャンプでは刃が厚いブッシュクラフト サバイバルかガーバーグを使用。薪を割り、ファイヤースターターで火をおこす。焚き火回りで重宝しているという。

キャンプ場で焚き火をし、その脇で木を削る。ナイフが生んだ火につられて人が集い、輪ができる。そんな不思議な空気感に包まれるのが長野さんのワークショップだ。

モーラナイフの海外アンバサダー仲間やファンとの交流も増えた。言葉ではなく、互いの作品やナイフの使い方で気持ち、そして生き方を伝え合う。長野さんにとってナイフは道具を生み出すための第2の手であると同時に、コミュニケーションツールでもある。

わずか3つの道具で生んだターナー。「日本人は教えた通りの削り方をするけれど、外国の人たちはアイヌ模様や文化について説明を受けたら好きなように作業する。それぞれに自分の削り方があって、僕も刺激を受けました」
ナタは片側のみハマグリ刃にして、木工用にカスタマイズ。

【プロフィール】
長野修平
ネイチャークラフト作家・焚き火&野外料理人

焚き火で肉をあぶりながら、ナイフを使った多彩なワークショップを行うという独自のスタイルが評判となり、2018年よりモーラナイフのアンバサダーに就任。日本はもとより台湾、香港、北欧へと活躍の場を広げている。出身地・北海道のアイヌ文化を研究、アイヌ模様をベースにした木工が得意。

文・写真/大森弘恵