誰にも邪魔されることなく独りの時間を楽しむなら、いまアウトドア派の間で人気が高まっているソロキャンプがおすすめだ。

大自然の懐で心ゆくまで遊んだら、夜は一人で好きな酒でも飲みながら深い静寂に浸る。そんな非日常的なひとときを手軽に味わえるのがソロキャンプの醍醐味だ。それぞれのスタイルの楽しみ方を、実際の体験記を交えながら紹介しよう。

【富士山4WDキャンプ】高原の夜空と朝霧を味わえる 富士の麓の高原キャンプへ

思い立ったら即実行できる身軽さこそ、ソロキャンプの最大の強みだ。道具を愛車に放り込んだら行き先はその日の気分と天気にまかせ、まずは気ままなドライブへと出かけよう。タフな足回りの4WDが相棒なら、どこまでも走れそうで心強い。物産館や道の駅で寄り道しながら軽い食事を済ませ、地元で採れた新鮮野菜やその土地ならではの食材を、夕食のために確保する。

目的地の「朝霧ジャンボリーオートキャンプ場(静岡県富士宮市)」は標高700~1,000m。富士山の西麓に広がるゴルフ場を併設した高原のキャンプ場だ。ほぼ全域から霊峰富士を臨む広大な草原には、日本屈指の面積を誇る全面芝生のフリーサイトのほか、電源付きサイトや炊事場付きのプレミアムサイトもある。

やわらかな芝生はペグ打ちが簡単で、車の乗り入れもできるため荷物の積み下ろしもスムーズに行える。余計な荷物を車に置けるから、テント内も広々として快適というわけだ。1日200サイト限定なので、広々とした空間を贅沢に占領できるのもソロキャンパーにはうれしいポイント。

高原でのソロキャンプでは、たっぷりと時間をかけてこだわりの食事を楽しむのがいい。ダッチオーブンや焚き火台、鍋を吊るトライポッドなどを持ち込めば、本格的な料理が楽しめる。満天の星空と揺れるランタンの灯を眺めながら、独り静かにワイングラスを傾けたい。

【渓流釣りキャンプ】トラウトと戯れる 緑深き渓川音を聞きながら焚き火を楽しむ

近年は賑やかなキャンプフェスを楽しむファッショナブルなキャンパーも増えてきたが、ソロキャンプと聞いて渓流沿いに設営された小さなテントをイメージする人も多いことだろう。アウトドアをよりアクティブにしてくれる渓流釣りは、キャンプととても相性がいい。魅力的な渓流の近くには、必ずといっていいほど素晴らしいキャンプフィールドがあるので探してみよう。

渓流釣りの方法には、昔ながらの餌釣りやシンプルなテンカラ釣りのほか、ルアーやフライなどさまざまなスタイルがある。臆病な渓流魚を釣り上げるのはなかなか容易ではないが、それでも釣り人は自然との触れ合いを求めて朝早くから山奥に分け入る。

そんな渓流釣りキャンプの最大の楽しみは、なんといっても焚き火を前に一日の釣果を振り返るひとときだろう。手早く設営を済ませたら、早い時間からつまみを作って旨い酒を飲みはじめよう。少しの背徳感が酒の味を引き立ててくれる。

ソロキャンプのギアは必要最小限。調理器具は焚き火台と簡易トライポッド、8インチのダッチオーブンだ。一人用の小ぶりなスキレットがあればメニューの幅が広がるだろう。キャンプ用の鉄板なら、野外用ガスストーブに丁度いいサイズの「ヨコザワテッパン」をおすすめする。コンパクトな見た目に反する使い勝手の良さから、多くのキャンパーに愛されている逸品だ。

【湖・カヌーキャンプ】船でしか行けない極上のサイトで 水上散歩と脱俗を存分に堪能

Photo/Katuyoshi Yanagisawa

大自然の中で何もしない時間を楽しめるのがソロキャンプの魅力だが、ときには非日常的なアクティビティで冒険要素をプラスしてみるのも悪くない。そんな男のわがままを叶えてくれるのが、船でしか行くことがのきない特別なサイト「相模湖みの石滝キャンプ場(神奈川県相模原市)」だ。

相模湖南東のいちばん奥に位置するこのキャンプ場は、相模湖が造られた当時から約70年もの長い歴史がある。ここで開かれている本格的なカヌースクールでは、カナディアンカヌーをはじめ、シットオンタイプのカヤックやレーシング艇の体験も可能だ。

車の乗り入れができないため、荷物は必須アイテムであるテントとタープ、テーブル、チェアなどの大物を中心に、よりコンパクトにまとめる必要がある。調理台は超うす型コンパクトな笑’sのコンパクト焚き火グリル「B-6君」がおすすめ。

食料品は現地調達、食品用クーラーはソフトタイプを選ぶことで軽量化を図ろう。カヌーで遊んで疲れたあとの夕食は手抜き料理に限る。地元産の野菜を中心にスキレットでざっくりとグリルしたら、あとはフタをして余熱調理。ときおり爆ぜる薪とさざ波の音を聞きながら、至福の夜を過ごそう。

【バイクキャンプ】キャンプ道具をバイクに積んで 自由気ままに思いつき旅

キャンプ場までのツーリングを楽しんだあと、居心地のいい施設で一泊するスタイル。身軽なソロのツーリングキャンプとはいっても、車ほどの積載量はないためテントは軽量なものを選びたい。さらに1張りのタープがあれば、急な雨でもくつろげる空間になる。

事前にチェックしておいた道の駅に立ち寄り、地元で採れた新鮮な野菜や物産などの食材を集めながら目的地を目指す。テントの設営が終わったら、ゆっくり煎れたコーヒーで暫しの休憩。自然の中で飲むコーヒーの味は格別だ。

山の日暮れは早い。ランタンやヘッドランプなどの照明器具は早めにセットし、ゆとりをもって夕食の下準備に取り掛かろう。日が落ちて辺りが暗くなってきたら、着火剤を使って焚き火台に小さな火を起こす。ソロキャンプの食事なら、大き目のコッヘルとシングルバーナーがあれば十分に賄える。コッヘルをそのまま食器として使えば、荷物が減るだけでなく後片付けの手間も省けて一石二鳥だ。

あとの時間は何もせず、ただ無心に焚き火を眺めて過ごす。頭の中が空っぽになると、自分本来の感性が息を吹き返す。燗にした1杯のワンカップが人生を豊かにしてくれることを実感するだろう。

【アルプス山脈キャンプ】北アルプスの山々に抱かれて 涸沢カールのテント場で眠る

Photo/Takeo Aki

ソロキャンプを始めたら、いつかはやってみたい本格的な山キャンプ。日本列島の中心にそびえる北アルプス南部の穂高連峰は、日本近代登山の発祥地としてアルピニストたちの憧れを集め続ける人気スポットだ。

国内第3位の主峰「奥穂高岳(標高3,190m)」を中心に、3,000m級の峰々がピークを連ねるこの聖域では、神秘的な空色に山の稜線が浮かび上がるマジックアワー(日没)と、美しいモルゲンロート(朝焼け)を鑑賞したい。

早朝に上高地を出発し、ダイナミックな大パノラマを堪能しながらテント場を目指す。宿泊するのは、北アルプスの玄関口「上高地」から約16kmの地点にある涸沢(長野県松本市)のキャンプ場。日本随一の圏谷(カール)の底に登山基地があり、圧倒的スケールのテント場が広がっている。水場や山小屋も近いので登山のベテランはもちろん、初心者でも利用しやすい。

岩場ではできるだけ平らなところを探してテントを張ろう。コンパネ板(500円)を借りればより快適なねぐらができる。登山テントの定番はアライの「エアライズ1」、山メシの定番はフリーズドライのカレーだ。ほかの荷物は削っても、ワインだけは専用のパック(プラティパス)に詰め替えて持参したい。

【秘密基地キャンプ】鬱蒼たる杉木立の森で 軍幕ソロ×4の秘密基地造り

Photo/Kenji Mukano

空前のキャンプブームの最中にあって、ひときわワイルドでディープな独自文化を形成しているのが「軍幕キャンプ」だ。軍幕とは軍用テントのことで、ヘビーデューティな軍用ポンチョをテントに仕立てたもの。機能性と耐久性を重視した、戦場さながらのスタイルを楽しむのが特徴だ。

快適でお洒落なカジュアルキャンプとは違い、こちらは無骨なカッコよさと不便さを楽しむオトナの秘密基地といったところか。普段はソロキャンプを楽しんでいる男たちが、愛用のミリタリーギアと得意のレシピを持ち寄ってパーティーを組む。

バーナーやライターといった利器は用いず、あくまでもクラシカルな専用の器具で火を起こす。料理はすべて直火焚き火だけでこなすのがいい。軍用コッヘルで煮たチリビーンズやアヒージョ、自家製ベーコンをつまみに、安物の箱ワインを飲むのがこだわりの流儀だ。

得意の焚き火料理が揃ったら、メインはワイルドに焼いたビーフステーキ。ミリタリーメスプレートに盛り付け、ファイヤーピットを囲んで本格的な宴会が始まる。アーミーグリーンの軍幕が静かな夜の森に溶け込む。

四季折々の自然に触れながら、贅沢な独りの時間を満喫できるソロキャンプ。テーマを決めれば、楽しみは想像以上の広がりを見せるはず。上質な休息のひと時とインスピレーションを求めて、計画を立ててみてはどうだろうか。