旬のホウレンソウは甘みも栄養価もアップする
ホウレンソウは漢字で「菠薐草」と書く。菠薐とは原産地であるペルシア(現・イラン)のことで、唐代までに中国に伝わり、江戸時代初期に唐船によって長崎に伝えられた。江戸時代の料理書『料理物語』には「はうれん」と記され、煮物や酢の物、汁、和え物が適した料理として紹介されていた。その後、江戸時代後期には西洋種も伝来し、品種の交配が進み、現在のホウレンソウとなったといわれている。
ちなみに、40代以降がホウレンソウと聞いて思い浮かぶのはアニメーションの『ポパイ』ではないだろうか。ホウレンソウの缶詰を食べると一気にパワーアップして宿敵ブルートを倒す、という筋書きでお馴染み。「ホウレンソウを食べないとポパイのように強くなれないわよ」なんて、子ども達はみな母親から言われていたものだ。

ポパイの様にあっという間に筋肉がモリモリになるわけではないが、冬のホウレンソウには実はかなりの栄養が詰まっているのをご存知だろうか。冬の寒さから身を守るため葉が肉厚になり、風味が強くなる。同時に糖度が上がって甘みが増し、カロテンなどの栄養価も時期外れのものと比べると大幅にアップする。
さらにいうと、カロテンが多く含まれる緑黄色野菜の中でも、ホウレンソウは別格だ。鉄分、マグネシウム、マンガン、亜鉛などのミネラル類や、鉄の吸収を助けるビタミンC、造血を促す葉酸とビタミンB群などが豊富に含まれている。もはや王様級に元気の源なのだ。

食べ方としては茹でてシンプルに「おひたし」や「ごま和え」で食べるのが最適だ。特にごま和えはホウレンソウの甘みとゴマのコクがよく合う上に、ゴマにはアンチエイジングに有効なセサミンなどが多く含まれ、お酒のアテとしても健康食としてもおすすめなのである。

ちなみにホウレンソウの根元の赤い部分にはマンガンが大量に含まれている。骨の形成に必要な要素で、骨粗しょう症や生殖能力異常、肌荒れなどを防げる。生活習慣病の予防にもバッチリだ。
文/浅川俊文 写真/遠藤 純