42102【人気店の店主に聞く!本当に旨いラーメン屋 Vol.1】「世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂」/「柴崎亭」店主・石郷岡三郎さん【不定期連載】

【人気店の店主に聞く!本当に旨いラーメン屋 Vol.1】「世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂」/「柴崎亭」店主・石郷岡三郎さん【不定期連載】

男の隠れ家編集部
編集部
目次

ラーメン。それはもはや、ひとつのジャンルとして確立した日本食。どこの駅に降り立っても必ず1軒はあるラーメン屋。東京に限れば、たくさんありすぎてビックリするレベル。となると、我々はたびたび難民になってしまうのだ。「どこのラーメンを食べればいいのだろう?」。——その答えは、人気ラーメン店の店主に聞けばわかるのかも知れない。

これは、かつてお茶の間のお昼時を彩ったモンスター番組のメイン企画「テレ○ォンシ○ッキング」に着想を得て、人気店のラーメンの秘密に迫りつつ、さらにその店主が旨いと思うラーメン屋を紹介してもらうという、“絶対に美味しい店”しか登場しないラーメン企画なのだ。

行列必至の人気店「世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂」にいざ!

東京都調布市に店を構える「柴崎亭」は、ラーメンマニアなら知らない人はいない行列のできる人気店。店主の石郷岡三郎さんもまた、その道では知らぬ人はいないカリスマだ。今回は、その石郷岡さんが2020年10月、新たに世田谷区祖師谷にオープンした「世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂」へ。石郷岡さんが作るラーメンをいただきながら話をうかがった。

ラーメンの道に入ったのはいつから、どんなきっかけだったのでしょうか?

「20歳の頃に半年だけラーメン屋をやってました。その時はラーメンがやりたいとかではなくて、当時働いていた会社の都合でやることになっただけ。けれど半年もしたらバブルが崩壊してお店がなくなっちゃったんですよね。その後はラーメンに関わることなく、和食を5年と飲食の仕事はトータルで10年くらいかな」

「柴崎亭」を始めたのはどういう経緯で?

「柴崎亭は43歳の時(2013年)に始めました。当時、僕はIT関係でプログラマーの仕事をしていたんだけど、住んでいたところの1階にラーメン店の居抜きの空き物件があってね。大家さんと知り合いだったというのもあって、空き物件のままなのもなんだし、それならラーメン屋でも始めてみるか、と。だから、僕がラーメン屋になったのは、たまたま下(の物件)がラーメン屋だったから。イタリアンの店だったら、僕はイタリア料理をやっていたと思うよ(笑)」

「最初はね、サラリーマンをしていたわけだし副業じゃないけど“週末だけ店をやらせてくれ”って大家さんに頼んだんだけど、“それじゃダメだ”って言われてね。だから日中の9時から5時までITの仕事をして、帰ってきてから夜中0時までラーメン屋をやるっていう生活をしていました。おかげさまで行列ができるようになったので、この道1本に絞ることにした。それが9年前ですね。その後、柴崎亭は今のつつじヶ丘に移転して、支店もいくつか出して今に至る、という感じですね」

ワンコイン!「世田谷中華そば」500円(税込)を実食!

カウンター越しに石郷岡さんがラーメンを作る姿をしっかりと見ることができる。麺上げやチャーシューを1枚1枚丁寧に炙る姿は、エンターテインメントのようで、この1杯の付加価値を高めているといえるだろう。

麺、分厚い炙りチャーシュー、メンマ、小松菜のみで構成されたシンプルなラーメン。香味油の素材に至るまでこだわって作られている。ひとくちスープをすすると、懐かしさの中に醤油の香ばしさと臭みのない魚の風味が広がる。旨い!

麺はモチっとした食感で、ツルっと喉越しもいい。「これが醤油ラーメンの正解です」と言いたくなる旨さ。一滴残らずスープを飲み干した後に気がついたが、最後までちゃんとスープが熱いままだったことにも感動した。

それでは「世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂」の特徴とラーメンについて教えてください。

「この店は基本的に“地元の人に長いスパンで楽しんでもらいたい”というのがコンセプトです。オープンした理由も、元々ここにあったラーメン店がコロナの影響で閉めるしかなくなってしまって、替わりにやってくれ、という声が掛かったことがきっかけでした。この店は麺場がカウンターに向いてるでしょ? 普通は反対側の壁に向いてたりするんだけど。本店の柴崎亭も同じだけど、店が流行るひとつの要素にこの麺場の向きが関係していると僕は思っている。だからこの店の配置を見て、やってみようかと思ったんです」

「うちのラーメンはどの店舗も、“ちっちゃい子供からおじいちゃんまで、みんなが安心して食べられるもの”というのがコンセプトなので、時代に流されず、単純でシンプルに、やりすぎない、そんなラーメンになっています。無化調・ノンケミカルであることを主軸に、動物性の油は使用せずシンプルなラーメン。旨いか不味いかはお客さんが決めることで、たまたま僕のラーメンは受け入れられているので、このまま続けていきたいですね」

とはいえ、それだけ材料にもこだわっているのに1杯500円は安いです。

「500円って原価率的に言えば大丈夫なんですよ。ただ税金が高い。消費税を原価率に乗せるかは考え方次第ですけどね。僕としてはラーメンに1000円払っても良いと思っています、もちろん美味しければですけど。だから僕は500円なら500円なりのラーメンを作っているし、1000円のラーメンは1000円に見合うラーメンを作る。なので、このラーメンが特別に安いとは思っていないです」

500円なり、と言いますが実際に食べてみてその美味しさにびっくりしました。

「ありがとうございます。でも、このラーメンは醤油を入れているだけだからね(笑)。タレは作っていないです。小豆島の正金醤油と煮干しのスープのみ。多少、企業秘密はあるけど難しいことは何もしていない、だから500円なんですよ。“餅は餅屋”と一緒で“麺は製麺屋”と思っているので、麺へのこだわりもないですしね。創業当時、実績や付き合いのない僕に麺を卸してくれる製麺所は(柴崎亭のある)調布にはなかった。だけど唯一、20歳の頃に付き合いのあった田村製麺所さんだけが「ぜひやらせてください」って言ってくれて、翌日にはすぐに試作を作ってくれたりと、とても良くしてくれたんです。だから僕はそれからずっと田村製麺所を信頼して、麺はすべて任せています。辛い時も苦しい時もお互い二人三脚でやってきてるからね」

ちなみに、この仕事をする上で心がけていることはありますか?

「嘘をつかない。それは、“正直であれ”ということだから思ったことは全部口に出しちゃう。それは諸刃の剣で、だから敵も多いんだけど(笑)。まぁ、嘘をつかない、正直に生きる、女の子は苛めない。幼稚園の時に教わったことは守っています。例えば、カップラーメン(商品化)のお話とかもいただいたりするんですけど、ラーメンはラーメン屋で食べるから美味しい。小さい子供がいる人に“自分の子供にカップラーメンを食べさせるか?”っていうのもあって。僕が親なら食べさせない。自分が食べさせないのに、人の子にはOKというのはないなと。それも仕事をする上で嘘をつかないっていうことにつながりますね」

「それに正直だから場合によってはお客さんを怒ることや、言うべきことは言ったりもします。食べる側もマナーは必要です。「メンカタ」って言われて「うちはメンカタやらないですよ」「なんでやらないんですか?」「なんだお前、失礼だな」っていうこととかね(笑)」

確かに「やらない」と決めてることに「なんで?」「やれよ」って、知らない人から口を出されるのは嫌ですね(笑)。それじゃ読者に何か一言いただけますか?

「うーん。もし、近くに来ることがあったら寄ってください。ぜひ、食べたことがない人にも食べてもらいたいですね」

石郷岡さんが旨いと思うラーメン屋とは?

本企画の趣旨、美味しいラーメン店の店主が「旨い」と思うラーメン屋を聞けば、ずっと美味しいラーメンが食べられる。これだけたくさんお話いただいた後にうかがうのも忍びないのだが、聞いてみた……。

「美味しいラーメン屋って今そんなに多くないんですよね。僕が個人的に美味しいと思う店は武蔵境にある「東京味噌らーめん鶉」さん。味噌ラーメン専門店なんだけど、“あぁ、この店に来てよかったなぁ”と思う。味噌ラーメンが本当に美味しいですね。それともう1軒、多磨霊園の「中華そば 心」さん。ここも美味しいですよ」

ありがとうございます。というわけで、不定期連載で繋ぐこのラーメン企画。石郷岡さんから受け取ったバトンは「東京味噌らーめん鶉」さんか「中華そば 心」さんへと繋いでいきたい(現段階でまだ取材交渉しておらず)。店主さま、もしこの記事を先に読まれましたら、どうぞ取材のご許可を!

【店舗情報】
世田谷中華そば 祖師谷七丁目食堂
東京都世田谷区祖師谷1-9-14
TEL:非公開
予約:不可
営業時間:11:00~15:00(スープ切れで閉店あり)
定休日:金曜、土曜
公式Twitter:@setagayaramen1
(※限定ラーメン、臨時休業などお知らせはTwitterにて発信中)

編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る