大人が通う飲食店の代表格でもある「すし屋」。四季折々の食材を楽しむだけでなく、繊細な職人技によって仕上げられた一貫を頬張るあの緊張感は、すし屋ならではといえる体験だ。

すし屋を訪れる際には最低限のマナーが必要だが、供されたすしを丁寧に味わうのもまた、客側の心得のひとつ。特に、酒を合わせる場合、その選び方が重要だ。

すしにはやはり日本酒が合う。では一体どんな日本酒を選べば良いのだろうか。ここでは、すしをよりおいしく楽しむための日本酒の選び方をおさらいする。

●すしに日本酒が合う理由

すしには酒が合う。店によってはワインを置いているところもあるが、それでも日本酒との組み合わせは、古来、多くの人に支持されている。じつは、すしと日本酒が合うのには理由がある。

▷米からできている

すしのシャリは米。そして、日本酒の原料も米。つまり、同じものを使ってつくられている。もちろん、日本酒で使われる米は酒造好適米なので、厳密にいえば一般的に食する米ではない。ただ、双方が米を使ってつくられているからこそ相性が良く、互いの旨みや味わいを引き出す相乗効果が期待できるのだ。

日本食ならではの相性の良さということができる。

▷補完効果が期待できる

補完効果とは、ある食材の不足点や欠点を、もう一方の食材が補ってくれる効果のこと。

すしと日本酒の場合、すしの生臭さを日本酒が消してくれる補完効果がある。
もちろん、すしは新鮮な魚介類が使われていることが大前提であり、設備の衛生面も非常に配慮されている。

「うっ!」となることはほぼないが、日本酒を合わせてみると、知覚するかしないかに関わらず魚本来の生臭さが消え、素材そのものの味わいを楽しめる可能性が高まるということだ。

すし、日本酒ともに繊細な味わいだからこそ成立するマリアージュといえる。

●すしのタネによって合う日本酒は違う

すしに日本酒が合うといっても、すしには味わいや特徴が異なるタネがさまざまにある。そのため、タネによって相性の良い日本酒も変わってくるのだ。

ここでは、すしタネを大まかに分け、それぞれに合う日本酒の種類を紹介する。

▷白身のタネの場合

すしの食べ方はひとそれぞれだが、まずは白身から注文していくケースが多い。

タイやヒラメといった白身魚には、すっきりとした日本酒が良く合うはずだ。脂が少なく淡白な味わいの白身は、タネの味を邪魔しない日本酒を選ぶのがベスト。例えば、淡麗辛口の吟醸酒や、酸味が強い日本酒が合うだろう。

▷赤身のタネの場合

赤身のタネとして代表されるのは、マグロやカツオだろう。老若男女を問わず人気があり、すし屋で必ず注文するという人も少なくない。

マグロやカツオの場合、脂が乗っていて旨みが強いという特徴がある。そのため、すっきりした日本酒を合わせてしまうと、赤身の旨みとのバランスが崩れてしまう。合わせるなら、赤身に負けず、米の旨みが強い純米酒がお勧めだ。

▷脂身の多いタネの場合

トロやサーモンといった脂身の多いタネには、オールマイティといえる本醸造酒がおすすめ。タネの脂の甘みを邪魔することなく味わうことができるからだ。もちろん、辛口の吟醸や大吟醸を合わせるのも選択肢のひとつ。

▷タレ系のタネの場合

アナゴをはじめとするタレ系のすしの場合、濃くて甘いタレがかかっていることがほとんど。その場合、タネと同じく甘口の日本酒を合わせたい。

そして、甘いものを先に食べてしまうと満腹を感じるため、できれば後の方で味わうのがおすすめ。または、甘いタレ系には酸味のある日本酒でも良い。味わいが引き締まり、本醸造や吟醸とは違った楽しみ方ができるはずだ。

●すしと合う日本酒を選ぶ際に温度も重要

日本酒は、温度を変えることで香りや味わい、深みが変わる。すしに合わせる場合も同様で、同じ日本酒でも多少温度を変えることで、ひと味違ったペアリングを楽しめるだろう。

すしに合わせるとしたら、冷やまたは冷酒がおすすめだが、タネによっては燗にすることで旨みが増す場合がある。そして、吟醸や大吟醸といった香りが強い日本酒の場合、冷やしすぎると酒本来の旨みが消えてしまう場合もあるので注意が必要だ。

すしをより楽しんでもらうため、店によっておすすめの酒が違うのもまたおもしろい。自分のスタンダードを楽しむのも良いし、店のおすすめを聞いてみるのもまた良い。

和食ならではといえる繊細な「食への探求」を、存分に楽しもう。