日本酒が美味しい季節、秋はそんな時期になる。なんと言っても「ひやおろし」に「秋あがり」の2大美味い酒が楽しめる時期なのだ。

さて、肝心の「ひやおろし」と「秋あがり」とはどんなものなのか。ここでは、なぜ11月が日本酒の美味しい時期になるのかを紹介しよう。日本酒の知見を深めて、今まで以上に日本酒を楽しんでみてほしい。

●なぜ11月は日本酒の時期?

日本酒を好むものにとって、9月から11月は最高の1本が手に入る時期だ。なぜなら、熟成された最高の状態の日本酒が限定品として販売される時期だからだ。

この限定酒のことを「ひやおろし」や「秋あがり」と呼び、どちらも日本酒好きには堪らない味わいを見せてくれるのだ。

▷ひやおろしとは

ひやおろしは、秋の初旬9月頃に出荷される日本酒のことを指す。夏の暑さで熟成が進んだ日本酒で、角が取れて丸みを感じさせる味わいが生まれる。ひやおろしの特徴は、醸造中の劣化を防ぐために2度行う「火入れ」を1度しかしていないことだ。

市場に出回っている日本酒は「生酒」と「火入れした酒」の2種類があり、ひやおろしは当然後者になる。春頃に火入れすることで酒の発酵を止め、味の変化を落ち着かせることができる。そのままの状態で夏を越し、熟成が進むことでバランスが良く口当たりの良い日本酒が生まれるのだ。

そして、ひやおろしは出荷される時期によって呼び名が変わる。9月頃に出荷されるひやおろしを「夏越酒」と呼び、まだ若さを感じる味わいを楽しめる。

10月頃に出荷されるひやおろしは「秋出し一番酒」と呼ばれ、ひやおろしの中でも一番口当たりが良く味わいのバランスも良い状態だ。

11月頃に出荷されるひやおろしは「晩秋旨酒」と呼ばれ、味わいの良さだけではなくとろみを感じられる状態にまで熟成されている。良く言えばまろやかさが格別、悪く言えば味がボケたとも言える。

▷秋あがりとは

ひやおろしが秋の初めの頃に最高の状態を迎えるのに対し、秋あがりは11月を迎え冬間近の秋熟の日本酒のことを指す。ひやおろしも秋あがりも、ともに秋を迎えることで味わい深くなるが、この違いは熟成する時期にある。

どちらも同じように感じられるが、ひやおろしは「夏に熟成される日本酒」で、秋の口に最高の状態となるのに対し、秋あがりは「秋口に熟成された日本酒」となる。ほんの少し後の熟成となったものが秋あがりとされるが、その時期に明確な差は定義されていない。

ひやおろしの項でも話しているが、9月以降もひやおろしは出荷されている。10月・11月と熟成を進めたひやおろしと、飲み頃を迎えた秋あがりでは違いがないようにも思える。

だが、明確な違いは「秋あがりは秋口にはまだ飲み頃を迎えていなかった」という部分だ。秋を迎え熟成されたことで飲み頃となった秋あがりは、11月頃にようやく飲み頃となっているのだ。

▷昨今のひやおろしと秋あがりについて

ここまで話してきたのが、従来のひやおろしと秋あがりの考え方だ。しかし、昨今の考え方では火入れの回数や出荷時期などに“これ”という規定が定まらなくなってきている。

貯蔵庫の品質が向上したことで、これまで外気と貯蔵庫の温度差がなくなった時期に出荷となっていたひやおろしが時期をずらして出荷されるようにもなっている。秋あがりに至っては、1度の火入れとは限らず2度目の火入れを行うことさえある。

秋酒と明確に違うのは生酒だけとなっているため、酒造元もこれまでと同じ味わいではなくなっている場合も出てくる。これもまた面白いことだ。

●自分の口に合うものを見つけてみよう

11月、晩秋の時期は日本酒が最高の味わいになっている時期だと言える。ひやおろし・秋あがりともに円熟した口当たりとまろやかさを持つが、それぞれを飲み比べてみるとその風味や抜けが違うことに不思議と楽しさを覚えるだろう。

今、最も面白みを帯びている日本酒。それぞれの違いを楽しんでみるのも一興だ。