荷物の多いキャンプはクルマ必須と思いきや、ソロキャンプなら工夫すればバイク移動もできる。特に都会に住むキャンパーにとって、身軽にバイク移動できるのなら、クルマがなくてもソロキャンプを趣味にする選択肢ができる。
そこで、実際にバイクでソロキャンプを楽しむ達人である日本単独野営協会の小山仁さんと港玄吾さんにその収納術とインテリアを公開してもらった。
■50ccバイク 小山仁さんの場合
小山さんがソロキャンプで使う移動手段は、ヤマハのギアという50ccバイク。18年前、ソロキャンプを始めた頃から原付スクーターで移動。週末を中心に月に2〜3回、自宅から片道2時間かかる野営地へ通いつめている。
3年前に中古で購入したという愛車の収納は、大型リアボックスとフロントバスケットが中心。大型リアボックスは購入したときにそのままついていたそうだが、130Lはありそうな容量で荷物のほとんどがここに入っている。さらにその上にテントがくくりつけられている。あとはバックパックを前に背負って運転しているそう。小山さんの収納のコツを聞いた。
コツ1:テントはリアボックスの上に固定させる
キャンプ道具を乗せてバイク移動するときは、途中で荷物が落ちないようにしっかりくくりつける必要がある。テントなど、ある程度の大きさがあって、軽いものはリアボックスの上に乗せるのもおすすめ。その際に絶対に落ちないようにバンドで固定。小山さんは自分でバンドを購入して設置したそう。
コツ2:リアボックスの上やフロントバスケットには軽いものをのせる
バイクは走るときに重心をまっすぐにして安定させたいので、リアボックスの上やフロントバスケットなどバイク本体から離れた場所に重たいものをのせるのはご法度。テントやタープなど軽いものを収納しよう。小山さんのフロントボックスに入っているのは、雨用のタープだった。
コツ3:リアボックスの中は下に重いものを入れて、全体が動かないように
小山さんのリアボックスは2段式の大容量タイプ。ここが収納の中心になってくるので、走りを安定させるために下に重いものをのせ、中の荷物が動かないようにポーチに入れてテトリス式に組み合わせ、隙間をなくすのがコツ。
写真では下段の上部が空いているが、収納を分かりやすくするために取り除いている。そこには大きめの布製ボックスポーチが入れられ、実際は隙間なく空間が埋められていた。
リアボックス下段の下にはアイアンテーブルやペグ、ハンマー、食器、椅子などが収納されている。上段も下には扇風機などのやや重いもの、上には軽いものがのせられている。空間が空いてしまったらシュラフなどの布を置いて、全体が動かないように工夫する。
コツ4:ハンドル付近は飲み物や財布などすぐに使えるものを収納
ハンドル周りには、すぐに取り出したいものを収納できるようホルダーが設置されている。例えば、ペットボトルホルダーやリングでエコバッグや小銭入れが吊り下げされている。ナビ代わりになるスマホも見やすい位置にホルダー固定されている。
小山さんのバイクに乗せた収納全体を広げてもらった。細かな道具はポーチの中に入れて整理され、コンパクトに納められているのが分かる。
そして、できあがったインテリアがこちら。ソロキャンプ用の2ルームタイプのテントが完成した。テーマは、「夏を涼しく快適に」。折り畳みのコンパクトな扇風機でテント内の風通しをよくして、座る位置のシュラフの下にウレタンマットを敷いて座りやすくしている。
50ccバイクで来たとは思えない、ソロキャンプには十分なインテリアだ。
■125ccバイク 港玄吾さんの場合
港さんの愛車は、ヤマハのシグナス。月に2〜3回、自宅から約40km離れたこの野営地に愛車のバイクもしくはクルマでやってくる。その日のスタイルによってクルマとバイクを使い分けているそうだ。自宅からクルマの場合は高速道路を使って40分程度、バイクだと一般道路で1時間30分程度かかるという。
港さんの125ccバイクの収納は、ツーリング用のドライバッグとサイドバッグ、リアボックス、シート下収納、足元に置くクーラーボックス。やはり50ccと比べるとかなり積載量はアップする。港さんにもコツを聞いた。
コツ1:タイヤをオフロードに替える
20〜30kgの荷物は積載することになるので、普通のタイヤで河川敷などの未舗装路を走ると滑って危ない。オフロード用のタイヤに替えたところ、その不安はなくなったという。
コツ2:リアボックスには軽いもの
リアボックスの収納はバイク本体から遠くなるため、重いものはのせず軽いもので。食品やプラカップなどを収納。急な雨でもすぐに取り出せるようにレインコートもここに収納している。
コツ3:サイドバッグにはテントや椅子などを収納
サイドバッグにはテントやタープ、シュラフ、チェアなど最初に設営するものを。今回はタープやハンモックを収納していた。
コツ4:重いものはドライバッグに収納し、リアシートに乗せしっかり固定
テーブルやコンロ、たき火台などの重いものは全てドライバッグに収納。これだけで15kgくらいはある。もともとついているヒモをぐるぐる巻きつけて閉じ、さらに落ちないようにキャリアに引っ掛けている。
港さんの収納を全て広げてもらったのがこちら。椅子、ポール、ハンモック、タープ、クッカー、テーブル、かや、ランタン、ナイフ類、たき火台、炭、スパッタシート、ファーストエイドキットなどがある。
港さんのインテリアも完成。今回は、バイクということでハンモックとタープで簡易的なスタイルだ。ハンモックはデイキャンプ用と思いきや、宿泊もこちらで。足が伸ばせて意外と快適に寝られるのだそう。
今回は、たき火メインの仕様にして、火をみながらボーッと時間を過ごすつもりだという。必要なものはインディアンハンガーに吊るし、お腹が空いたら調理をする、気ままで開放的なスタイルだ。
■今年の夏はバイクでソロキャンプに出かけてみては?
ソロキャンプの移動手段をバイクにするのは、意外にも無理なくできることが分かった。ただし、積み込む場所や収納の固定には気を付けるのが鉄則だ。
重い荷物を積載することになるので、バイクの安定感を保てる収納にするのが最大のコツ。実際にバイクを運転するときも、通常よりもバイクをまっすぐにして運転する必要がある。
また、雨が突然降ってくることは珍しくないので、防水のバッグやケースに入れるのも必須。ぜひ、2人の収納術を参考に、この夏はバイクでソロキャンプにして挑戦してみてはいかがだろうか。
【取材協力:日本単独野営協会】
「ソロキャンプの健全な普及」を目指し設立。入会金や会費を取らず、個の集合体としてソロキャンプの普及活動、各種キャンプイベント、清掃活動を中心とした野営地の保全活動などを行っている。野営地でのソロキャンプの見守り希望は、ホームページで受け付けている。
https://tandokuyaei.com/
取材・文:岡本のぞみ(verb)