世界に名を轟かすカスタムナイフの第一人者

原幸治よりも、コージ・ハラといった方が良いかも知れない。原さんは欧米各国のナイフショーで何度も受賞した経験がある作家で、世界中のコレクターに知られる存在だ。原さんは関に拠点を置いてカスタムナイフを製作し、平均して1カ月に1回、海外のショーに足を運ぶという生活を20年以上続けてきた。

段々畑をモチーフにした通称“エアステップ”、竹を模した“バンブー”、日本の文様を施した“モザイク”、そして輝かんばかりの鏡面仕上げのブレード(刃)など、原さんのトレードマークは多く、それは世界で並ぶ者はないといわれるほど、高度なテクニックを駆使している。

「ナイフハウス ハラ」の代表・原幸治さん。

ナイフ自体の精巧な作り。日本人の感性が生むデザイン。他の世界の誰にも真似させないオリジナリティあふれるナイフを作り続けているが、元々は関の刃物メーカーの営業マン時代に、カスタムナイフの草分け的存在である、ボブ・ラブレス氏の作品に出会い衝撃を受け、ほぼ独学で技術を身につけた努力の人でもある。

「物騒な刃物ではなく、見惚れるようなナイフが僕の理想なんですよ。世界に通じる日本人の美意識を追求したいのです」

原さんのこの言葉を聞いていると、昔、武士が刀に装飾を凝らしたのと同じ血が、現代の男たちにも流れているように思われる。とすれば、カスタムナイフを製作する原さんは、いわば現代の関の刀匠だ。

原さんの代名詞「鏡面仕上げ」のブレードを生む磨きの工程。

スタイルは違えど、関の刀の伝統を世界に伝えている貴重な存在なのである。日本のカスタムナイフ愛好家は、そう多くないが、その世界を覗いてみたくはならないか。

「INORI(祈り)」。原さんが世界へ躍り出たきっかけのモチーフ。マチュピチュの段々畑をイメージしている。
「モザイク」着物の小紋柄が美しい。精巧な作りがうかがえる逸品。

文/横山せつ子 写真/天方晴子