カフェやレストランなどの店内で流れていることのあるジャズだが、なんとなく洒落たイメージだけを持っている方もいるだろう。音楽の楽しみ方は人それぞれだが、ジャズの楽しみ方が分かるだけで、ふとした時に聴こえる音楽がさらに情緒あふれるものとなる。

ここでは、ジャズ初心者おすすめの楽しみ方やお勧めの名曲を紹介する。静かな秋の夜長はジャズを味わってもらいたい。

● ジャズの基礎知識

ジャズを楽しむのに小難しい理屈は不要だが、より楽しむために歴史や演奏などの基本的なことを紹介する。

▷ジャズの誕生

1900年頃に、アメリカのルイジアナ州ニューオーリンズで誕生したと言われるジャズ。ニューオーリンズは、奴隷として連れてこられた人や移民が集まった街であり、多様な人種・文化が混ざり合う場所であった。

「JAZZ」の語源は、「卑猥なもの」を指すイギリス語の古語「jass」や、「性的な」「急なテンポ」といった意味を持つアメリカ南部のスラング「jazz」など諸説ある。唯一確かなことは、ジャズはアフリカ系アメリカ人と西洋の文化が交わって誕生したことだ。

▷ジャズの発展と変遷

1920年代には小気味良いリズムの「スイング・ジャズ」が誕生し、メロディラインの中に自由なアドリブを入れた「ビ・バップ」や、ジャズの絶頂期とも評される「ハード・バップ」へと発展していった。

ビバップやハードバップが主流となった1940年〜50年代は、チャーリー・パーカーやマイルス・デイビス、セロニアス・モンクといったミュージシャンが誕生。今なおジャズファンを虜にしている名曲が生み出されたのだ。

その後もジャズは民族音楽やポップスといった音楽とも融合し、幅広い進化を見せている。

▷ジャズの演奏

ジャズの大きな特徴は、即興演奏を中心としていることだ。ピアノや管弦楽器、弦楽器、ドラムなどの楽器が用いられ、2つ以上の音が重なっているコードに合わせて、各奏者がアドリブの演奏をするのが特徴的。

ジャズの演奏では初めに曲のテーマが流れ、アドリブ、テーマへと進んでいく。しかし、ジャズの面白さは、演奏中に奏者同士が曲調を変えたりリズムを合わせたりと、音楽を通じてその瞬間だけのメロディを作り上げることだ。中には最初のテーマをアドリブで始めたり、アドリブが一切ない演奏が行われたりすることも。

いずれにせよ、自由に演奏し一期一会とも言えるメロディを楽しめるのがジャズの魅力のひとつだろう。

● ジャズの楽しみ方

ジャズを楽しむために「絶対にこれをすべし」というものはないが、初心者におすすめの楽しみ方をいくつか紹介しよう。

▷ジャズ喫茶に足を運ぶ

ジャズを流す店は数多くあるが、ジャズ喫茶はレコードのコレクションが豊富で、オーディオにもこだわっている店も少なくない。好きな曲や自分の気分に合った曲をリクエストすることもでき、そのお店でしか聴けない貴重なサウンドに出会えることもあるだろう。

▷生演奏が聴けるお店に行く

ジャズの生演奏が楽しめる店は、国内のいたるところにある。しかし、その中でも有名な店が「BLUE NOTE 東京」だ。ニューヨークに本店を持つジャズクラブとして1988年に東京の南青山に誕生し、国内外のトップアーティストたちが個性あふれるサウンドを奏でる。

ライブを行っている店では飲食が可能なところもあるので、お酒や料理を味わいながら一夜の音楽に身を委ねてみてはいかがだろう。

▷ジャズの映画を観る

ジャズの映画では、有名アーティストを題材にした『ブルーに生まれついて』や、ジャズプレイヤーの苦悩を描いた『セッション』などがある。このほかにも、『バード』や『ラウンド・ミッドナイト』といった作品もあり、ジャズの入り口として映画を観てみるのも良いだろう。

● 初心者におすすめしたい名曲5選

ジャズで演奏される曲には、テーマとなる基本のメロディがある。奏者たちのアドリブを実感したい方は、ここで紹介する曲を聞き慣れておくことをおすすめする。

▷So What

「Kind of blue」というアルバムに収められた一曲。モード・ジャズの名曲として知られ、奏者のトランペッターであるマイルス・デイビスが奏でるメロディは、彼の創造性の豊かさや力強さが表れているかのようだ。

▷My Favorite Things

先進的な音楽を生み出したサックス奏者、ジョン・コルトレーンによる一曲。ミュージカル『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』の挿入曲としても知られ、ジャズの新たな世界を切り開いた作品だ。

▷Moanin’

『Moanin’』は、「ナイアガラ・ロール」と呼ばれる独特の演奏を行なったアート・ブレイキーの名盤。タイトルにある「Moanin’」は「うめき声」などの意味があるが、黒人差別に対する彼の叫びがこの一曲に集約されたのだろうか。アート・ブレイキーの力強いドラムは、聴く者の心にまで響くはずだ。

▷What a Wonderful World

邦題で「この素晴らしき世界」とも訳されるルイアームストロングの代表曲。映画『ジョーブラックをよろしく』や『フォーチュン・クッキー』といった作品でも使用され、耳にしたことがある人もいるだろう。彼は66歳で心臓病を患いながらも、人生に感謝している気持ちがこの一曲に込められているのかもしれない。

▷Saxophone Colossus

1956年にサックス奏者であるソニー・ロリンズが発表した『Saxophone Colossus』。耳心地の良いメロディラインが特徴的で、初心者にもおすすめの一曲だ。アドリブの天才とも表されるソニー・ロリンズだが、自分だけのメロディを追い求める姿をこの一曲で感じてもらいたい。