日本における「技能実習生」の現状を知っているだろうか？ 技能実習生とは、母国では習得できない技能を学ぶために、日本企業で就労している外国人のことだ。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、外国人技能実習制度にいくつかの問題が浮上してきた。また、「外国人技能実習制度を廃止すべき！」という声もあがっている。
そこで本記事では、日本で働く技能実習生について、外国人技能実習制度の廃止問題を解説する。
■日本で働く外国人労働者「技能実習生」とは？
技能実習生とは、母国では習得できない技能を学ぶために、日本企業で就労している外国人のことを指す。日本で習得した技能を母国で活用し、母国の経済発展に活かしてもらうのが目的である。
初めて外国人研修・技能実習制度として開始されたのは1993年だ。現在の技能実習制度とは少し違い、より教育面に力を入れた制度であった。
具体的には、1年目は完全に研修期間であり、そのうち3分の1は座学を実施していた。当初は「外国人に技術を提供できる」と思われていたのだが、実際には想像していた制度とは程遠いものだった。
「労働基準法を無視して外国人に働かせる」などの問題があったことで、現在の技能実習制度に改正され、従来の研修期間が廃止された。いまでは入国当初から「技能実習生」として就労できるようになった。
■技能実習生が減少している
厚生労働省の発表によると、2021年10月末時点の日本で働く外国人労働者が、172万人あまりとこれまでで最も多くなっていることがわかった。
その一方、技能実習生に至っては、新型コロナウイルス感染症の影響で初めて減少した。技能実習生の人数が減少したのは今回が初めてであり、製造業などを中心に広く影響が出る可能性を危惧している。
新型コロナウイルス感染症により、外国人の入国が困難になっている現状では仕方のないことかもしれない。
しかし、技能実習生を採用している日本企業は少なくないため、人手不足や生産性の低下など、日本全体において大きな問題に繋がる恐れがある。
■外国人技能実習制度は廃止すべき？
実は新型コロナウイルス感染症が蔓延する前から、技能実習制度については大きな問題を抱えている。一部の人からは「技能実習制度を廃止しろ！」という声があがっているほどだ。
その主な理由としては、技能実習生の労働環境や暴力、セクハラといった深刻な問題があるのにも関わらず、日本政府が根本的な対策を行っていないためだ。
「現代の奴隷制度は廃止すべきだ！」というように、技能実習生のことを想って発言している人もいる。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの日本人が職を失っている。このことから、「技能実習生ではなく日本人の就労を優先したほうが良い」という声もあがっている。
しかし、これらの意見を採用して技能実習制度を廃止してしまうと、技能実習生によって支えられている日本企業の存続が難しくなる。日本政府はこの事実を知っているからこそ、技能実習制度の廃止を進めていないのだろう。
もちろん、技能実習制度を廃止して得られるメリットは大きいのだが、それに伴うデメリットが深刻であるがゆえ、前向きに進められない複雑な問題だと言える。
■まとめ
本記事では、日本で働く「技能実習生」について、技能実習制度の廃止問題を解説した。
技能実習制度は開発途上国の外国人に日本企業で、「母国では習得できない技能」を学んでもらうための制度だ。技能実習生は多くの日本企業を支えているのだが、新型コロナウイルス感染症により、今回初めて技能実習生の人数が減少した。
また、「技能実習制度は廃止すべきなのでは？」という声もあがっており、制度自体の問題点が浮き彫りになっている。
しかし、技能実習制度を廃止したときのデメリットが計り知れないため、本制度は容易に廃止できるものではない。今後、日本政府がどのように意思決定するのかは定かではないが、深く考えた上で慎重に決定すべき複雑な問題だと言える。
