10394大正創業の天然レトロ喫茶「喫茶去 快生軒」で一息つく|東京・人形町のビジネスマンに愛されるクリームソーダ

大正創業の天然レトロ喫茶「喫茶去 快生軒」で一息つく|東京・人形町のビジネスマンに愛されるクリームソーダ

男の隠れ家編集部
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日本橋人形町に店を構える「喫茶去 快生軒」の創業は、なんと大正8年(1919)というから驚きである。今でこそ古き良き時代を残すレトロ喫茶だが、「ハイカラ」がブームになり始めた当時には、流行の最先端だったことはきっと間違いないのだろう。
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日本橋人形町の甘酒横丁、交差点の近くで大正8年の創業から親子4代にわたり、珈琲を提供してきた「喫茶去 快生軒」。100年という長い長い時間、喫茶店という生業を続ける苦労はまったく想像も及ばないのだが、いつ訪れても明るく優しい味を提供してくれる。

「いい町にはいい喫茶店がある」

喫茶去――。看板に書かれたこの言葉は、主に茶席で使用する禅語だという。意味は「さぁどうぞ、お茶をおあがりなさい」という、さらりとしたものだ。初代がこの禅の言葉を用いて付けた店名通り、この店は老舗という重苦しさもなく、気軽に訪れてスッとコーヒーが飲める、そんな雰囲気であふれている。

黄色い看板には大きく「創業 大正八年」の文字が。

「快生軒」の由来はすぐ近くにある安産の神・水天宮に訪れた妊婦が来店した際、赤ちゃんが「快く生まれるように」、そして「生まれ来る子と同じように、店も長く繁盛していくように」という初代の願いが込められているという。

店のある日本橋人形町は証券会社が多い兜町や茅場町に近く、高度経済成長期ともなれば打ち合わせや、会議室変わりに使う客も多かったという。今でも平日はスーツ姿のビジネスマンが多く、週末には水天宮に参る家族連れや、明治座での観劇帰りの人々で賑わっている。

コーヒー豆は自家焙煎。レトロなミルが歴史を物語る。
昔懐かしいクリームソーダ。定番メニューのひとつだ。

看板メニューのブレンドコーヒーは、専用工場で自家焙煎した自慢の豆を使用する。「ブレンドは店の顔」と四代目マスターの佐藤太亮さんが話す通り、柔らかな酸味が漂う上品な味わいが楽しめる。また、圧倒的に男性からの注文が多いというクリームソーダも人気メニューのひとつ。女性客が多いカフェでは注文できないメニューでも、ここでは周囲の目を気にすることなく楽しめるということだろうか。

店主の佐藤太亮さん。人当たりが良く優しい笑顔。

店を切り盛りする太亮さんは約20年前に異業種から店に入り、現在は弟の栄祐さんとともに店に立っている。喫茶店への転職にあたり先代だった父の考えもあり、喫茶の専門学校で学び、有楽町のレストランでサービス経験もしたという。

「喫茶店の役割はくつろぎの空間づくり。ひと息つける場所を提供するという役割もある。いい町にはいい喫茶店がある、ということだ」という父の教えを、笑顔とともに頑なに守り続けているのである。

初代が岩手県出身ということもあり、岩手の民芸品などもある店内。

【基本情報】 
住所:東京都中央区日本橋人形町1-17-9 
最寄り駅:地下鉄「人形町駅」よりすぐ 
営業時間:(月~金曜)7:00~18:00、(土曜)8:00~15:00 
定休:日曜・祝日

文/沼 由美子 写真/佐藤佳穂

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