ドイツ料理といえば何を思い浮かべるだろうか。ソーセージとビールの国というイメージが強く、正直それ以外の料理はなかなか思いつかないという人も多いかもしれない。そこでこの記事では、ドイツ語検定準一級、ドイツ在住経験があり20都市以上で食べ歩きをした「松本マユ」が、ドイツの食文化や現地で定番のドイツ料理について紹介する。また、ドイツ料理には欠かせないビールの種類や有名な銘柄についても解説しよう。

ドイツ料理の伝統的な食文化について

ドイツ料理への理解を深めるためにも、まずはドイツにどのような食文化があるのか見ていきたい。日本人からすると、非常に変わった食文化に感じることだろう。

温かい料理は一日一回? ドイツの食文化の特徴

日本との大きな違いとして、まずドイツには「温かい料理を食べるのは昼食のみ」という伝統的な食文化の存在が挙げられる。

ドイツ料理を大きく分けると、冷たい料理である「カルテスエッセン(kaltes Essen)」と、温かい料理である「ヴァ―メスエッセン(warmes Essen)」の二種類だ。カルテスエッセンはハムやチーズのように火を通さずそのまま食べられる料理を、ヴァ―メスエッセンは調理した肉・魚料理やスープなどを指す。ドイツでは、このヴァ―メスエッセン(温かい料理)を食べるのは一日一回という食文化があるのだ。

もちろん、ヴァ―メスエッセンを一日に複数回とるドイツ人もいるし、伝統の食文化を気にしていない人も多い。しかし、昼食に調理された温かい料理を食べ、朝食・夕食は冷たい料理を食べることを伝統として続けている家庭もごく一般的だ。彼らは朝食にパンやフルーツ、ミューズリーと呼ばれるシリアルなどを食べ、夕食はパンのほかにハムやサラミ、チーズ、オリーブ、ピクルスなどで済ませている。

日本人は夕食をしっかりと食べる傾向にあるが、ドイツ人は三食のうち昼食をもっとも重要視している。それゆえ昼にカツレツや豚すね肉の煮込みといったボリューミーな料理を食べ、夕食はパンなどを軽めに食べるケースが多いのだ。

ドイツ料理の定番食材といえば

ドイツ料理といえば、真っ先にじゃがいもやソーセージを思い浮かべる人も多いだろう。事実、じゃがいもはドイツ料理の付け合わせとして出されることが多く、ドイツのレストランや学食でメイン料理を注文するとよく添えられている。フライドポテトやマッシュポテト、こんがりとグリルした皮つきじゃがいもなど、バリエーションも豊かだ。

また、ドイツではソーセージの種類が1500以上あるともいわれている。ご当地ソーセージも多く、フランクフルトの「フランクフルター」やニュルンベルクの「ニュルンベルガー」など、地域名を冠したソーセージも豊富に存在する

では、ドイツでなぜじゃがいもやソーセージが定番になったかというと、食糧難の時代が関係している。第一次世界大戦後のドイツは食糧が少なく、餓死者も多数出た。そのため長期保存でき、ドイツの土地でも育ちやすかったじゃがいもが、飢えを防ぐ食材として重宝されるようになった。

ソーセージも同様で、加工肉であり大量の塩をふるため長期保存が可能だったことから、定番の食材となったのだ。よく「ドイツ料理は味が濃い」と称されるが、その理由は保存食にするための過度な塩分が由来とされている。

ドイツ料理の定番【ソーセージ編】

ここからは、ドイツでよく食べられている定番料理を具体的に紹介していく。まずはドイツ料理の中でもとりわけ有名なソーセージについて解説していこう。

ドイツ料理なのに日本にもありそうな「カリーヴルスト」

ソーセージを使った「カリーヴルスト(Currywurst)」は、大衆に愛される定番料理であり、ドイツのB級グルメともいえる。直訳するとカレーソーセージという意味で、焼いたソーセージの上にケチャップとカレー粉をかけたシンプルな一品だ。

カリーヴルストはドイツの首都·ベルリンの名物だが、ドイツ全土で食べられている。ジャンクな風味だが癖になる味わいで、フライドポテトなどと一緒に食べることが多い。

ドイツ料理の定番中の定番「ブラートヴルスト」

ドイツでよく食べられているソーセージを味わいたいという人は、「ブラートヴルスト(Bratwurst)」を注文してみよう。ブラートヴルストはドイツ語で焼きソーセージを意味し、ソーセージのもっとも定番の食べ方といえる。

特にメジャーなのはブラートヴルストをパンに挟み、ケチャップやマスタードをたっぷりかけて食べる方法だ。そのほか豆料理などと一緒に食べることもある。ドイツにはどの街にも必ずといっていいほどブラートヴルストのインビス(軽食を販売している店)があるので、ドイツを旅行する際はぜひご当地のインビスで食べてみてほしい。

ちなみにブラートヴルストによく似た「ブルートヴルスト(Blutwurst)」という名前のソーセージもある。うっかり間違えてしまいそうだが、なんとこちらは豚の血を詰めたもので、かなり癖が強い味だ。ドイツで焼きソーセージを注文する際は間違えいないようにしたいところだが、血詰めのソーセージは日本でほとんど見かけないので、もし出会ったら記念にそちらを食べてみるのもよい思い出となるだろう。

小さく食べやすいソーセージ「ニュルンベルガー」

日本人の舌に合うドイツソーセージが食べたいならば「ニュルンベルガー(Nürnberger)」がイチオシだ。ニュルンベルクの名物だが、ドイツ中のレストランで食べられるうえ、各地のスーパーマーケットでも販売している。

ニュルンベルガーは小指ほどのサイズで、ドイツのソーセージの中ではもっとも小さい部類に入る。焼いて食べるのが一般的で、マジョラムなどのハーブがきいたスパイシーな味がビールとよく合うのだ。

ドイツ料理の中でも特におすすめ「ヴァイスヴルスト」

ミュンヘン名物のヴァイスヴルスト(Weißwurst)は、ドイツのソーセージの中でも特に伝統的だ。直訳すると白ソーセージという意味を持ち、その名の通り白くて太い見た目をしている。

ヴァイスヴルストは仔牛の肉を使っているため食感はふわっとしていて、パセリなどのハーブが香るが非常に食べやすい。ゆでて調理することが多く、外側の皮をむき中身だけ食べるのも面白い。

ドイツ料理の定番料理【じゃがいも編】

続いてはドイツ料理においてソーセージと並ぶ定番である、じゃがいもを使った料理も紹介しよう。

バリエーション豊富な「クネーデル」

「クネーデル(Knödel)」は、潰したじゃがいもに小麦粉などを混ぜて団子状にし、トマトソースやキノコソースに絡めて食べる料理だ。レストランでは、肉料理の付け合わせで出されることも多い。

ドイツだけでなくオーストリアでも食べられている知名度の高い料理で、中にはパンや肉を混ぜたクネーデルもあるなど、さまざまなバリエーションを持つ。モチモチの食感とじゃがいもの素朴な味わいが、日本人の舌にも合うだろう。

ドイツ料理には外せない「ポメス」

ドイツ語で「ポメス(Pommes)」はフライドポテトを意味する。ドイツでは駅や街中のあらゆる場所にポメスを販売しているインビスがあり、たっぷりのマヨネーズをかけて食べるのが定番だ。ドイツに行った際は複数の店のポメスを食べ比べてみるのも楽しいだろう。

ドイツ料理の伝統スープ「カートッフェルズッペ」

じゃがいものスープである「カートッフェルズッペ(Kartoffelsuppe)」は、ドイツやオーストリアの伝統的な家庭料理として国民に親しまれている。じゃがいもを裏ごしして作ったポタージュタイプもあれば、じゃがいもがゴロゴロと入った食べごたえのあるタイプもある。

ドイツ料理の定番料理【その他編】

ここまではソーセージやじゃがいもを使った料理を紹介してきたが、ドイツにはそのほかにもさまざまなグルメがある。続いては有名な肉料理やドイツでの食生活には欠かせないパンなどを紹介していこう。

日本にも馴染み深い「シュニッツェル」

ドイツの人気料理である「シュニッツェル(Schnitzel)」は、日本でいうとんかつのような料理だ。肉を叩いて薄くのばし、細かいパン粉をつけてカラッと揚げる。

さっぱりとレモンをかけて食べることが多いが、キノコソースやホワイトソースで食べることもある。すべての年代から愛される国民食といえる料理で、日本でいうカレーのような存在ではないだろうか。

ドイツ料理の定番「アイスバイン」

「アイスバイン(Eisbein)」はドイツ料理の中でも広く愛されている料理の一つで、塩漬けした豚のすね肉を柔らかくなるまで煮込んで作る。ローリエやクローブなどのハーブと、玉ねぎなどの野菜を一緒に長時間煮ることで、味が染み込みホロホロとした食感になる。

日本でアイスバインを作る際は、豚のすね肉は手に入りにくいため、スペアリブなどで代用するとよいだろう。

ドイツの軽食「ブロートヒェン」

ドイツ人が朝食や夕食によく食べているのが、「ブロートヒェン(Brötchen)」というパンだ。ドイツ語で「ブロート」はパン、「ヒェン」は小さいものという意味に当たる。小さいパンと直訳できるように、ドイツの小さいパンはすべてブロートヒェンと呼ばれる。

プレーンはもちろん、レーズン·クルミ·かぼちゃの種などが入ったタイプや、サンドイッチのバンズとして用いられるタイプなど、種類も豊富だ。パン屋やスーパーマーケット、駅の売店などにも売っているので、今日はどのブロートヒェンにしようかと悩むのも楽しい。

ドイツ料理の立役者「ザワークラウト」

ドイツ料理にあまり詳しくなくても、「ザワークラウト(Sauerkraut)」は聞いたことがある人も多いかもしれない。ザワークラウトはキャベツを酢漬けしたもので、「ザワー」は酸っぱい、「クラウト」はキャベツを意味する。

メインディッシュにはこのザワークラウトか、ロートコールと呼ばれる紫キャベツの煮物が添えられているケースが多い。ドイツにはソーセージや肉を使った料理が多く、食べていると少々重く感じられることもあるが、ザワークラウトがあると口の中がさっぱりする。まさにドイツ料理の「陰の立役者」といえる存在だろう。

ドイツ料理のお供にはビールは欠かせない

ここまで定番のドイツ料理を紹介してきたが、ドイツ料理を食べる際は一緒にビールを注文するのがおすすめだ。ドイツにはこってりした料理に合うビールがそろっており、銘柄はなんと5000種類以上もあるとされている。世界的に有名なものも多く、いろいろな種類を飲み比べてお気に入りを見つけるのもまた醍醐味といえるだろう。

ドイツ代表ビール「ベックス」

「ベックス(Becks)」は世界でもっとも飲まれているドイツビールの銘柄だ。世界中で醸造されているビールの主流であるピルス(ピルスナー)というスタイルで、日本のビールもピルスが大半であるため、我々の味覚にも馴染みやすい。
ベックスの特徴はキリッとしたのどごしと心地よい爽快感で、ゴクゴクと飲めるだろう。夏の暑い日にもってこいの一本だ。

ドイツならではの小麦を使った「パウラーナー」

ドイツならではのビールの一つに、小麦を多く使ったヴァイツェンというタイプがある。そのヴァイツェンの代表格といえば、ビール文化が盛んな南ドイツの「パウラーナー(Paulaner)」だろう。50%以上の小麦を使用し、まろやかなのどごしとフルーティーな香り、ほんのりとした甘みが特徴だ。

ちなみにドイツには、ヴァイツェンビールにバナナジュースを混ぜた飲み方も存在する。意外な組み合わせにも思えるが、ヴァイツェンにとろみのあるバナナジュースが非常にマッチして驚くほどおいしい。甘い飲み物が好きな人は、食後のデザート感覚で頼んでみるのも一興だろう。

オクトーバーフェストの中心ビール「ホフブロイ」

毎年9~10月にミュンヘンで開催されるオクトーバーフェストは、ドイツの祭典として世界中で知られている。「ホフブロイ(Hofbräu)」はその中心となる銘柄で、上で紹介したピルスやヴァイツェンに加え、ダークビールのドゥンケルなどの種類もある。ドゥンケルは炙った麦芽を使用しているためコク深く、まるでカラメルのような香ばしいフレーバーが魅力だ。ミュンヘンっ子に熱く支持されるホフブロイを頼み、オクトーバーフェスト気分を味わってみよう。

味が濃くこってりとしたドイツ料理は、ピルス·ヴァイツェン·ドゥンケルといったドイツビールとの相性が抜群だ。日本にも各地にドイツ料理の専門店があるため、次の休日はドイツ料理やビールを味わいに行ってみてはいかがだろうか。旅行できる時期になればぜひドイツを訪れ、本場のドイツ料理とビールに舌鼓を打ってみてほしい。また、ドイツには地域によっていろいろな郷土料理があるので、ご当地ならではの一品を味わってみるのもおすすめだ。

▼あわせて読みたい