
皆様お世話になり升!『サケとエンタメ』リレーコラムの第二走者を担当します、コンビ揃って日本酒のソムリエ『唎酒師(ききさけし)』の資格を持つ漫才師“にほんしゅ”の北井一彰です!
相方のあさやんが前回を担当しましたが『サケとエンタメ』のユニットの説明を全くと言っていいほどしていなかったのでここでメンバー紹介を改めて。
きき酒師の漫才師として全国のお酒のイベントなどで酒漫才や司会を披露したり、セミナー講師なども担当し、とにかく日々日本のお酒の魅力を楽しく伝えている我々「にほんしゅ」のボケ あさやんとツッコミ 北井一彰。
Mー1グランプリ準決勝進出や第3回「ツギクル芸人グランプリ」優勝。そして趣味はお酒で、日本酒検定一級を持つ若手実力派漫才師「ストレッチーズ」の福島敏貴さん。
「cookpad」におよそ2000のおつまみレシピをアップしたり、とにかく美味そうにお酒を飲む飲み歩き動画が人気のyoutube「藤井21チャンネル」を運営しているピン芸人・藤井21さん。
きき酒師アナウンサーとして、各種メディア出演や日本酒セミナー講師、執筆業など、趣味であるお酒も取り入れた活動を続ける石川奈津紀さん。
俳優、ダンサー、MC、きき酒師などなど様々なプロとしての顔を持つバイリンガルタレントの児玉アメリア彩さん。
歌手ではなく「歌酒」として様々なお酒ソングを作ったり、ラジオパーソナリティやタレントとしても活動し、酒屋の店長経験もある氏家エイミーさん。
以上の「お酒を飲みたい!喋りたい!」のメンタルを持ったエンタメのプロ7名。この7名で「それぞれの活動だけじゃなくて、みんなでお酒の魅力を伝えていこうよ!リレーコラムしたりイベントとかしようよ!」という名目で活動をスタートさせました!目指せ、酒アベンジャーズ!
リレーコラム一周目のテーマが『まず喋りたいこの酒一本』という事ですが、様々な出会いがあって大好きなお酒と漫才を掛け合わせた活動をしている僕ですが、自分のルーツを振り返れば「僕は地酒の申し子だったのか・・・?」と思えるほど日本酒にまつわる地域で育ってきたのです。ということで「にほんしゅ・北井」のルーツにまつわる一本についてお話します!
「龍力 大吟醸 米のささやき YK−35」本田商店(兵庫県)
僕の地元、兵庫県姫路市の銘柄です。味わいを端的に表現すると、フルーティーで贅沢な味わいの大吟醸。しかし「高い値段の大吟醸なんだからそりゃまぁ美味しいんでしょうねぇ」で終わると後悔します!知れば知るほど美味しく感じるのが日本酒というお酒。

(写真提供:本田商店)

本田商店の蔵がある播磨地域は酒米の王様・山田錦の原産地なのです。その地の利もあり「龍力」の本田商店は山田錦にとことんこだわり、研究し、最上級のものを仕入れてお酒を仕込む酒蔵として知られています。
特にこの「龍力 大吟醸 米のささやき YK–35」は蔵の看板のお酒と言えます。山田錦の中でも最上級のものといえる、兵庫県特A地区産の山田錦の特上米100%使用していて、その最高の山田錦を35%まで贅沢に磨き、じっくりと低温で発酵させフルーティかつ、飲みやすいのに飲みごたえもあるという「山田錦の魅力丸出し!」な日本酒。神戸牛のA5のサーロイン!大間の本鮪の大トロ!みたいな「ど真ん中の豪速球ストレート」な魅力のあるお酒なのです。
日本酒デビューは散々⁉「危険な酒」と認定してしまった若き自分!
という風に、10年間日本酒のことを学び、何千種類の日本酒を飲んできたアラフォーの今では「日本酒は素晴らしい!奥深いものだ!」とあちこちで語っているのですが、20歳になってすぐの日本酒デビューは散々なものでした…。

僕の地元の姫路市の大塩天満宮では秋祭りが盛大に行われ、勇壮な毛獅子の獅子舞が行われます。その獅子舞の稽古が公民館で1ヶ月ほど行われる中で、中日や稽古納めで獅子舞をする青年団の先輩たちと公民館でよく飲んだのです。それはそれは、よく飲んだのです。祭り本番に向かって行く中で町のみんなと結束力を高めるそのお酒の場は本当に楽しくて「瓶ビール何ケース空になんの!?知らんがな!飲めや歌えや!」という大宴会が夜中まで。何度も酒屋のおっちゃんにビールの配達を頼んで「おまんら何時まで飲んどんや!もう今日は持ってこん!」と怒られても「おっちゃんごめーん!」で済む楽しい町。

日本酒あるぞー!飲むどー!で見事撃沈。はい、若人あるあるパターンです
数時間ビールを飲み、僕もみんなも相当酔っ払って大フィーバー状態の中「ビールもうええわ。おい、日本酒あるぞー!飲むどー!」と一人の先輩がおそらくお祭り用にもらっていた二本縛りの一升瓶(銘柄は記憶にありません)の紐を解き、ポンっ!と景気よく栓を開け、「ほい、北井くんも!」と僕のビールグラスにゴボゴボゴボッと豪快に注いでくれたのです。このあたりまでは覚えているのですがそのあとは「わぁ!これが日本酒かぁ!匂いもごっついなぁ!きつい酒やぁ!なんやこれ!?わぁ!やばいかも!」みたいな何が何だかで味の感想もちゃんと覚えておらず、どれくらいの量を飲んだかも覚えていない、ハードタイプの日本酒デビューをしてしまったのです…その日は先輩におんぶをしてもらって家まで帰ったらしく、翌日は人生最大級の二日酔い。そして多くの日本人がやってしまいがちな「日本酒は危ない!」認定をするバカな日本酒人生スタートとなったのでした。

そこからの20代のお酒ライフは貧乏な学生、貧乏な若手芸人ということもあり、発泡酒や缶チューハイ、甲乙混和焼酎の水割りなど、とにかく「安くいっぱい飲む!」ことに全力で取り組みました。
明日がバイトの給料日で今、手元には現金が600円ちょっと。そのお金でちょうど買える発泡酒6缶パックを買ってつまみを我慢した日もありました。そんな綱渡りの生活。お酒を飲むにしても「家飲みか鳥貴族か」という暮らしの中で、美味しい日本酒に出会う機会はなかったのです。勝手に危険酒認定もしちゃっていますし。
日本酒を語れる「にほんしゅ」へ、10年の酒修行

そして20代も後半になり、その頃には大した考えもなくつけてしまった「にほんしゅ」というコンビ名(居酒屋さんでビールを飲みながらコンビ名を考えるもなかなか決まらず、隣で店員さんが「日本酒お願いしまーす!」と注文を通している声を聞いて、「日本酒、、響きもええし覚えやすそう!」と深い考えもなく勢いでつけた名前でした。すみません!)で活動する中で「芸人で食っていく為にもっと何か武器がいるぞ!一念発起せなあかんぞ!」と漫才以外の専門性も求めた時にハッ!と気づいたのです。「にほんしゅってコンビ名で、酒大好きやのに全然日本酒飲んでへんやん」と。その時コンビを組んで7年目。灯台下暗し。
漠然とですが「日本酒を語れる漫才コンビ・にほんしゅ」の姿を描き出し、そこから10年間日本酒を飲み、学び、旅し、酒漫才ネタを作りという生活を続けてきました。勝手に危険酒認定をしていただけで、日本酒には全く非はありません。当たり前です。香りがフルーティなお酒、刺身に合うキレの良いお酒、お燗にいいお酒、美味しい日本酒が山ほどあるのです!
勝手に「にほんしゅ」って名前つけておいてこんな素晴らしいお酒を知らないどころか危険認定までしていた己の愚かさに呆れつつも、その時間を取り戻すかのように真剣に日本酒と向き合い、楽しみ、たくさんの美味しい日本酒や魅力的な造り手さんたちと出会うことができました。 そして30代になり、関西を離れて東京を拠点に酒漫才の活動をするようになると、より地元のことを意識するようになりました。そしてそこにも、僕と日本酒の大きな意味を持つ出会いがあったのです。
播磨地域にあり、祖父母の家(父の実家)や田んぼがある兵庫県小野市。父の同級生が山田錦農家だったりと小野市でも山田錦は生産されていますし、小野市のすぐお隣の三木市や加東市は山田錦の最高の産地なのです。その山田錦を「地元の酒蔵だから使用する」レベルではなく、土壌の研究から突き詰めて酒米の王様「山田錦」の魅力・味わいを日本一追求している酒蔵と言っていい、僕が生まれ育った姫路市を代表する本田商店の銘柄「龍力」。播磨のエッセンスを凝縮し、醸されたお酒と言える銘柄「龍力」は僕にとって特別な日本酒です。「龍力」を造る本田商店には何度もお邪魔し、山田錦という米の魅力を活かした酒造りを教えていただきました。

地元播磨で悟りを開く⁈「龍力」本田社長は頼れる大吟醸アニキ
高級な大吟醸酒なのに食中酒であるのが「龍力 米のささやき」の魅力。本田商店の本田龍祐社長とは年齢も6歳違いと割と近く、僕の地元の大塩天満宮同様に本田商店の蔵がある網干という町でも盛大な秋祭りがあったり共通の話題も多く(はっぴも似ています)、ともにお喋りが大好き。姫路の食べ物やお酒についても色々と教えてくれる地元の頼れるお兄ちゃん的な存在です。「2月のこの辺に姫路帰るんですが蔵見学にお邪魔していいですか?」と何度も図々しいお願いをしては「ええよー!」と快く応えていただいています。

そんな感じで数年前に蔵での造りの見学をコンビでさせていただいた後に、「今日は姫路駅の方に出て飲もか!」とお声がけしていただき「是非とも!!」とお供させていただくにほんしゅ北井とあさやん。


姫路駅近くの居酒屋で親鶏のおつまみ「ひねぽん」や穴子など地元の定番のおつまみとともに「龍力 米のささやき」を飲ませてもらった時にその魅力が一層よくわかりました。日本酒の世界の通説では「香りが高く味わいが繊細な大吟醸は食中酒には向かない」と言われるのですが、「米のささやき」はむしろ逆。お酒単体でも美味しい香りや上品さもありつつ、食事と合わせた時にこそ真価を発揮する味わいの立体感や旨味のボリュームを持ちます。繊細かつ懐が深い!これは最上級の山田錦を使った「龍力 米のささやき」ならでは魅力と言えるでしょう。
料理をつまんで、米のささやきを飲む。つまんでは飲む。これを繰り返す手が僕も相方のあさやんも全く止まらないのです、止められないのです!4合瓶のお酒を20分経たずに飲み干そうとする僕とあさやんのあまりに早いペースに「北井くん、あさやん!ちょ、ちょっと落ち着こか!」と本田社長にたしなめられてハッとする場面も。生まれ育った地元播磨にこんなに素晴らしい酒米、こんなに素晴らしい日本酒がある事が本当に誇らしいです。
本田社長の「大吟醸が食中酒じゃないって言われるけど、なんでやねんって思うねん。美味しい大吟醸飲んだことないんちゃう?」というセリフが心にしみた夜でした。
大吟醸で五穀豊穣に感謝!秋祭りには地元の日本酒!
日本酒を勉強していくと「お祭り」との繋がりが強いものだとよく分かったのも嬉しいことでした。全国各地で担い手不足などで数々の素晴らしいお祭りが縮小や休止となっていますが、先述したように僕の地元の姫路市の大塩天満宮では激しい屋台の練り合わせや毛獅子の獅子舞などが見どころの盛大な秋祭りが毎年10月に執り行われています。
金木犀がふわっと香り、太鼓の音で目が覚めてワクワクしながら目覚めて、おむすびや関東炊き(姫路おでん)を食べて、おじいちゃんに手をひかれて天満宮まで行った幼少期の思い出。町全体が「祭りや!」「今日は特別や!」「ハレの日や!」という空気に満ち満ちているのです。


親戚や友達もみんな集まり、屋台練りや獅子舞に歓声をあげ、夜店でくじ引きをしたり松露焼き(カステーラ焼き)を買ってもらう…「あぁ、僕、祭り好き!祭りが大好き!」と自然となっていったのですが、そもそもの「なんで秋祭りをやってるの?」という意味をちゃんと考えたことはありませんでした。 しかし、日本酒を知る今なら分かります。元来日本酒は「ハレの日」の酒でお祭りで仲間や家族、みんなで飲む、日本人の暮らしに根付く絶対的な価値があるものなのだと。関西学院大学の文化歴史学科で学んだ文化歴史好きの僕からするとこういう価値を知って飲むと、これまた余計にお酒が美味い!たまらん!語りたい!となるのです。
「日本酒を飲むことこそが秋祭りの全て!」・・・と言うと流石に言い過ぎかもしれませんが、秋祭りは農業漁業などが暮らしの中心だった頃に、お米などの穀物の実り、五穀豊穣に感謝して、神様に農作物やお酒、芸能を捧げて、そして家族や地元の仲間とともにそのご馳走やお酒をみんなで分かち合い、喜び合う最高の「ハレの日」なんですよね。その中心にあるべきお酒はやはり米の酒、日本酒(南九州や沖縄なら焼酎・泡盛でしょう)!
今では秋祭りでビールは一切飲まない!というと大嘘になりますが(汗をかいた後のビールももちろん美味い)、同級生たちも僕の根強い勧めで日本酒にどんどんハマってきてくれて、秋祭りで帰ると「北井くん、この日本酒こないだ三重に旅行行った時買ってきてん」「龍力のええやつ買うといたで!」などの会話がここ数年すごく増えました。2トン近くある屋台を丁のみんなで担ぎ、声を出し、全てを出し切ってへトヘトになってからみんなで飲む日本酒の美味しいこと美味しいこと!「沁みるなぁ。ありがとうなぁ。今年も地元の酒でみんなで乾杯できてよかったなぁ」と心の底から思えるのです。ビールのスカッと爽快な感じとはまた違う滋味深いありがたさ。

大塩町は名前の通りその昔、塩田で栄えていた土地です。みんなが塩田や田んぼ、畑などで仕事をしていた時代には秋祭りでご馳走を食べ、日本酒を飲む意味や喜びを自然と感じていたことでしょう。今では田んぼや畑をやっている地元の同級生はいないですが、その名残を残してくれて地元の繋がりや歴史を紡いでくれるのが秋祭りなのです。有給を使ってでも秋祭りに参加する地元の仲間はえらい!タイパやコスパでは測れない「お祭り」を大事にする心が現代の日本に必要です!日本酒というお酒に、地元の家族や仲間に生かされているのを自覚する今、年に一回の祭りには是が非でも帰らなあかんがな!秋祭りで日本酒飲むのが自分のアイデンティティそのものやがな。と思います。
秋祭りを守ってくれている同級生や町の人たちに感謝!今年も五穀豊穣で大吟醸!な秋祭りができますように。お米や日本酒、地元の繋がりを大切にして日々暮らしたいものです。言ってることが見事にアラフォーです。40歳ともなると心から「少しでも良い日本を残したい」と思うんです。
大吟醸に熟成酒。「龍力」を知れば日本酒の語り部になれる⁉
話の最後にダメ押しで「龍力」の本田商店の魅力を。山田錦へのこだわりの他に、フルーティな香りと上品な味わいで現代の日本酒を語る上で欠かせない「大吟醸酒」造りにも早くから取り組み、さらに近年注目度が高まる日本酒の熟成酒の研究も長らくされているなど、「日本酒」というお酒を知るためのトピックを本当にたくさん持つすごい酒蔵なのです!「龍力 米のささやき」は大吟醸酒で高価格帯のお酒ですが、本醸造酒などのお手頃なレギュラークラスのお酒も程よい旨味のボリュームと後味のキレの良さで姫路の食によく合います!


お米、日本酒、お祭りを大事にする日本人でありたい!
日本人にとってめちゃくちゃ大切な主食のお米の価格高騰。農家さんの声や、米のささやきにちゃんと耳を傾けて来なかったから大変な事態になっているのではないでしょうか。…って、最後は上手いこと言うのに力を入れすぎました。
代々ご先祖様に守ってきてもらった田んぼのお米、そのお米で醸すお酒「日本酒」、お米や日本酒で祝う秋祭り。その大切さを忘れるなよ日本人!と自戒を込めて叫びたいです。
山田錦の声が聞こえる地元のお酒「龍力 米のささやき」にパワーをもらって、酒漫才師として地酒の魅力をささやく・・・いや、大きな声で伝えていきたいと思います!

次のコラムのバトンは仙台在住、歌声が素晴らしい、歌酒の氏家エイミーさんにお渡しします!よろしくお願いいたし升!
【にほんしゅ北井一彰のこの1本】
「龍力 大吟醸 米のささやき YK−35」本田商店(兵庫県)

【味わい】
兵庫県特A地区産山田錦の特上米100%を使用し、大吟醸酒らしいフルーティな香りと上品な味わいかつ、ほどよい旨味のボリューム感や後味のキレの良さで食事との相性も良い。最高クラスの山田錦が持つ懐の深さを味わえる。
【酒蔵情報】
古くは播州杜氏(ばんしゅうとうじ)の総取締役として酒造りに従事し、1921年(大正10年)に兵庫県姫路市網干の地に酒造を創業。
龍力の歩みは挑戦の歴史。いち早く全量酒造好適米に取り組み、いち早く大吟醸酒に取り組んだ。「米の酒は米の味」を基本理念として酒造りを行っている。 「龍力」本田商店では、原料米の85パーセントが山田錦。さらに、最高品質のものが収穫されると言われる兵庫県特A地区の山田錦だけを原料米としている。
日本酒のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」として2014年より活動。コンビ揃ってお酒を飲むことが大好き。日本酒や本格焼酎、泡盛など日本各地にある地酒の魅力を漫才やセミナー講師として分かりやすく伝えている。日本酒学講師として認定した日本酒ナビゲーターの受講生は1,100名を超える(2025年現在)。 関西学院大学では日本の古代史を専攻していたこともあり、神社仏閣や博物館巡りが大好きで、日本各地を旅し、その土地の歴史や風土、食、地酒の繋がりを感じてお酒をより深く楽しむ「酒・歴史旅」がライフワーク。
