かつて「外食券指定食堂」だった、歴史ある老舗の食堂

昔は入口の扉は無かった。だがこの引き戸も十分レトロ。

長浜は豊臣秀吉が織田信長から初めて築城を許された土地。それまで今浜と呼ばれていた地名を信長にあやかり長浜と改名した。以来、湖北地方の中心地として栄え、明治になると鉄道が敷かれて更に賑わいは増した。

そして明治30年(1897)、中島屋食堂は餅や酒などを販売する店として産声をあげた。

建て替えられてからでもすでに60年以上が経過。

「当時は長浜駅の裏はすぐに港でしたから、そこで働く人たちが仕事帰りに一杯、というのが日常だったとか」と、三代目の中島俊子さん。昭和初期に俊子さんの父が店を継ぐと、手軽な料理も献立に加える。

戦時中から戦後の食料難時代は実績を買われ、行商人など出先で食事をする人に特別配給された「外食券」が使える店に指定。今も店内にその看板が飾られている。

この看板は食糧難の時代に「外食券指定食堂」として営業していた頃のもの。

「昭和27年に道路拡張があって、創業当時の平長屋を2階建てに建て替えました。以来変わったのは、店の表に戸が付いたぐらいかな(笑)」 と、息子の俊展さん。駅舎やロータリーが近代化された長浜駅前にあって、その佇まいは際立つ。

店内には大正時代のちゃぶ台や椅子、昭和の映画スターの写真などが溢れていて、見る人を楽しませてくれる。そして極めつけは献立を記した木札が下がっている光景。これぞ往年の喜劇映画「駅前シリーズ」に登場する食堂そのものだ。

うどんも寿司も食べたかったので、よもぎ・にしんうどんと寿司セットを注文。
スゴモロコ南蛮とあゆ姿煮。

うどんや蕎麦、丼物、さば寿司、のり巻き、そして琵琶湖の魚を使った酒肴の数々。一世紀以上も愛されてきたこれらが、旨くないわけがない。

メニューは手作りが多いため売り切れると早閉めすることも。確実に行きたい人は要確認である。

※新型コロナウイルス感染症対策のため営業時間・定休日に変更の可能性あり(2015年取材)

文/野田伊豆守 写真/金盛正樹

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