見た目や飲み方などに共通点の多いブランデーとウィスキー。ひとえに蒸留酒といっても、それぞれの製造工程や原料は大きく異なる。これらの違いについて解説しながら、代表的な種類についても紹介していく。今後、味や香りの違いをより楽しめるよう、読み進めて欲しい。

ブランデーは果物を主原料とした蒸留酒

ブランデーの原料は果物だ。中でも代表的といえる果物が、ブドウである。それもそのはず、ブランデーはそもそも、輸出中のワインにたまたま起こったある出来事がきっかけで生まれた酒だからだ。

今をさかのぼること300~500年前、フランスのコニャック地方は、オランダへワインを輸出していた。あるとき、輸送途中のワインの酸味が強くなってしまったため、そのワインを蒸留してみることに。すると、芳醇な香りや味わいをもつ酒にかわった…これが、ブランデーの始まりだ。

酸味が強いブドウを原料とするワインから、偶発的につくられたこの蒸留酒。そのおいしさは評判になり、ブランデヴァイン(焼いたワイン)という、オランダ語由来の名前がつけられた。そこからやがて、ブランデーと呼ばれるようになっていったのである。ちなみに、アルコール度数は40度程度のものが多い。

「コニャック」は世界を代表するブランデー

ブランデーの中でも、世界的に有名なのがコニャックだ。飲んだことはなくても、どこかで聞いたことのある…しかし、いざコニャックとは何かと聞かれると、実はよくわかっていない自分に気づく…そんな人も多いのではないだろうか。

コニャックとは、その名の通り、フランスのコニャック地方でつくられたブランデーである。主な銘柄としては、ヘネシーやレミーマルタンなどがあげられる。

ヘネシーは、アイルランド出身のリチャード・ヘネシーが創業したブランドだ。コニャックを初めてビン詰めにして販売したことでも知られている。中でもヘネシーのXOは、100種類にもおよぶ原酒がブレンドされている高級品で、芳醇な香りと上質さが感じられることから、日本でも人気だ。

レミーマルタンのブランデーは、アミノ酸を多く含む、コクのある味わいが特徴的だ。また、ギリシャ神話に登場する酒の神バッカスを由来とする、シンボルマーク「セントー」の、しゃれたデザインを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

ブドウが原料以外のブランデー

ブランデーの原料はブドウだけではない。ブランデーをより深く味わい、楽しむのなら、ブドウ以外を原料とするものもおさえておきたい。ここでは、りんご原料、そしてチェリー原料のブランデーについて紹介していく。

りんごを原料とするブランデーは、世界中のさまざまなエリアでつくられている。その中でも、フランスのノルマンディー地方でつくられるカルヴァドス産のブランデーは、高品質でりんごを原料とするブランデーの代名詞的存在だ。今では「カルヴァドス」が、ノルマンディー地方でつくられるアップルブランデーを意味するようになった。

チェリーを原料とする「キルシュワッサー」は、ドイツのシュヴァルツヴァルト地方の名産品だ。他に、フランスやスイス、アルプス山脈東部のチロル地方でも製造されている。ドイツではストレートで飲まれているブランデーだが、カクテルの材料として、あるいはお菓子作り用のシロップとしても使われることがある。

ウィスキーは穀物を主原料とした蒸留酒

ウィスキーを最初につくり始めたとされているのが、ヨーロッパ中西部から海をわたり、イギリスのブリテン諸島へと移住した民族である。そして、スコットランドとアイルランドがウィスキー起源の地だといわれている。

ウィスキーは、大麦の他に、小麦やライ麦、トウモロコシなどの穀物を原料とする蒸留酒だ。アルコール度数が高いため酒の中ではカロリーが高めではあるが、それほど心配する必要はないだろう。

ウィスキーは少量飲んだだけでも満足感を得やすい上、蒸留酒なので糖質もゼロだ。そう考えると、カロリーが控えめなほかの酒をたくさん飲んだ場合と比較しても、摂取カロリーが特別高くなることはなく、むしろ低くおさえられるかもしれない。

スコッチやバーボンはウィスキーの種類

スコッチの定義をひとことで表すと、「スコットランドでつくられるウィスキー」となる。ちなみに、大麦のみを原料に使用したものはモルト・ウィスキーと呼ばれる。酒をスコッチと呼ぶためには、他にも厳密な決まりがある。たとえば、樽だ。スコッチは、シェリーやワインなどといった他の酒で使用された樽で、3年以上熟成保管されたものでなければならないのだ。

ちなみに使用済みの樽を用いるのは、ウィスキーに芳醇さを加えるためである。またスコッチは、スコットランド北部に広がる泥炭を燃焼させ、麦芽を乾燥させる手法を用いてつくられる。そのため、麦芽に煙っぽい独特な香りが残っている点が特徴的だ。

一方、バーボンは、「アメリカでつくられるウィスキー」を指す。原料の半分以上はトウモロコシで、残りが大麦、ライ麦、小麦などで構成されている。スコッチと同様、バーボンだと定義するためには、いくつかの細かい条件をクリアしなくてはならない。

樽について例をあげてみると、内側をバーナーで焦がした新樽を使用して貯蔵することとなっている。新樽を使用するため、短期間で樽のエキスを酒に吸収させることが可能なのである。スコッチの場合と異なり、熟成期間に関しては特にきまりがない。ただし、2年以上の熟成を経たものに関しては、ストレートバーボンと呼ぶことが許可される。

ウィスキーとブランデーの製造工程の違い

ウィスキーとブランデーは、どちらもアルコール度数が40程度の蒸留酒だが、両者には大きな違いがある。それは、原料と製造工程だ。
ウィスキーは大麦や小麦、ライ麦といった穀類が原料だが、ブランデーは、ブドウはじめとするりんごやチェリーなどの果物を原料としている。そして原料が異なるということは、製造工程にも当然大きな違いが生じてくるというわけだ。

ウィスキーを製造するためには、菌の作用を利用して、原料に含まれる糖分をアルコールへと変換させる必要がある。ただし、アルコールへ直接変換できる糖分が原料の内部に十分存在しているかというと、それは違う。大麦や小麦、ライ麦などがたくわえている、アルコール化に必要なデンプンを酒に変えるには、次の手順が必要となる。

まず、デンプンを糖に変化させる。麦芽を使うことで、デンプンを糖に変換することが可能だ。麦には、デンプンを糖化する作用をもつ成分「アミラーゼ」が含まれている。アミラーゼは麦芽の状態で活性化する性質をもつ。だから、麦を発芽させアミラーゼを活性化させることで、デンプンを糖へと変換していくことができる。デンプンを糖に変換させたら、次にその糖をアルコールへ変換させていけばよい。

一方、ブランデーは、原料である果物の糖を、そのままアルコールへ変換することができる。果物にはもともと糖分がたくさん含まれているため、穀物を原料とするウィスキーと比較した場合、デンプンを糖化するという製造工程が必要ないというわけだ。果物は、アルコールに変換するにはもってこいなのだ。

工程が違えば、味にも違いがでる

ウィスキーとブランデーの原料・製造工程を解説してきたが、工程が異なれば、当然味にも違いがでる。ここでは、味の違いから両者の特徴をつかんでおこう。

まずはウィスキーだ。スコッチウィスキーには、モルト由来の旨味がある。さらに、製造工程で麦芽を泥炭で燃焼させているため、スモーキーな香りが残っているのも特徴のひとつだ。

一方バーボンウィスキーは、オーク樽の香りを楽しむことができ、カラメルのような甘さを感じられるだろう。なおどちらのウィスキーも共通して重厚な味わいを楽しめる。

ブランデーはブドウやりんご、チェリーなどの果物を原料としているため、まずフルーティーな香りが大きな特徴だ。ウィスキー同様、樽で熟成されているため、ウッディーさを感じられるが、より芳醇さやまろやかさを楽しむ酒といえるだろう。

穀物を原料とするウィスキーと果物を原料とするブランデー。何百年もの歴史がある2つの蒸留酒について、その特徴や製造工程の違いなどを知っておけば、楽しみも広がるはず。さまざまな種類を少しずつ試してみて、お気に入りの銘柄を見つけてみるのもおすすめだ。