バーに入ったらまずウォッカ。そんなシーンに憧れを抱きながらも、度数が高く飲みにくいイメージがあるウォッカにチャレンジするのは腰が引けてしまうという方もいるだろう。誕生の歴史や製法などを紐解きながら、ウォッカの魅力に迫ってみよう。

ウォッカ(Vodka)とは何か?

世界には「4大スピリッツ」と呼ばれる蒸留酒が存在する。ジン・ウォッカ・ラム・テキーラは、広く世界中で愛されているスピリッツの王道だ。

蒸留酒であるためすっきりとした味わいであることは共通しているが、主原料や製法などに違いがある。

また、誕生の歴史もさまざまで、それぞれのバックボーンを知ると味わいの違いにも納得できるだろう。

そんな4大スピリッツの中でも、知れば知るほどに面白く、味わい深く感じられるのがウォッカだ。まずは「ウォッカとはどんなお酒なのか」を紐解いてみよう。

ウォッカの歴史|起源は「命の水」

ウォッカといえばロシア発祥のものというイメージが強い。12世紀ごろからウォッカの生産が始まったという説があるが、明確に確認できる起源は「命の水」として広く紹介された1386年だ。

諸国に伝わった命の水は、イギリスやアイルランドではウイスキーに発展し、フランスではブランデーへと変身した。世に知られるウイスキーやブランデーは、実はウォッカが祖先なのだ。

スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキー、高級酒としても名高いヘネシーやレミーマルタンもウォッカを起源にしていると思い描けば実に面白い。

「ウォッカといえばロシア」というイメージは、やはり間違いではない。しかし、国政が荒れるにつれて多数の国民がウォッカ中毒に陥るという事態も発生した。ときの政権によっては製造削減、夜間販売や広告を禁止された時期もあったという歴史はあまり知られていない。国難に揉まれてきたスピリッツであるからこその地力の強さがあるのだ。

ロシア発祥説とポーランド発祥説

さらに知られていないのは「実はポーランドが発祥では?」という説だ。ポーランドにおけるウォッカの起源は11~13世紀ごろといわれており、1405年に作成された公文書のなかに「ウォッカ」という名前が登場している。

このような背景から、ロシアとポーランドは「どちらが起源なのか」を法廷で争ったが、1982年に国際調停裁判所がロシアの勝訴の判決を下し、ウォッカは名実ともにロシアを起源とするオリジナルのスピリッツであることが認められたのだ。

ロシア・欧州を中心に生活に根差した庶民派スピリッツでありながら、何かとお騒がせ者。それが「ウォッカ」である。

ウォッカの特徴|原料やアルコール度数など

ウォッカには「アルコール度数が高い」というイメージが根強い。たしかにビールやハイボールといった居酒屋定番の酒類と比べればアルコール度数が高いのは事実だが、かといって「アルコール度数が高い=飲みにくい」というイメージは間違いだ。

体を温め厳しい寒さをしのぐためという一面もあり、ウォッカ好きのロシア人はストレートでウォッカを普通に飲んでいるのだ。

ウォッカの主原料

ウォッカの主原料は、大麦・ライ麦・ジャガイモ・トウモロコシなどだが、原産国によってはブドウなどで製造されるものもある。少し変わったものとしては、ミルクから抽出した乳糖やサトウキビの廃糖液であるモラセスを使ったものも存在する。

主原料の穀類を糖化・発酵させたのち、連続式の蒸留機でグレーンスピリッツへと蒸留する。製造途中に生み出されるグレーンスピリッツはアルコール度数が85~96度もあり、火を近づければ引火してしまう代物だ。これを水で割ってアルコール度数40~60度に調整する。さらに白樺の活性炭で濾過することで完成するのがウォッカだ。

酒類の製造に興味がある方なら「酒は時間をおくことで美味しくなる」と思っているかもしれないが、ウォッカは貯蔵や熟成を必要としない無骨なスピリッツなのだ。

ウォッカのアルコール度数

ウォッカのアルコール度数は市販されているもので40度が主流。世界一の売り上げを誇る「スミノフ」のウォッカも40度だ。ウォッカの中でもっともアルコール度数が高いのはポーランドの「スピリタス」である。70回以上の蒸留を繰り返し、なんと96度という高濃度スピリッツにまで磨き上げ、ごくわずかな水を加えただけの強力なウォッカだ。

広く市販されているものには37度くらいのわずかにソフトなウォッカも存在する。これらは果実などの成分をブレンドしたフレーバーウォッカが主流で、ストレートでも飲みやすく調整されている。ウォッカ初心者が嗜むには、フレーバーウォッカからチャレンジするのがおすすめだ。

味わいは「白樺の活性炭濾過」が決め手

不純物や雑味の一切をとり除き、強いアルコールが持つ刺激を極限まで抑えたものが最上質ウォッカとして讃えられるため、濾過は重要な工程となる。ここで重要なのが「白樺の活性炭濾過」だ。

1810年に開発されて以来、この方法がウォッカを限りなくクリアに磨き上げる製法として確立している。白樺を高温で活性炭化すると、白樺の内部に微細な孔ができる。この孔に不純物が吸着することで、混じり気のないクリアな味わいができ上がるのだ。

また、極限まで蒸留されたグレーンスピリッツが濾過される際に、白樺の活性炭からアルカリイオンが溶け出す。アルカリイオンによりアルコールと水との結合が促進されることで、まろやかな味わいが実現するのだ。

ウォッカの飲み方・楽しみ方

モスコミュールやソルティドッグ、スクリュードライバーとウォッカベースのカクテルはさまざまだが、ウォッカ好きなら割らずに飲むのもひとつ。ウォッカの飲み方を熟知したうえでオーダーできる男は実にスマートだ。ここでは、ウォッカのすべてを堪能できる飲み方について紹介しておこう。

まず定番はショットで味わうストレートだ。ストレートというと常温で嗜むものだというイメージがあるかもしれないが、ウォッカのストレートは瓶ごと冷凍するのが基本。アルコール度数が高いため冷凍しても完全に凍結することはない。クリアながらもとろみを感じるぜいたくな飲み方だ。

ストレートに抵抗がある方におすすめしたいのがロックである。春の雪解けのようにじわりと氷が溶けだすことで、徐々に口当たりがまろやかになる。レモン・ライムなどの柑橘類を浮かばせるとさらにスッキリとした味わいが楽しめるだろう。

アルコールの強さを感じたら水割り、ソーダ割りにするのもおすすめだ。トニックウォーターで割れば、定番カクテルのジントニックのウォッカ版であるウォッカトニック。ジンジャーエールを注げば、ジンバックではなくウォッカバックと、ウォッカベースのカクテルはバラエティ豊かだ。それらについては後述しよう。

ウォッカは余計な味を極限まで削ぎ落とした、4大スピリッツの中でも一種独特な存在である。雑味なく、切れ味の鋭い性格を持ちながらも、歴史に揉まれたやんちゃな遊び心も感じられる。まるで、本物を知る男の生き様のようだからこそ、世界中で愛されていることにも納得できるだろう。

ウォッカを使った人気カクテル

ウォッカ・マティーニ

“カクテルの王様”とも言われるジンとドライベルモットのカクテルがマティーニ。ウォッカ・マティーニはジンをウォッカに換えたもの。『007』のジェームズ・ボンドが好きなカクテルとして有名。

ウォッカトニック

ウォッカとトニックで割ったカクテル。フレーバーの効いたジントニックに比べ、癖がなく口当たりがまろやかな味わい。

スクリュードライバー

オレンジジュースでウォッカを割ったもの。ドライバーでかき混ぜて作られたことから、この名前になったといわれている。

ウォッカバック

ウォッカをジンジャーエールで割り、レモンを搾ったカクテル。ジンで割るとジンバック、ラム酒で割るとラムバックという。

モスコミュール

ウォッカバックのレモンをライムに変えると、モスコミュールというカクテルになる。モスコはモスクワを指すが、実はアメリカで生まれたカクテルだ。

ソルティドッグ

ウォッカをグレープフルーツジュースで割り、コップの縁に塩を付けたカクテル。元はジンベースで作られていたのだとか。

あわせて読みたい

スピリッツ全般については、以下の記事で解説している。ジンやラム、テキーラについても知りたいときにおすすめだ。

スピリッツとは?種類や美味しい飲み方・カクテルを紹介