昔は大規模なうえに難しい建築工事が行なわれた時、生きた人間を神への捧げものとし、神の御加護を得る行為が世界中で行なわれていたようだ。日本の場合、国の中心となる城郭を建てた際に石垣や建物の土台に人を埋めた、といういい伝えが目立つ。しかも若い娘が人柱に選ばれるケースが多い。怨みが忘れられず霊となって現れる者や、守護神として祀られている者など、後日談もさまざまだ。

白河小峰城(福島県)「おとめ桜の伝説」

白河藩主となった丹羽長重は、寛永6年(1629)より白河小峰城の大改築に着手。完成間近になっても本丸一角の石垣がどうしても崩れてしまう。そこで人柱を立てることにし、最初に築城現場を通った者を選ぶこととした。母の急病を知らせに来た、和知平左衛門の娘、おとめが選ばれてしまった。

福島県白河市郭内
アクセス/JR「白河駅」より徒歩約10分

丸岡城(福井県)「片目のお静との約束」

柴田勝家の甥、勝豊により、天正4年(1576)に築城。しかし天守台の石垣が何度も崩れるので、片目のお静が人柱に選ばれた。お静は二人の子のうちひとりを武士に取り立ててもらう約束で承諾。だが勝豊が移封となり、約束は反故される。以来、春の時期、涙雨で堀の水が溢れるようになった。

福井県坂井市丸岡町霞町1-59
アクセス/北陸自動車道「丸岡IC」より車で約5分

丸亀城(香川県)「埋められた豆腐売り」

高く、美しい石垣で知られる丸亀城。いつの時代かは定かではないが、ある雨の降る夕暮れ、城の改修工事を行なっていた人夫たちの前を豆腐売りが通りかかった。人夫たちは豆腐売りを捕らえ、用意した穴に投げ込み人柱にした。以来、雨の夜には豆腐売りの声が響き渡るといわれている。

香川県丸亀市一番丁
アクセス/JR「丸亀駅」より徒歩約10分

府内城(大分県)「人々に偲ばれるお宮」

12万石の大名として府内に入封した福島直高は、築城していた城に櫓を築こうとした。だがどうしても石垣が崩れてしまう。そこで無垢な娘を人柱にすることにし、選ばれたのが父娘ふたり暮らしをしていたお宮であった。おかげで櫓は完成。人々は娘を偲び「宮が城」と呼ぶようになった。

大分市荷揚町
アクセス/JR「大分駅」より徒歩約10分

熊本城(熊本県)「横手の吾郎は牛ば担いで」

天正17年(1589)の天草一揆で勇名を轟かせた木山弾正は、加藤清正との一騎打ちで討ち取られた。怪力自慢であったその子、横手五郎は人夫として熊本城築城工事に加わり、清正を討つ機会を伺っていた。だがそれに気づいた清正は、五郎に井戸掘りを命じ、そのまま生き埋めにしたという。

熊本県熊本市中央区本丸1-1
アクセス/九州自動車道「熊本IC」より車で約30分

文/野田伊豆守
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