日本では無料で利用できる救急車。海外の多くでは、使用するたびに料金が請求されることをご存知だろうか?
日本のように無料で利用できるのは少数派であり、一部の国や地域では、1回の要請で10万円近くの料金が発生する場合もある。
そこで今回は、世界各国の救急車事情をそれぞれ解説していく。ライフスタイル誌から誕生した男の隠れ家デジタルが、知的好奇心をくすぐる情報を解説しよう。
■日本の救急車無料は世界では少数派
日本では救急車を何度利用しても、お金を取られることは基本ない。これは世界的に見たら珍しいらしく、ほかの国では基本的に料金が発生する。
東京消防庁によると、令和4年度の救急車の出動回数は、全国で87万2,101件だったとのことだ。本来であれば救急車の出動1回あたり、およそ4万5,000円という高額なお金がかかっている。
さらに救急車の出動回数の約50%が軽症者の要請であり、「緊急ではないのについ呼んでしまった」というケースが多発しているようだ。これらのことから日本でも、「いつまで救急車を無料で提供し続けるのか」という議論が重ねられている。
なお、世界で初めて組織的な救急業務が開始されたのは、1881年オーストリアの首都ウィーンだとされる。その後、ベルリンやロンドンといったように救急業務が各地に広がり、やがて世界中で導入されるようになった。
■世界各国の救急車事情|1回あたりの料金
日本だけでなく、イタリアやイギリスなど一部の国では、条件付きではあるが無料で救急車が提供されている。しかし、それ以外の多くの国では基本的に有料だ。該当する主な国は以下の通りである。
●アメリカ|1回あたりの料金:約4万円
アメリカでは救急車を利用すると、1回あたり約300ドルが請求される。しかし、これは州によって料金が異なり、ニューヨークなどの地域では、搬送される距離や救命士の同乗の有無に応じて料金が前後する。
そもそもアメリカは医療費が高いことで有名だ。日本のように保険適用で医療サービスを受けることが難しく、現役世代は民間の医療保険に頼るほかない。救急車を呼んで手術を受けた場合、100万円近く請求されることも。
●ドイツ|1回あたりの料金:2〜7万円
ドイツの救急車はオレンジと白を基調にしているため、日本の救急車とイメージが少し異なる。アメリカ同様、救急車を利用する際には基本的に料金が発生する。州によって料金が異なり、料金設定は2〜7万円と幅広い。
ただし、ミュンヘンなどの一部地域では、医師から指示があった場合のみ料金が無料になる。また医療費に関しては保険制度が充実しており、医療費は基本1割負担で日本よりも安いのが特徴だ。
●オーストラリア|1回あたりの料金:0〜16万円
オーストラリアで救急車を呼ぶときは「000(トリプルゼロ)」に電話する。オーストラリア全体で統一されているため、電話番号を間違えるなどのトラブルは少ない。
州によっては救急車を無料で利用できるが、基本的に料金はかかると思っておいたほうが良い。なぜなら、1回の要請で16万円近く請求されることがあるためだ。地方からの場合は、さらに高額な料金がかかってしまう。
また、タクシーのように距離に応じて料金が前後する場合もあるため、オーストラリアに行く機会があれば、事前にその州の料金を確認しておこう。
●フランス|1回あたりの料金:8,000円〜
フランスの救急車は利用した時点で約8,000円の料金がかかり、1キロ移動するごとに約300円加算される。まるでタクシーのような料金体系である。
医療費に関しては日本よりも少し高い程度で、保険制度もそれなりに充実している。ただし、健康保険に加入していなければ日本と同じく全額負担であり、その上制度自体が複雑なので、全容を理解するのに少し手間取ってしまう。
●中国|1回あたりの料金:1,000円前後
中国の救急車は基本有料だが、ほかの国に比べると料金はさほど高くない。北京の場合は3キロまで約830円で、それ以降は1キロあたり約115円加算される。
北京での救急車の利用料金は、救急・救命費、救急車走行費、その他のサービス費用の3つで構成されており、重症の場合は一部保険適用となる。
■まとめ
今回は、日本と海外における救急車の料金事情を比較してみた。
日本のように救急車を無料で利用できる国は珍しく、基本どの国でも一定の料金が発生してしまう。また医療費も段違いに高い場合があるため、海外に長期間滞在する際は、必ず救急車事情と医療費を確認しておこう。
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