95768公園のハトのスゴい能力とは?知っているようで知らないハトの秘密

公園のハトのスゴい能力とは?知っているようで知らないハトの秘密

男の隠れ家編集部
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必ずと言っていいほど公園に生息しているハト。古代からハトは人間とともに生きてきた。そして、その能力は人間の繁栄に用いられてきた。

■いつの時代も人の隣にいたハトの知られざる能力

ハトは世界に351種類いる。普段公園などで見かける最も身近な種類はカワラバトといい、じつはすごい能力を持っている。

「ハトは1000㎞飛び続けられる筋力や、1年中繁殖を行う生殖力など、生き抜くためのスキルに長けています」と語るのは科学ジャーナリストの柴田佳秀さん。なかでも特徴的なのが帰巣本能だ。

「これは遠く離れた場所からでも自分の巣に帰ることができる生来の能力であり、これを持っている鳥は少なくありません。ですが、ハトの帰巣本能はほかの鳥より格段に優れています」

多くの鳥にとって巣はあくまで子育てをする場所、寝床ではない。そのため一般的な鳥は決まった寝床がなく、当然帰巣本能は子育て期間に限られる。

しかしカワラバトは違う。子育てをする場所と寝床を兼ねた家を作るため、帰巣本能がつねに必要となる。

彼らは1日30〜40㎞を移動して餌となる木の実を探し、我が家に戻って来る。この移動距離はカラスの約3倍、スズメの約6倍であり、戻って来るためには位置情報の認知力も必須となる。では、どうやって家の場所を把握しているのか。

「家の周りは景色を記憶していて迷うことはありません。家が見えない地点では視覚や嗅覚、太陽の位置、地磁気(地球が作り出す磁場)などを総合的に利用します」

最新の研究では曇りの日にハトの頭に磁石を付けると帰巣できなかったが、晴れの日に同じ実験をすると帰巣できた。

つまり曇りの日は地磁気を利用し、晴れの日は太陽の位置で判断していると考えられる。また、ハトは地磁気を色として認識しているという研究結果も出ており、少しずつ帰巣本能のメカニズムが解明されつつある。

古代エジプトではハトの帰巣本能を利用し、伝書鳩という通信手段のシステムを作った。漁船から漁獲報告のために伝書鳩を使っていたのだ。ラムセス3世の戴冠式では各地にそのニュースを伝えるためにハトが使われていた。

また19世紀の普仏戦争では本格的な軍事利用がなされ、第一次世界大戦の頃には、ハトの胸に小型カメラを取り付けて敵の重要拠点を上空から撮影した。

日本では明治28年(1895)、朝鮮から帰国した井上馨大使の帰国のニュースを品川港から放ったハトが新聞社へ運び、紙面に記事が載った。

情報網が発達したことで伝書鳩は役割を終え、その能力は鳩レースに生かされるようになった。放たれた地点からハトが鳩舎に戻るまでの速さを競う鳩レース。

鳩レースでの放鳩(ほうきゅう)の様子。ハトには強力な胸筋があり、飛び立ちからトップスピードを出せるため圧巻の迫力だ。ナビゲーションシステムを利用しハト舎へと向かう。(画像提供◎荻野 学)

トップクラスのハトは約1000㎞離れたゴールに15時間程度でたどり着くという。しかし、なかには途中で道に迷って行方不明になるハトもいる。そして、その一部が野生化している。

「現在公園にいるハトのほとんどは、迷って野生化した伝書鳩やレース鳩の子孫です」

フンを撒き散らし害鳥とも呼ばれるハトだが、じつは人類が利用してきたハトの末裔だった。

●「一攫千金叶えるレース鳩」超ド級! 高額ハト

鳩レースは競馬と同じくブラッドスポーツ。そのため、良い血統のハトが超高額で取り引きされている。

・ジェームス・レジェンド(3億円)

画像提供◎チャンピオン商事

中国の高額賞金の委託レース、パイオニア・クラブにて1位になったハト。その後競売にかけられ、世界最高額の約3億円で落札された。

・ミスター・ビューティフル(1000万円)

画像提供◎チャンピオン商事

国内外で名を馳せる銘ハト。外食産業の社長が1000万円で買い取った。ビロードのような羽毛と宝石のような瞳を持つといわれ、人気が高い。

【プロフィール】柴田佳秀さん

科学ジャーナリスト・サイエンスライター。フリーランスとして児童書や図鑑など書籍の執筆や講演、メディア出演などを行っている。


『となりのハト』
柴田佳秀 著 
山と渓谷社 1485円

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