男の隠れ家の神出鬼没な編集者・田村巴は年がら年中“休肝日”がない生粋のお酒好き。そんなほろ酔い編集が美味い酒を求めて今宵もぶらりと旅に出る──。
演技指導や監修だけでなく「探偵はBARにいる」の続編2本では出演もした名マスターが何やら面白いことをしているらしい。
掲載している内容は2024年4月、取材時の情報です。
ほろ酔い編集・田村巴のちょっと一杯やらないか? 第6杯
常々、道産子であることに誇りを抱き、大都会・東京砂漠で生きていますが、読者様に頂いた一通のメールを頼りに、今回は凱旋して北海道まで呑(や)りにきました。
曰く「ススキノの有名なバーのマスターが面白い取り組みをしている」とのこと。詳しく聞けば“海に酒を沈めて熟成している”とな。
どうやら北海道の各地で漁師や漁協、町の協力を得て、さらに関係省庁の許可も得て「海底熟成酒」を事業化しているらしい。北海道で漁師の子として生まれ落ちた身としては、非常に興味をそそられる内容。
よし行く!
あっという間に決断し、歓楽街ススキノの「BAR一慶」へ。マスターの本間一慶さんは映画「探偵はBARにいる」シリーズに関わりが深い名バーテンダー。
確かに裏方にしておくには勿体無い、フォトジェニックな佇まい。早速、海底熟成酒を味わいに来たことを告げ、ニッカ「余市」の飲み比べを提案していただく。
「海底熟成を始めたのは2015年です。その数年前、海外で古い沈没船からお酒が回収され高額で取引されて、それを飲んだ方が美味しいと発言したのを知って、興味を持ったのがきっかけです」
とはいえ、実際に海底熟成を始めるのは大変だったのでは?
「最初は南伊豆で海底熟成しているサブリナさんで試させていただきました。(※)実際に熟成させたお酒を1年後に飲んだら味が変わった。それで道内各地を巡って地元の漁師さんと一緒に呑んで仲良くなり、漁に影響しない漁礁を一緒に探して、漁協や各所の許可を得て、筋を通してから始めました」
※海底をワインセラーに見立て、南伊豆の沖合で主にワイン熟成・販売をする会社。
待って、情報量多すぎ。深掘りしたくなる。でもその前に余市を味わわせて。
通常の余市と1年間熟成した余市。交互に香りを嗅ぐと確かに熟成酒の方が柔らかい。口に含むとさらに違いが如実だ。棘がないまろやかさ。なんで?
科学的根拠に基づいたその答えや、面白すぎる一慶さんの半生話は残念ながら文字不足。いつか書くから、とにかく訪ねてみて!
今月の相棒
次代のススキノを牽引する今行くべき名店「BAR一慶」
海底熟成や麦のモルティング事業も行う本間一慶氏のBAR。グレートオイスターも予約で味わえる。
BAR一慶
北海道札幌市中央区南6条西4丁目5-11ジャスマックサッポロ2F
TEL:011-563-0017
定休日:無休
営業時間:月〜土18:00〜3:00(LO 2:00)、日祝18:00〜2:00(LO 1:00)
文/田村 巴 撮影/Noriy.k
【著者プロフィール】
田村 巴(Tomo Tamura)
1979年北海道出身、フリー編集者。長年「男の隠れ家」に携わり現在は「男の隠れ家デジタル」編集長も務める。毎日の晩酌が人生をより良くすると信じて疑わない。
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