男の隠れ家の神出鬼没な編集者・田村巴は年がら年中“休肝日”がない生粋のお酒好き。そんなほろ酔い編集が美味い酒を求めて今宵もぶらりと旅に出る──。
何かに傷ついたわけではない。誰かに失望したわけでもない。美味しい酒と肴を求めたら“やさぐれ感”が出てしまったのデス。
掲載している内容は2024年2月、取材時の情報です。
ほろ酔い編集・田村巴のちょっと一杯やらないか? 第5杯
ほろ酔い改メ“やさぐれ”編集の田村です。いや違います。いつも通りただの酔っ払いです、ごきげんよう。
ところで日本人ってやつは、なぜ冬になると日本海を目指すのでしょう。え、ワタシだけ? 凍てつく風と荒れる波。曇天の空と海に向かって声の限りに叫ぶのです。酒よこせ!
……。
というわけで旨い酒と肴を求めて訪れたのは新潟県出雲崎町。江戸時代の後期、人々に仏の御心を説いた良寛和尚の故郷。北国街道の宿場町として栄え、佐渡の金銀が荷上げされた町。
切り立つ崖と日本海に挟まれたこの小さな町は、徳川幕府の天領地として栄華を誇ったのであります。
前置きはさておき、出雲崎では100年以上も昔から毎朝鮮魚店の軒先に盛られた砂の炭床で魚を焼く「浜焼き」が名物として知られ、近隣の市町村からも浜焼きを求めてお客が訪れるとのこと。
いわば新潟県民のソウルフードなわけです。しかも米どころ新潟は日本酒天国。となれば編集魂に炎を灯して行くしかないのです。
道中、しこたま地酒のワンカップを買い漁り、わざわざ前泊。翌朝7時に訪れたのは「石井鮮魚店」。
朗らかな笑顔で迎えてくれた女将の石井さんに促され、目の前で浜焼きを見学。熱が伝わりすぎるため幾度も串を水で冷やし、火の加減に合わせて位置を調整。手間のかかる作業です。
良い塩梅に美味しく焼き上げられたサバやイカ、アナゴにカレイ、赤魚。おっとヨダレが。熟練の手捌きで串を3本ずつまとめるのは、長くお手伝いに来ているという近所の漁師の奥様・秋山さん。
完璧な布陣で店先のウインドウに浜焼きが並んでいく光景は美しくもあるのです。
「みなさん故郷の味だって言ってくれるんですよ」と話す石井さんはとても嬉しそう。
サバ・イカ・カレイを購入し近くの海岸へ。荒れる日本海を前に、浜焼きとワンカップが哀愁を誘います。寒風に負けずイカを片手に酒を煽れば、はい優勝。
まだまだ酒はある。最高の1日が幕開けたのでした。
今月の相棒
良寛の生誕地・出雲崎の浜焼きは「石井鮮魚店」で決まり!
FAX注文にて全国へ地方配送も可能。昔懐かしい出雲崎の味、炭火焼きの魚をご自宅でもどうぞ。
石井鮮魚店
新潟県三島郡出雲崎町羽黒町475
TEL:0258-78-2025
FAX:0258-78-2089
定休日:12月31日、元日、そのほか不定休
営業時間:8:00〜16:00
文/田村 巴 撮影/Noriy.k
【著者プロフィール】
田村 巴(Tomo Tamura)
1979年北海道出身、フリー編集者。長年「男の隠れ家」に携わり現在は「男の隠れ家デジタル」編集長も務める。毎日の晩酌が人生をより良くすると信じて疑わない。
▼あわせて読みたい