■夜空の月を愛でながら。錫の銚子で染み渡る一献を
●清課堂(京都府)× 銚子
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
天保9年(1838)創業、現存する日本最古の錫工房「清課堂」が手掛ける月輪の名を冠した錫器である。
「秋風にたなびく雲の絶えまより もれ出づる月の影のさやけさ」
左京大夫顕輔(藤原顕輔)による百人一首の歌。秋風に吹かれてたなびく雲、そしてその合間から月輪の清く澄んだ光がこぼれ射し、夜空を照らすような情景を思って仕上げた金属工芸である。
使い込むほどに手に馴染み、錫ならではのしっとりと吸い付くような手触りは官能的でさえある。その風合いと佇まいは、質素のなかに奥深い美を見出す「侘び寂び」に通じるものがある。
通常、純錫は柔らかすぎて器としての寿命が極端に短い。そのため清課堂では用途や製造方法によって用いる地金の配合をごくわずかに変えて使い分けている。
たとえば板状にした錫を鳥口に当て、金槌で叩いて成型する鍛造品には錫99%、銀1%という特殊な素材を用いている。これによって数十年を経たとしても比較的美しい清潔感のある色を保つことができる。
何より適度な硬さと弾性を保てるため加工しやすく、錫と飲食器、双方の特徴を最大限生かすことができる。こうしてできあがった器は、長く愛用するなかで自然な傷や凹みが生じ、色合いにも深みが増していく。この経年変化こそ錫器の醍醐味である。
さらに錫の酒器は酒の味わいをまろやかにしてくれる。また、熱伝導率が高いことから燗酒や冷酒の温度変化を引き立て、人体に無害な錫は酸化腐食にも強い。
柔らかく温もりのある口当たり、冷蔵庫などで一晩置けば苦味や酸味も和らぐ。こうした利点が相まって酒の味を一段も二段も引き上げてくれるのかもしれない。
約4500年に及ぶという錫の歴史。培われてきた知恵や思想、美学を伝えるため、清課堂では店舗ギャラリーにて国内外の作家による金属工芸の展覧会なども不定期に開催している。
【商品概要】
製品名:錫 月輪銚子
価 格:7万7000円
サイズ:全長約170mm、深さ約110mm、幅約82mm
容量:約400cc
重量:約440g
素材:錫
付属:桐箱入り
清課堂
200年近く7代にわたり錫を扱い工芸品や神社仏閣の荘厳具、宮中の御用品を製造・販売している。
京都府京都市中京区
寺町通二条下る妙満寺前町462
TEL:75-231-3661
公式HP:清課堂
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