104640歌手から歌酒(かしゅ)へ私を繋いだきっかけの一本『山形正宗 純米吟醸 雄町』水戸部酒造(山形)|「サケとエンタメ」まず喋りたいこの酒一本

歌手から歌酒(かしゅ)へ私を繋いだきっかけの一本『山形正宗 純米吟醸 雄町』水戸部酒造(山形)|「サケとエンタメ」まず喋りたいこの酒一本

氏家エイミー
氏家エイミー
お酒を飲みたい!喋りたい!マイクを持ったエンタメのプロ集団『サケとエンタメ』が贈るコラム。お笑い芸人、女優、アナウンサー、シンガー、全員が酒に関する資格を持ち、美味しい楽しい酒と食への偏愛を語ります。(にほんしゅ 北井一彰 / にほんしゅ あさやん / ストレッチーズ 福島敏貴 / 藤井21 / 利き酒師アナウンサー石川奈津紀 / 児玉アメリア彩 / 氏家エイミー)
目次
「山形正宗」水戸部酒造の5代目水戸部朝信さん(写真右)が手に持つのは、蔵のシンボルツリーである巨大松の巨大松ぼっくり。左は氏家エイミー。

「煙突から白い蒸気が 寒い酒蔵の中 懸命に醸されたお酒で みんなで乾杯しよう!」(『ふくしまの酒』作詞作曲:氏家エイミー)

いきなり自作の歌詞から入り失礼しました!清酒のようなクリアボイス!?シンガーソングライターの氏家エイミーです♪たくさんのお酒ソングをつくって音楽活動をしています。今から9年前。音楽活動と並行して勤めていた都内の地酒専門店で店番をしていたときに、ふと「歌」と「酒」で「歌酒(かしゅ)」と言う言葉を閃きました。音楽で日本酒の魅力を表現出来ないかと模索していた私に、急にこの言葉が舞い降りてきたのです。

初めまして!サケとエンタメメンバーのエイミーです。私といえば、福島県の地酒応援隊のイメージがある方もいらっしゃると思いますが、7年ほど前まで10年ほど都内地酒専門店で全国のお酒を勉強させて頂き、店長として地酒が身近になる店舗づくりに励んでいました。その他、大人女子の日本酒コミュニティ「日本酒女子会」の運営や音楽ユニット「日本酒女子」では地味に海外のiTunes J-popランキングで10位以内にランキングした事も。こんな最高に美味しい日本独自の液体がもっと飲まれれば良いのに…そんな「推し活」の日々が、このコラムへとつながっているのかと思うと感慨深いです。

さぁ、コラム1周目のテーマが「まず喋りたいこの酒一本」という事で、地酒専門店時代に知った酒蔵の、私を育ててくれた!と言っても過言ではない、そんな一本をご紹介させていただきます。

そしてその前に、私が唎酒師を取得するきっかけをくれた、前回のコラム担当のにほんしゅ北井さんがサケとエンタメについて説明してくれていましたが、メンバーにはそれぞれに担当カラーもあるんです!

  • 【紺色】にほんしゅ・北井一彰 (漫才師)
  • 【水色】にほんしゅ・あさやん(漫才師)
  • 【緑色】ストレッチーズ・福島敏貴 (芸人)
  • 【ピンク】藤井21(芸人)
  • 【オレンジ】石川奈津紀(アナウンサー)
  • 【パープル】児玉アメリア彩(俳優・ダンサー)
  • 【イエロー】氏家エイミー(シンガーソングライター)

メンバーの個性(カラー)もこのコラムを通して皆様に伝わります様に。

「山形正宗 純米吟醸 雄町」水戸部酒造(山形)

「山形正宗 純米吟醸 雄町」水戸部酒造(写真提供:水戸部酒造)

まずはその味わいから。オレンジや花、木の実やミルク等、様々な香りのニュアンスに、口に含むと旨み、鮮やかな酸に甘み渋み苦味がどれも固執せずにまろやかに一体感がある。しかし、後口の鋭いキレ上がりがスッキリと全体をまとめ上げ引き締めている。何だろう。…何かに似ている感覚。ああそうだ、長編映画のエンドロールを見終わった時のあの充実感!これだ。水戸部酒造のこのお酒には、喜怒哀楽や紆余曲折など様々な場面を集約した1本の映画を観たような充実感がある。

推し酒の聖地へ!味わいから醸し出されるものを可視化できて感動!

このお酒、「山形正宗 純米吟醸 雄町」は山形県天童市にある水戸部酒造5代目の蔵元杜氏・水戸部朝信(みとべとものぶ)さんが生み出した商品で、今や蔵の定番商品の一つでもあります。

私が酒屋時代の話ですが、水戸部さんが日本酒のプチセミナーをスタッフのためにしてくれた事があり、その経験が、公私ともにお酒にどっぷり浸かってしまった今の自分の土台となっています。このお酒を飲むたびに、酒屋のスタッフで毎週のようにお酒のテイスティングをしたり、酒談義をした日々が甦ってきます。そして、進化を続ける水戸部さんの〝ものづくり〟への情熱に胸が熱くなるのです。

雄町サミット会場で雄町の稲のパネル前で1枚。氏家エイミーの身長151cmを越える稲穂の長さに注目。

このお酒の誕生は、サラリーマン経験を経て水戸部さんが蔵に戻った28歳頃に、全国の様々な銘柄の日本酒を飲んで勉強をしていたそうで、その中で、赤坂の飲食店で飲んだ愛知県のお酒に感動し、さらに美味しいなと思うお酒は原料米に「雄町(おまち)」を使用したものが多いことに気づき、蔵に戻った翌年に任されたタンクのお酒を雄町で仕込むことにしたのが始まりだそう。水戸部酒造の雄町は全量岡山県の赤磐産。水戸部さんが惚れ込んだ最高の雄町です。ちなみに余談ですが、私も雄町を使用したお酒を好む「オマチスト」! 伸びやかな旨みが堪りません〜。

2015年に蔵を大規模改修。リノベーションした蔵での一枚、水戸部朝信氏

さてここからは、念願の水戸部酒造さんに伺って聞いた話などを〜!

酒蔵は蔵元さんのホーム。可視化して酒造りへの拘りや人となりが解ったりして、遠くからでも時間をかけていく価値が大いにあります!「だからこう言う味なのか〜。」とか、腑に落ちると言うか…点が線で繋がり、納得する事もしばしば。

水戸部酒造では2015年に蔵を大規模改修。水戸部朝信氏の美的センス光る間接照明なども設置されるお洒落な仕込み蔵は「環境を良くすることが蔵人の気持ちを高めて良い酒ができると思っている」との思いで素敵にリノベーションされています。土壁や梁など蔵の歴史を残しつつも綺麗に整備されたモダンで上品さのある蔵の中は、山形正宗の味わいとどこか重なります。

その他、リノベーションした仕込み蔵と続くように新築した場所もあり、その建物の応接間や階段には絵画が飾ってあったりと、山形正宗から感じていた美味しいだけでは表現しきれなかった感性の豊かさみたいなものが蔵に伺ってよくわかった気がします。

ミネラルを多く含む硬度約120の天然水(写真提供:水戸部酒造)

水戸部さん:硬質なお水でキレがいいみたいなのがうちのキャラというか特徴だと思うんですけど。

水戸部酒造のお酒の特徴の一つには、キレ上がるシャープな後口があげられると思います。驚くのがお酒の仕込水が奥羽山脈の伏流水で硬度は約120とかなりの硬水。日本の平均はおよそ50程だそう。

ミネラルが多い水を造りに使うことで、アルコール発酵が旺盛に進み、「銘刀の切れ味」とも表現されている抜群の切れ味へとつながっているのですね〜。

でもそれは良い事ばかりではないようです。

水戸部さん:日本酒業界でも低アルが今人気ですけど、うちがあんまりアルコールを下げない理由はですね、水の骨格が目立って美味しくないんですよ。14.5度くらいまではアリ。それ以下はやっぱ硬水なんだな〜って。

水戸部酒造のお酒を搾る伝統的な「槽(ふね)」の前での写真。次回は酒造りの期間に稼働する槽を見てみたい!

水戸部さん:ここは1898年に建てられた古い蔵で、ここがお酒を搾る槽場。槽場の作業がうちの作業の中で一番大変なんじゃないかな〜。

創業年に建てられたと言う古い蔵。そこに、どんと佇む3メートル程だろうか…貫禄ある大きな長方形の木箱のようなもの…これが、私が今回の蔵見学で必ず拝見したかった伝統的な「槽(ふね)」と言う日本酒を搾る機械です。なんと言いますでしょうか…ゲームでやっとラスボスにたどり着いたような感覚とでも言いましょうか。水戸部酒造といえば槽搾り!ついに来た!でた!会えた!ワオ!そんな気持ちでした。ちなみに「槽」は形が「舟」に似ているからそう呼ばれているんですよ〜。

木槽にもろみを入れた酒袋を一つ一つ並べる様子。(写真提供:水戸部酒造)

水戸部酒造のお酒はキレが良い事に加え、口当たりのやわらかさも特徴ですが、それはこの槽で時間をかけてゆっくりと搾られることから、生まれるのです。 ぜひご賞味いただきたい。

伝統の槽の話をしたばかりですが、水戸部酒造では2022年より舌触りがモダンでガス感のあるお酒が搾れるという自動圧搾機「横山式」も新しく導入されました。自社米で醸す「稲造シリーズ」や夏酒などモダンで爽快感が欲しいものはこの横山式を使用しているそうです。私も初めて見る醸造機器に興奮!今や蔵の4割は横山式での搾りになってきているそうですが、改めて口当たりのやわらかい槽の良さもこの機械を導入して再確認できたのだと言います。

奥の白い機械が2022年蔵に導入した圧搾機「横山式」。稲造シリーズやモダンで爽快感が欲しい「夏ノ純米」などの商品に使用。

やはり酒蔵は伝統と革新。現代の荒波をあらゆる方法で乗りこなし帆を進めているんですね〜。こうして、こだわり抜いて生まれた日本酒だからこそ、国内に留まらず海外でももっと評価されていくはずですよね。

日本酒の人気沸騰新定番おつまみ〝チーズ〟と一献

さて、ここからはペアリングについて語ります。記憶も遠のいている頃かも知れませんが、冒頭では紹介酒についてエイミー的テイスティングコメントを書きました。お酒の楽しみと言ったら狙いたいのは料理との相乗効果!マリアージュやペアリングと言う言葉を使ったりしますが、これが上手くいくと幸せが何倍にも倍増!一気にお酒の世界が楽しくなります♪

「山形正宗 純米吟醸 雄町」と合わせたラムレーズンクリームチーズ

私はこのお酒に「ラムレーズンクリームチーズ」を合わせました。これが大正解。料理とのペアリングの一番簡単なコツは、料理とお酒の味わいのニュアンスや濃淡を合わせることだと思いますが、ラムレーズンの凝縮した果実味や複雑さがこのお酒の良い複雑味と重なりクリームチーズも後口をやさしくしてくれるので○(まる)です。

わたしを歌手から歌酒へと導いた1本

左から「紅」「藍」「麹塵」

言い訳ですが、私はライブMCも長いんです。と言うことで、まだまだ山形正宗の魅力は語りきれません。飲むほどに知るほどにみるみるハマってしまう——私、氏家エイミーを語るうえで絶対欠かせない、このお酒のシリーズも伝えたい!「日本の伝統色シリーズ」と言ってパッケージに「紅(くれない)」「藍(あい)」「麹塵(きくじん)」色が使用されている3商品です。自分たちが最高と思える醸造工程で、スペックは関係なしに心から美味しいと思えるお酒を製造した水戸部酒造の最高峰シリーズです!

水戸部さん:草木染めって、時間の経過とともに味わいが増すじゃ無いですか。お酒も経年変化で変わっていくそれも表現したくて。だから、この3種類のお酒はちょっと熟成してるんですよ。ミュージシャンが曲がヒットして、次はもっとポップな曲を出すかと思いきや、めちゃくちゃ音楽的なわかりにくい曲を出したみたいな。イメージ的にはそんな感じで。これは熟成系なんですよ。

エイミー:時代的にはフレッシュフルーティーがウケる時代に、自分のマインドや本質にこだわると言うか、そう言うところもロックでイイ…!造り手として自分なりの最高を貫くその姿勢が素晴らしい。

水戸部さん:あえて商売っけを排して投げたんですよ。その結果、あんまり売れないんですよ。笑 だけどそれはそれで良いやと思って。それはいつかそれが通じた時に。やっぱり良い結果を生むと思うしね。

オリジナル曲「最後のラブソング」ミュージックビデオのワンシーン

私がこの「日本の伝統色シリーズ」の中でも、水戸部酒造のフラッグシップ「藍」を飲んだ時の衝撃は今でも覚えています。「このお酒から曲を書いてみたい…!」と、急に突風が吹いた感じで。パッと世界が開けたのを覚えています。そして、歌酒(かしゅ)活動のスタートとして書き下ろした曲が「最後のラブソング」です。このお酒が無ければ今の私の活動はありません。

また、マニアックですが、お酒を寝かせることで生まれる香りや直接的な時間経過と角の取れた味わいの穏やかさからBPM…いわゆる曲のテンポは遅めのバラードにし、複雑味は曲中の主人公が過ごした様々な思い出に歌詞として、味の土台のクリアさは曇りのない〝純愛〟をテーマに当ててみました。そして山形正宗らしく後口のキレが良いので、色々あったけど別れる純愛ソングになりました(笑)。

ちなみに、水戸部さんも音楽がお好きなんで、ぜひ山形正宗のラベルについているQRコードを読み込んでみてください。蔵人が演奏する水戸部酒造イメージ音楽「yeast and mold」に乗せて、蔵の魅力が伝わるブランデッドムービーを視聴することが出来ます!粋な事しますよね〜。

造り手の哲学と、いうなれば「銀座の鮨屋」の体の酒造り

苗の育成場。水を張った場所で育てるプール育苗中の苗

現在、水戸部酒造は最近はあまりこの言葉を使用していないそうですが〝ほぼドメーヌ化〟と言って自社で山形県オリジナルの酒米「出羽燦々(でわさんさん)」「雪女神(ゆきめがみ)」を栽培しています。ドメーヌは自社で原料栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでを行うワイン生産者に使われている言葉ですが、近年の日本酒業界でもよく耳にする言葉。

エイミー:全量自社米にするんじゃなくって〝ほぼ〟ドメーヌ化なんですか?

水戸部さん:うちは銀座の鮨屋方式って体にしてて。基本的には江戸前の魚を使うけれど、一番美味しいマグロは大間、鯛は明石の様なイメージ。

エイミー:その心は——

水戸部さん:「これじゃないとダメなんだ」「俺こうなんだ」とか、僕もそう言う時期もあったと思うけど、年齢とともに自然と色々変わるじゃないですか。雄町とか山田錦って造り手としては良い米なんですよ。それは造りたい、使いたいから全量山形産とか自社米には拘らない。美味しいなと思えるお酒ができれば良いかなと思って。

水戸部酒造の圃場は8ヘクタールほど。減農薬、有機栽培でなるべく環境負荷の少ない形を意識し農業もしています。自社で米作りも行い郷土を大切にしながらも、惚れ込んだ質の良い原料をも使う——

合っているかは分からないけれど、私の場合、普段のライブで使っているアコギも良いけど、ビンテージのGibsonとか高いTaylorとか使ってそのギターの個性を活かした曲をつくって演奏してみたい〜。そんな気持ちとも少し似ているだろうか?

水戶部酒造の自家栽培米(写真提供:水戶部酒造)

心を映すものづくり

蔵人歴が24年程になるという水戸部さんは「あっという間ですね〜」と振り返ります。継ぎたくないと思っていた家業ではあったが、父親からの1本の電話で直ぐに心が決まり蔵を継いだ。潰れそうな蔵を6・7年かけ黒字化に。相当に重いものを背負いながらも現在は850石ほどの製造量にまで成長。

その間、惚れ込んだ生ハムの正規輸入代理店になったり、その生ハムに合うお酒を赤ワインの醸造方法を取り入れた技術で造ったりと、心に共鳴するものへ突き進む水戸部さんの素直さも私にとって心地がいいんです。

ものづくりに携わる人としてのアツいもの、生き方、お酒という作品、柔軟さ、酒造りを通して教わったものがたくさんあります。歌酒(かしゅ)エイミーはこれからもお酒のフィルターを通して見えてくるものを音楽に乗せて届けていきたいと思います。ちなみにまだ発売は決まっていませんが、新曲のタイトルは「酒飲んで気ままに暮らしたい」になる予定です(笑)。

次のコラムはお笑い芸人ストレッチーズの背の高い方、福島敏貴さん!それではまた次回のコラムをお楽しみに〜。

【氏家エイミーのこの1本】

「山形正宗 純米吟醸 雄町」水戸部酒造(山形)

https://www.mitobesake.com/

【味わい】

オレンジや花、木の実やミルク等、様々な香りのニュアンスに、口に含むと旨み、鮮やかな酸に甘み渋み苦味がどれも固執せずにまろやかに一体感がある。やわらかいテクスチャーだが、後口のキレ上がりがスッキリと全体をまとめ上げる。

【酒蔵情報】

株式会社水戶部酒造。山形県天童市で1898年創業。「銘刀の切れ味」と表現される、シャープで硬質なフィニッシュを特徴とするお酒は、蔵の上流にある名刹「山寺(やまでら)」を源流とする硬度120の仕込水から生み出される。原料本来の米の旨みを十分に表現するために、蔵のお酒は全て純米造り。伝統的な「槽(ふね)」を使用した槽しぼりは、もろみが優しい圧力でしぼられるため、より自然で雑味のないお酒に。2004年より醸造用米の自家栽培を開始し、2018年には農業生産法人「株式会社水戶部稲造」を設立。

氏家エイミー
氏家エイミー

東北を拠点に活動する唎酒師、歌酒(かしゅ)、シンガーソングライター。2021 年「会津時空 winterʻs」でメジャーデビュー。会津若松市観光大使。音楽活動の他、都内地酒専門店での店長経験を活かし、日本酒のソムリエ「唎酒師」「日本酒学講師」取得後は日本酒イベントの MC やリポーター、日本酒セミナーの講師等も務める。2022 年からは NHK 福島放送局で放送中のラジオ番組「ふくどん!」で酒蔵リポーターや酒蔵ラジオドラマの構成作家に挑戦中。オリジナル曲「ふくしまの酒」「会津清酒で乾杯!」「日本酒音頭」など音楽で地酒の魅力を伝える〝歌酒(かしゅ)〟としても日本酒から広がる新境地を開拓中。

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