102162人間椅子・和嶋慎治さんの外遊び「山籠りソロキャンプ」|I♡CAMP

人間椅子・和嶋慎治さんの外遊び「山籠りソロキャンプ」|I♡CAMP

男の隠れ家編集部
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キャンパーの数だけキャンプスタイルがある。ロックバンド・人間椅子の和嶋慎治さんの流儀は、山に一人籠って自分と向き合い対話するキャンプだ。“哀愁のワジマシーン”のソロキャンプに密着した。

(※その他の写真は【関連画像】を参照)

※この記事は2024年10月号に掲載されたものです。

【プロフィール】和嶋慎治(わじま しんじ)
1965年青森県生まれ。大学時代、高校の同級生であった鈴木研一とロックバンド「人間椅子」を結成。ギターとボーカルを担当。1990年、メジャーデビュー。バイクとキャンプを愛しYouTubeには「哀愁のワジマシーン」チャンネルがある。

焚き火の前で一人ギターを弾く和嶋慎治さん。

■ペグは使わないという自由なキャンプスタイル

一台のバイクが国道299号線を秩父へ向かって疾駆している。2ストロークのエンジン音を響かせながら、ライダーはワインディングロードを楽しむかのように走る。

正丸トンネルを抜けると左手に「道の駅 果樹公園あしがくぼ」が見えてきた。左にハンドルを切る。駐車場にバイクを止めてヘルメットを外すと、白髪交じりの長髪を後ろで束ねた、渋めのライダーが顔を見せた。ロックバンド・人間椅子のギタリスト&ボーカリストである和嶋慎治さんだ。

ツーリングの途中、武甲山が見える地点で愛車を止めて休憩。

ロックミュージシャンがキャンプとは意外な組み合わせだが、和嶋さんは学生時代から約40年バイクキャンプを楽しんできた強者だ。

「僕らはバイクが青春だった世代。バイクキャンプは、ツーリングとキャンプの2つを楽しめる。雨に降られるなど辛いことも多いけれど、やめられないね」

目的地は横瀬川のほとりの武甲温泉キャンプ場。市街地近くなのに自然を満喫できる。
バイクのままテントサイトへ。

愛車のSUZUKI TS185ERは1970年代設計の空冷2ストローク。TSシリーズは仮面ライダーにも登場するバイクだ。

「空冷2ストロークはエンジンの音を五感で感じられるのが魅力。バイクに乗っていると風が肌にきて、体重移動する感覚が、子どもの頃に夢で空を飛んだときの感覚に近い。ロマンを感じますね」

バイクは積載量が限られる。お気に入りのもの以外は、できるだけ地元の食材と酒を買うことにしている。道の駅の農産物直売所では、キュウリ、ミョウガ、プチトマトなどの野菜と、秩父名物“おなめ”、地酒を購入。これで準備OK。

秩父までのツーリングを楽しんだ後にキャンプ場へ。
木々の緑も爽やかな林間のサイトを選んで、テントを張ることにした。

目的地の武甲温泉キャンプ場は秩父・横瀬川沿いにある、自然豊かなキャンプ場。和嶋さんは林の中のテントサイトを選んで、大きな木の近くにバイクを止めた。

まずは荷物を降ろす。ギアは必要最小限のテント、グランドシート、シュラフ、焚き火台、ミニテーブル、料理用のクッカー、シェラカップ、マグカップは一つずつ。さらにヘッドランプ、ランタンなど。

「バイクはかっこよさですが、ギアは壊れにくさが基準。構造が単純なものが壊れにくいので、シンプルなギアを使っています」

かたわらにバイクを置き、ご飯の炊き上がりを待つゆるやかな時。

最初にテントを設営する。10年使用の小型タープテントだ。

「立てやすいから自立型のテントにしています。ペグは打たない」

キャンパーにとってテントをペグで留めるのはルーティンワークだが、強風が吹いていない限りペグを打たなくても問題ない。常識にとらわれず自由に行動する。ロックミュージシャンの心意気だ。

キャンプでの夕食は一人黙々と地元の食材を味わう。
キャンプの間、酒とつまみはつねに和嶋さんの側に置かれている。

■山でのキャンプは自分と向き合い対話する時間

バイクキャンプを始めたのは大学時代。東京から故郷の青森県弘前市まで、バイクでキャンプをしながら帰省していた。

「孤独と静寂を求めてキャンプに行くのでぜいたくな設備はいらない。水とトイレがあればキャンプができる。海よりも山。誰もいない電灯もないような山の中で一人きりでキャンプをするのが良いね」

ユニフレームの焚き火台はキャンプの必需品。
愛用の皮手袋は所属レーベルからもらったもの。

和嶋さんはオカルトやスピリチュアルに関心が深く、それは彼のキャンプスタイルにも通じる。

「山には神がいる。山への畏怖の感情、見守られている感がある。山に一人で籠るキャンプは自分と向き合い対話する時間。都会ではそういう状況を得られないので一人で山のキャンプ場に行く」

テントはノースイーグル。
ヘッドランプはTIKKA。ギアのブランドにこだわりはなく、ホームセンターなどで買うこともあるが、ヘッドライトなど重要なギアはアウトドア専門店で購入する。

山で自らと向き合う時間は和嶋さんがクリエイターとして創作活動をする原動力になっている。普段は一泊の日程だが、過去にはトラベラーズギターと録音機材を持ち込んで、一週間くらい籠って曲作りをしたこともある。キャンプ場で作った曲に『衛星になった男』という作品がある。

「とにかく寒くて、こんなに過酷な体験をしている人間はいないと考えたら、ロケットに閉じ込められたまま地球の周りを永遠に回り続けている旧ソ連の宇宙飛行士のことが思い浮かんだ。最近は酒に酔いすぎて、アイデアはしばしば滞っていますが(笑)」

焚き火マニアではないが、やはり火が恋しい。

そろそろ日も暮れてきた。焚き火台の上で薪を井桁に組んで火をつける。さすがの手際の良さだ。

「火は人間の原始的な営みで、宗教的な感じがする。焚き火を見て何も考えない、無心でいる中でゆっくり時間が流れるのが良い」

料理には凝らないので夕食の準備は簡単だ。米を炊いて、野菜を切るだけ。おかずは現地調達の野菜とおなめのほかに、サバ缶がメインデッシュ。いろいろなサバ缶を試食した結果、一番脂がのって美味しかったマルハニチロの「月花」をいつも持参している。

選りすぐりのサバ缶、マルハニチロの「月花」。
地元野菜に秩父の名産「蔵出しおなめ」を付けて味わう。道の駅で大麦と大豆、塩だけの無添加おなめを選んだ。

「家でも自炊しています。一時ベジタリアン志向でしたが、力が出なくなったのでやめました。現在は肉類と乳製品はあまり摂らない。昔の日本人のイメージで魚と野菜を中心に食しています」

和嶋さんのキャンプにはさりげないこだわりがある。ご飯を食べるときはスプーンで。曰く「えさを食っている感じでよい」。朝のコーヒーは豆から挽く本格派ではなく缶コーヒーを。おしゃれなキャンプはしない。

地元の地酒「秩父錦」の夏酒を冷やで飲む。

“哀愁”のキャンパーを自称する和嶋さんらしさがのぞく。キャンプの楽しみは酒。この日は秩父の地酒「秩父錦」の夏酒を冷やで。冬場は焼酎のお湯割りを飲むこともある。

ほろ酔いとなって、夜の暗闇の中で焚き火を見ていると、ふいに創作のアイデアが浮かんでくることがあるそうだ。メモ帳代わりのスケッチブックに書き連ねていく。

「山の中だとピュアなアイデアが浮かんでくる。そんな時には幸せを感じますね」

スケッチブックに思い浮かんだアイデアを書く。
メモには小説の覚え書きなどが書かれている。
トラベラーズギターは分解できるのでバイクでも持ち運べる。

時にはこれまでの音楽人生を振り返ることもある。人間椅子は平成25年(2013)に世界的なロックイベントに出演した頃から再評価が始まった。

「僕らの音楽がいろんな人が何かを考えるきっかけになれば、生きる希望になれば、という思いで続けてきた。あと一つ望みがあるとすれば、あまり売れたくない。メジャーになりたくない。自由な表現ができなくなるので」

夜の静寂の中、暗闇の向こうに“山”の気配を感じるという和嶋さん。

方向性を変えることなく自分たちの音楽を追求しているうちに、ようやく世の中の方が追い付いてきた。和嶋さんの質素なこだわりキャンプは人間椅子の揺るぎないスタンスと底流でつながっている。

焚き火を見つめてギターを爪弾く和嶋さんのソロキャンプ。山に見守られつつ静かに夜が更けていく。

酒はキャンプの友。日本酒のほかに、家からウイスキーを持って来ることも。
サバ缶で飯を喰らう。

■和嶋さんの相棒「SUZUKI TS185ER」

愛車のSUZUKI TS185ERは海外向けの輸出モデル。バイクは6台所有、うち5台がSUZUKI。
SUZUKIのエンブレムは70年代のものを自分で貼り付けてカスタマイズした。
サスペンションも昔ながらの2本。
レトロ調デザインのヘッド周り。

テールランプはGT380のものと交換。

■和嶋さんの愛用品

ギターを含む、すべてのギアをバイクに積載したところ。ギアがすべて収まっているというから驚きだ。
バイクキャンプのギア一式を広げる。

■今回訪れたキャンプ場

武甲温泉キャンプ場

林間や川沿いなどテントサイトのバリエーションが豊か。林間にはハンモックを張るサイトがある。武甲温泉も利用可能。

埼玉県横瀬町横瀬4606-3
TEL:0494-25-5151
チェックイン・アウト:11:00・11:00
料金:1泊2200円(バイクでのソロキャンプ)

■MUSIC

キャンプの中で生まれた歌『衛星になった男』

人間椅子17枚目のアルバム『萬燈籠』(2013年)に、最後の歌として収録されている。衛星となって地球の周りを永遠に回っている宇宙飛行士がテーマ。作曲も和嶋さんが手がけた。

問合せ:徳間ジャパン

文/阿部文枝 撮影/関野 温

※この記事は2024年10月号に掲載されたものです。

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