■博物館仕様のドイツ箱が並ぶ 夢の昆虫部屋で過ごす時間
⚫︎もこ(関)さん/@mokorin64
この記事は2024年9月号に掲載されたものです。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)



“博物館のような空間にしたい”── 白い壁一面に掛けられた標本箱にはヘラクレスオオカブト、ギラファノコギリクワガタ、オオツノハナムグリといった甲虫が整然と並ぶ。
美しい塗装が施された、上面がガラス張りの木製の標本箱、通称「ドイツ箱」がいくつも飾られた部屋。使用するドイツ箱は一つ1万円ほどとかなり値が張るが密封性が高く、博物館で使用されているものと同じもの。



「標本箱は虫が入り込んで標本を食べてしまうこともあります。この箱はつくりがしっかりしていて蓋も開けにくくなっています」
壁掛け用の飾り棚が高額で、デザインもイメージと違ったため、ホームセンターの金具で自作した。
3年前、結婚を機に建てた家に造った念願の昆虫部屋。縦長の8畳ほどの部屋は、中央に小さな仕切りがあり、作業場を兼ねた標本スペースと水場を設けた飼育スペースに分かれる。

「こんな部屋をもつのがずっと夢だったので、奥さんが理解のある人じゃなかったら、一生独身だったかもしれません」ともこさん。
幼い頃から昆虫が好きで、家の裏にある草むらや近くの畑、田んぼでバッタやカマキリを捕まえて遊んでいた。本格的に標本を作り始めたのは社会人になってから。それまで昆虫と触れ合うことはあっても、クワガタやカブトムシを捕まえたことがなかった。

「大人になってクワガタやカブトムシを捕まえてみたいな、と思ったのがきっかけです。いろいろと調べて採集に行くようになりました」
もこさんに甲虫類の一番の魅力について伺うと、その重厚感と美しいフォルムだという。昆虫を飼育しながら、観察しては楽しんでいたが、ある時飼っていた虫が死んでしまい、それを捨てるのがもったいないと感じたことが標本作りの最初だった。集めることに夢中になり、一時は飼育よりも収集熱の方が高かったそうだ。



「今はまた飼育に力を入れています。飼育には自分で育てて、大きくするという楽しみがあります」
飼育では温度管理が一番苦労する。暑いと死んでしまうため、室内の温度は常時22~23度。年中エアコンをつけたまま、温度計をいくつも部屋に置く。太陽光パネルも設置し、停電対策も抜かりない。以前はワンルーム住まいだったため、夏は寒さのあまり布団を被って耐えることもあった。


昆虫愛あふれるもこさんだが苦手なこともある。カブトムシやクワガタの幼虫、さなぎを飼育するボトルやケースは3カ月に一度、すべての土を入れ替える。
虫が土の栄養を吸収し、土が劣化するためだ。数百匹を飼育する容器の土を入れ替え、洗浄する作業は容易ではない。その作業がとても億劫だと話すもこさんだが、生き物を飼うということはきっとその苦労以上の喜びがあるのだろう。


もこさんにとってこの昆虫部屋は“人生”そのものだ。
「生きがいですね。これがなかったら仕事をするモチベーションも湧かないくらい。まだまだ未完成なので、この部屋を完成させることが新たな夢ですね。仕事も頑張れます(笑)」ともこさん。
昆虫収集家にとって、夏は一番忙しい時期だ。クワガタは6月下旬から7月にベストシーズンを迎え、カブトムシは少し遅い7月の中旬以降に数が増えるそうだ。



「今、コレクションしているものよりも大きいものを捕まえたら、その都度、標本箱の中身を入れ替えて更新していきます」
一つまた一つと、新しい昆虫と出合い、もこさんの夢の空間が完成へと近づいていく。今年ももこさんの“熱い夏”がやってくる。




■BEST ONE!
金箔を塗ったように美しい“オウゴンオニクワガタ”

ミャンマーの固有種で、1994年に発見された亜種のババオウゴンオニクワガタ。乾燥したところでは黄金色の体だが、湿度が高くなると黒色に変色する。
■ROOM DATA
広さ/17㎡
使用年数/3年
趣味/昆虫採集、標本作成、beatmaniall DX
この記事は2024年9月号に掲載されたものです。
撮影/尾上達也
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