女性向けのイメージがあった美容医療だが、最近では男性ビジネスマンが美容目的でクリニックを利用するケースが珍しくない。実際に男性はどんな思いで施術を受けに訪れているのだろうか? 東京・新橋にあるクリニックフォア新橋の院長・圓山尚先生に男性の美容クリニック利用事情を聞いた。
■コロナ禍を機に美意識を高める30、40代のビジネスマン
“サラリーマンの街”として知られる東京・新橋にあるクリニックフォア新橋は、内科・皮膚科から美容医療までを備えたクリニック。患者の男女比は、8:2で女性が多いが、美容目的で訪れる男性も多いという。
「男性の場合は、ニキビやニキビ跡、イボやホクロといったできもので悩まれている方が多いですね。まずは保険診療で新しくできるニキビがなくなってくると、ニキビ跡が気になるようになり、美容目的の自由診療に移られます。
ニキビ跡の場合は、『ダーマペン』という施術で肌の凹凸をなだらかにできます。ダーマペンとは、先端についた極細針で1秒間に肌表面に小さな穴をあけ、同時に美容液を塗って自然治癒力を高めるもの。元の肌状態によりますが、何度が打つことでなめらかな肌になります」(圓山尚先生、以下同)
こうした診療を受けるのは、20代から30代が多いというが、コロナ禍に入って30代から40代の男性に新しい目的意識が芽生えているという。
「リモートワークで、ビデオ会議やビデオチャットで自分の顔をよく見るようになった結果、シワなどの顔の老化のサインが気になって来院される方が増えています。マスク生活では、目の周りが強調されるので、眉間のシワや目の周りにできるシワをなくしたいという方は多いです。逆に、マスクで顔が隠れているうちに口元やフェイスラインのシワを浅くしたいという方もいます」
シワにはボトックスという注射を打って表情筋の緊張をとる施術が利用されている。コロナ禍は、男性の美容意識を変えるきっかけにもなったようだ。
■美意識の変化とクリニックの増加・技術進歩も利用を後押し
男性特有の肌悩みやコロナ禍がきっかけとなり、美容クリニックを訪れる男性ビジネスマン。それだけではなく、美容に対する意識の変化も大きいと圓山先生。
「男性が美容クリニックを訪れるのは、悩みの深さもありますが、『身だしなみ』という意識も大きいと思います。その証拠に、会社員でも営業マンやサービス関係の職種の方が多いですね。そのほかテレビ関係の方やスポーツ関係の方もいます。人と接する、もしくは人に見られる職種の方が多い印象です。
少し前まで男性の美容クリニック通いは、AGAやひげ脱毛の需要が高かったと思います。AGAは悩みに起因するものですが、ニキビ跡やシワ、ひげ脱毛などは身だしなみという意識が高いもの。AGAの治療とそうした方とはまた別の層だと思います」
また、受け皿となる美容クリニックの状況の変化も、男性の美容クリニック利用を後押ししているという。
「ここ数年、美容皮膚科を掲げるクリニックは全国的に増えていて、東京などの都市圏ではそれが顕著。男性専門の美容クリニックも増えています。クリニックが増えているだけでなく、治療の技術も進歩しています。最近になって、美容医療のプロトコルができ、どのくらいのさじ加減にすれば自然な仕上がりになるかというのが確立されダウンタイムが減ったのです。
その結果、ナチュラルに若返ることが可能になりました。昔のように、『美容医療=整形』のような劇的な変化ではなくなったことも、クリニックに通うハードルが下がった一因だと思います」
■男性のエイジングケアには、HIFUがおすすめ
肌悩みからではなく、ポジティブに身だしなみとして男性も美容クリニックを訪れる時代。年齢を重ねて肌が老化を迎える前に、エイジングケアとして肌をリフトアップするHIFU(ハイフ)とい施術がおすすめだそう。
「ハイフは、“切らないリフトアップ”と呼ばれる施術で、ダウンタイムなく顔をキュッと引き締める効果があります。皮膚の下には筋膜がカーテンのようにぶら下がっています。その筋膜に熱を当てて収縮させることでリフトアップする施術です。
筋膜には縦や横などの走行があるので、その方向に沿って持ち上げるもの。古い輪ゴムを新品の輪ゴムに取り替えるイメージです。たるみは落ちたものを引き上げるよりも、そもそも落ちないようにするほうが簡単なので、予防的な意味もあります。顔に表れる老化が気になっている人は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか」
身だしなみというニーズに加え、コロナ禍やクリニックの増加、技術の進歩により、男性の美容クリニックに対する利用ムードが高まっているようだ。昔よりはハードルも下がっているので、気になっている人は気軽に足を運ぶのも良さそうだ。
【取材協力:クリニックフォア】
内科・アレルギー科・皮膚科などの保険診療と、自由診療の美容医療が症状や目的に合わせて受けられるクリニック。新橋のほか、田町や飯田橋、有楽町、大手町、四谷、心斎橋にもクリニックがあり、対面診療だけでなくオンライン診療による内服薬・外用薬の処方も行っている。
取材・文:岡本のぞみ(verb)