寒さが厳しくなると、味噌を使った煮込み料理が恋しくなる。味噌を味付けに使う煮込み料理は全国各地に存在するが、愛知県の「味噌煮込みうどん」は、ひと味違った魅力を持っている。独特の風味があるため、好みが分かれる料理かもしれないが、食べると体がポカポカしてくる。
この冬にぜひ味わいたい、愛知県の味噌煮込みうどんの魅力を探る。
●愛知県の味噌煮込みうどんはどんなもの?
愛知県の郷土料理として知られる味噌煮込みうどんには、どのような特徴があるのだろうか。
味噌煮込みうどんとは
平打ち麺の「きしめん」と並び、愛知県を代表する麺料理のひとつ「味噌煮込みうどん」。カツオやムロアジから取った出汁が使われ、そこに愛知県ならではの「八丁味噌」を溶かし入れる。うどんと鶏肉、かまぼこやネギ、油揚げなどを土鍋で一緒にぐつぐつと煮込み、仕上げに生卵を落として味わう料理だ。
風味豊かな八丁味噌のコクがうどんにからまり、食べ終わる頃には体がすっかり温まっているだろう。こってりしているが、胃もたれしにくく食べやすい。冬にこそ、その旨味を堪能できる料理といえる。
八丁味噌とかた茹で麺
味噌煮込みうどんに欠かせないのが、愛知県特産の八丁味噌だ。他の地域の味噌煮込み料理と違うのが、この味噌。豆味噌なので、米や麦を原料とする味噌とは違い、濃厚な味わいと色味に特徴がある。
そして、味噌煮込みうどんの麺は、水と小麦粉だけで作られる。かために煮込むのが特徴で、市販のゆでうどんに慣れている場合、「もう少し火を通したほうが良いのではないか?」と思うほどかためだ。店によっては、多少粉っぽさを感じる場合もあるかもしれない。
最初は驚くかもしれないが、食べ終わる頃にはこのかたさがクセになる。濃厚な八丁味噌の風味に負けない、堂々たる麺の存在感が「愛知の味噌煮込みうどん」なのだ。
●知られざる八丁味噌の魅力
愛知県の味噌煮込みうどんに欠かせない八丁味噌は、全国的に見ても特徴のある味噌だといえる。
八丁味噌とは
そもそも「八丁」という名前は、さかのぼること江戸時代初期にはすでに、八丁村で製造販売されていたことに由来している。八丁村は、徳川家康の居城であった岡崎城から八丁(約870m)離れたところにあったようだ。八丁村は現在の岡崎市八帖町で、現在でも2つの味噌蔵があり、伝統的な方法で八丁味噌を製造している。
原料は大豆と塩だけで、麹をつけ、大きな木桶で2年以上熟成させる。仕込み水も少なく、木桶の上には川石をピラミッドのように積み上げる。その重さは3トンにもなるという。この際使われるのは、天然の川石。不ぞろいなので、適当に積み上げていては樽によって味わいが異なってしまう。そのため、それぞれの樽に仕込まれた味噌の味わいが均等になるよう、熟練の職人技が必要になるという。
職人技によって仕込み、じっくりと寝かせることで、濃厚な豆味噌ができ上がるのだ。
徳川家康も愛した八丁味噌
八丁味噌は、少ない水を使って仕込まれる。これは、地域的に多湿な気候が影響したためであるが、水分が少ないということは保存にはもってこい。そのため、戦国時代には三河武士が戦の際に兵糧として用いていたようだ。
徳川家康は、江戸に移ったあとも、たびたび三河の味噌を取り寄せていたらしい。健康に気を使っていたという徳川家康。長寿の秘訣には、三河で生まれた八丁味噌を食していたから、なんてこともあったのかもしれない。
●味噌煮込みうどんの楽しみ方
愛知県に出向いた際には、ぜひ本場の味噌煮込みうどんを試してみるのをおすすめする。濃厚な八丁味噌の風味と、味噌煮込みうどんならではのかための麺のおいしさを堪能できるはずだ。
ただ、家庭で味わう際には、麺は市販のゆでうどんでも問題ない。八丁味噌を手に入れて、できれば土鍋で、ダシと合わせてうどんを煮込めば良いのだ。
鶏肉とネギ、かまぼこと油揚げを買えば、自宅でも手軽に楽しむことができる。そして、仕上げには生卵を落とすのを忘れずに。
栄養価が高いと言われる八丁味噌を使った味噌煮込みうどん。寒さ厳しい冬の日に、好みの具材を入れ、ぐつぐつと煮込んで味わってみてはいかがだろうか。