キャデラック XT4の日本に合った魅力とは?
キャデラックでは現在、エスカレードを筆頭にXT6、XT5、XT4といったラインアップを擁し、日本では計4モデルのSUVを展開する。今回紹介する「XT4」は、エントリーモデルというポジションで、キャデラックのなかでもっともコンパクトなボディを持つ1台となっている。
エントリーモデルとはいっても、一流ホテルのエントランスに乗りつけても様になるプレミアム感は、さすがキャデラックだと納得する。高級ホテルのヴァレーパーキングで、ホテルスタッフにクルマの移動を委ねるシーンでもこのXT4の美しいエクステリアはとても画になる。
XT4のエクステリアは、シャープなラインをメインに構成されたスタイリッシュなデザインが魅力だ。プレスラインが各所で効いていてじつにカッコいい。キャデラックの各モデルに共通する五角形スタイルのフロントグリルが、中央のキャデラックエンブレムのデザインとともにインパクトある顔を作り出している。
インテリアにも注目したい。幾層にもラインが重なり、左右の広がり感とシャープさを備える好感の持てるデザインだ。今回試乗したのは最上級グレードの「プラチナム(Platinum)」。ソフトパッド仕上げの表面処理も上質な雰囲気をもたらしている。
2トーンカラーの仕立ても、その上質な雰囲気づくりに一役買っている。インパネからドアにかけて上部はスポーティなブラック。ルーフもブラックだ。いっぽう、下部と本革のシートは優しい色味が高級車らしいムードを放つベージュ基調で、シートベルトもベージュ系で統一。ラグジュアリーな装いとスポーティなテイストが巧みに融合したインテリアだ。
高級レストランで美食を堪能する上質な時間の往復は、やはり高級車でというのが大人の流儀。それをいとも簡単にこなすプレミアム感を、このXT4は纏っている。高級ブランドが居並ぶ銀座を走ってもXT4はプレムアムモデルとしての威厳にあふれる。
さらに、閑静な住宅街にもよく似合い、自宅のパーキングスペースに鎮座させるのにふさわしい堂々としたルックスもうれしい限りだ。当然ながらスーツ姿で乗り込んで様になり、アメカジファッションも似合うというのは、アメリカンブランドならではだろう。
想像を超えた走りの良さ
ラグジュアリーブランドのモデルとして恥じない内外観だが、走りはどうだろう。
結論から言えば、このXT4は期待を上回る走りを見せてくれた。まず、走り出した瞬間に感じるのがボディ剛性の高さ。そしてアクセルを踏み込めば、力強い加速でドライバーを魅了する。
搭載するエンジンは2.0ℓの直4ターボで、パワースペックは最高出力230ps(169kW)、最大トルク350Nm。3.5ℓモデル並みのトルクでボディを力強く引っぱっていく。
ドライブモードは「ツーリング」「AWD」「スポーツ」「オフロード」の計4種類。2WDで走る「ツーリング」は軽快なフットワークがうれしい。「スポーツ」は4WDに切り替わると同時にステアリングフィールや脚周りも程よく引き締まり、しっかりしたフィーリングへと変化する。このスポーツモードは積極的に走りを楽しみたいときに格好のモードだ。
快適な空間を演出するインテリア
このXT4で望外な美点のひとつが、前席のスポーティな包まれ感だ。ドア上端(ウィンドウ下端)のライン、いわゆるベルトラインが高く、ウィンドウグラフィックがコンパクト。まるでスペシャルティクーペをドライビングしているかのようなムードがあった。
外から眺めてもガラス部分(グリーンハウス)が小さく、スポーティなフォルムを纏っていることに気づく。パワフルなエンジン、フットワークの軽やかさなどと相まって、この囲まれ感はじつに好印象だった。
もちろん快適性に優れ、静粛性にも富む。一貫して心地よい移動時間を過ごさせてくれるのだ。装備は、風合いの良いレザーシートをはじめ、前席パワーシート、電動チルト&テレスコピックステアリング、ヘッドアップディスプレイ、ハンズフリーテールゲート、ウルトラビューパノラミック電動サンルーフなど快適装備を多数用意。
加えて、ACCはもちろん、オートマチックパーキングアシスト、リヤカメラミラーも標準で装備する。さらに、コンサートホールにいるかのようなプレミアムな音響体験をもたらすBOSEサウンドシステムも装備リストに含まれる。
ところで、キャデラックに関して昔話ともいえる、日本の道路では持て余す大きなボディ、そして燃費の悪さなどといった印象は、今回の試乗で完全に払拭され、スタイリッシュなルックスと走りの良さを備えたラグジュアリーブランドという印象を強くした。
4605mm×1875mm×1625mmのXT4のボディは、サイズ的にはトヨタのRAV4とほぼオーバーラップし、日本の道路事情とも馴染むサイズだった。
いっぽうで旧来のアメ車らしいテイストもしっかり味わわせてくれた。そのひとつが、フロントシートの座面。大型サイズで、じつに座り心地がよく、リラックスできるものだった。シートバックはスポーティなデザインなのだが、座面は厚みを感じるクッションでヒップから腿を優しく支えてくれる。ここだけは他国のブランドとは一線を画し、アメリカンという出自を誇示するかのようだった。
パッセンジャーの姿勢を崩さない絶妙な柔らかさの加減でもてなしてくれる。どこまでも続く道、見渡す限りの大地。そんなアメリカならではのドライブシーンが連想され、心地よい時間が堪能できる。
そしてもうひとつ、アメ車的な味わいが、ハンドル位置だ。左ハンドルのみの設定になっている。しかし、左ハンドルでも車幅の感覚やボディの大きさが実に把握しやすかったことは朗報だ。
都内各所のドライブで戸惑うことなく運転できたのは意外でもあった。左ハンドルで日本の道を走ったときにもっとも不便さを感じるひとつである右折も、車高の高さからか苦になることはなかったのだ。
クルマ選びは、個性を演出する手段。しかし、いまや多くのインポートブランドのSUVが日本に上陸ししている。人気のあまりどれを選んでも個性や自分らしさが発揮できない時代でもある。
そして、大多数が右ハンドルのみの設定。ならば、それを逆手に取って左ハンドルのモデルを選ぶことで、他人とは違った個性をアピールするのはいかがだろうか。
それは決してあざとい手段ではないはずだ。
【specification】
キャデラックXT4 Platinum
車両価格:684万円
全長×全幅×全高:4605mm×1875mm×1625mm
ホイールベース:2775mm
車重:1780kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:LSY
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm
圧縮比:11.3
最高出力:230ps(169kW)/5000rpm
最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
過給機:ターボ
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:61ℓ
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文:伊藤 治彦(ITO Hatuhiko) 撮影:山上 博也(YAMAGAMI Hiroya)