103024昭和×商店街純情旅「浜マーケット」小さなアーケードに温もりがたくさん

昭和×商店街純情旅「浜マーケット」小さなアーケードに温もりがたくさん

男の隠れ家編集部
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昭和20年代後半から発展してきた商店街は、最盛期には歩くのもままならないほどの賑わいをみせた。今でも、20店鋪ほどが元気に明るく頑張っている浜の商店街へ。

(※その他の写真は【関連画像】を参照)

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

■昭和から続けているからこそ深い付き合いができる

観光地を訪れ、有名どころを巡るのは楽しい。しかし、ちょっと足を延ばして、地元の人の生活に触れることで旅の充実度はグンと増す。

海とおしゃれなイメージを持つ横浜も同じだ。地元密着型の素朴な商店街「浜マーケット」もそんな地元に触れ合える場所の一つ。

これほど笑顔があふれる商店街は珍しい。店員は活き活きと働き、客は買い物を心の底から楽しんでいるのがはっきりと伝わってくる。最も心奪われるのは、個人商店ならではの、昭和に存在したような店と客の程よい距離感である。

アーケードを彩る装飾もワクワク感を高めてくれる。

買い物をしても多くの人が顔見知り、昭和にあった血の通った人間同士の付き合いがきちんと受け継がれて、ここに残っているのだ。どこの店主に聞いても、そこだけは胸を張って自慢する。

上質な野菜と果物を商う「片野青果」代表の片野武さんは嬉しそうに、一つのエピソードを話す。

「ある日、若い女の子が買い物に来てくれたんです。なんとなく話が弾んじゃって、聞いたことある名前をおっしゃいました。『あー、○○さんっていうの?』と聞き返すと、『そうです、私、孫なんです』。と常連客の家族だと判明したんです。こういうことって、長いことやってる商店街じゃなきゃ起こり得ないことですよね」と、片野さんは、新鮮なキュウリを袋に詰めながら、満面の笑みをこちらに向けた。

アーケードに少し入った所、揚げ物のショーケースに人が集まっていた。「グルメショップ カネヒラ」だ。横浜市のコロッケナンバー1を決める平成23年(2011)度の投票でかつて1位になった三角コロッケは、1日に600個売れるとか。

また、コロッケとともに精肉を購入する客も多い。グラムを指定して買う光景はスーパーではあまり見られないが、商店街では当たり前のものだ。

⚫︎八百屋 大賑わいの八百屋「片野青果」

昭和36年(1961)創業の「いいもの」を揃える野菜と果物の店。片野青果のスタッフは、その快活な雰囲気が写真越しにも伝わってくる。

店頭の瑞々しい野菜や果物は、店主の片野さんが毎朝2時に市場へ足を運んで仕入れる。
どの店員も会計待ちの客を見るとすぐに暗算で対応。

店主の片野武さん(写真左から2人目)は、「この仕事が大好きで休みの日にはかえってストレスが溜まる」という仕事の鬼。スーパーなどを訪れて、常に流通の動向を研究する。

⚫︎肉屋 名物“三角コロッケ”「グルメショップカネヒラ」

オープン当時からある、三角形のコロッケ(110円)は、ジャガイモの甘みとほっくり感、肉の香ばしさが際立つ傑作。形が不思議な惣菜は興味をそそる。

精肉が並ぶ奥に揚げ物が。
調理場では、三角に成形された種にパン粉をまぶして次々に揚げられていく。

なぜこの形になったのか「じつは誰も知らないんです。創業者の弟が惣菜販売を始めたらしく、その頃に発明されたようですが、形の理由は不明なんです」と店長の兼平清美さんも苦笑い。

肉の扱いはお手のもの。
揚げたてのコロッケがまた食欲をそそる。

■浜マーケットを支えた市電

国道16号を走っていた市電は、浜マーケットができた初期、その発展に大きく寄与した。横浜駅や桜木町駅から根岸線が磯子駅まで延びる前には、根岸の辺りに行くには市電が一番便利だった。

写真提供◎染谷午郎「浜停留所」

浜マーケットができた場所は、市電の浜停留所の前。本牧を中心に周辺から来た客で大賑わいになっていたという。一通りの買い物ができる場所として、多くの人たちが訪れた。

昭和47年(1972)の市電の廃止後、活気は少しずつ失われていった。それでも実際にアーケードに入ると、昭和の風情を残した質の高い商店街として、人々の暮らしを支えているのだ。

⚫︎鶏肉屋 優しい笑顔のお母さん「鳥竹」

まず82歳である店主の笑顔を見てほしい。浜マーケットを象徴する笑顔と断言したい。夫と2人で店を始めたのは、昭和36年(1961)のこと。ご主人は亡くなったが一人で頑張っている。

唐揚げやローストチキンが絶品。「お元気ですね」と声をかけると「元気すぎるくらいだよ」とまた笑顔。

新鮮な国産鶏肉を使用した唐揚げは、見た目だけでも美味しそう。手にとってかぶりつきたくなる、昔からの人気商品だ。

■2代目や3代目が継ぐ、昭和創業の老舗が並ぶ

「この辺りには商店が少なかったので、お客さまにとって便利だったと思いますよ。昭和29年にはアーケードも設置されて、雨の日も快適になりました」

昔を懐かしむように顔を上げる、現在浜マーケットの会長を務める高木究司さんが、商店街の存在意義を語り始めた。

「時代は変化しますが、ここだけは昭和のまま。こういう場所で会話を楽しみながら、対面で買い物するのは、ほかでは味わえません」

浜マーケットは、アーケードの入り口が2つあり、どちらの入り口にも八百屋がある。南国道16号側の「岡田果実店」と磯子小学校側の「片野青果」だ。ちょうど岡田さんで話を聞いていると、お婆さんがやってきて、店員が袋を渡した。

「いろいろ買うと重くなっちゃうでしょ。これから他の店にも行くというので買った物をお預かりしていたんです。お婆ちゃんだったから大変でしょう。いつもこちらに戻ってくるときはお荷物をお預かりしてるんですよ」

いかにも昭和といったサービスに、気分がほっこりとした。

⚫︎靴屋 時代とともに商品も変化「はきもの 旭屋」

かつては下駄や草履を中心に商っていた。今は、サイズもふんだんな紳士・婦人靴、子ども用、スニーカー、スリッパ、なんでもござれ。

タバコが売られている靴屋も珍しい。さらに傘まで売られていて種類も豊富、修理もしてもらえる。頼りになる店といえるだろう。

昭和60年の広告。店員の顔が出ているのが面白い。

⚫︎喫茶店 昭和から唯一残る喫茶店「カフェ 洗濯船」

店内は古い柱時計やカメラなどで飾られ、一昔前を思い出させる。料理はどれも繊細な逸品ばかりだ。

創業は昭和54年(1979)。横浜の洋食文化を伝える名店といっていい。とくに、身が柔らかいタン中を使ったシチュー(1900円)は、ぜひ味わいたい。

⚫︎総菜店 優しい味の佃煮や煮物「はまや高木食品店」

ガラスケース越しに見えるお惣菜は、どれも美味しそう。実際に食べてみるとその予想を超えていることに驚かされる。

浜マーケットの会長を務める高木究司さんが無添加自家製にこだわった煮豆は外せない。1日何度も入れ替わるケースの中身を楽しみに訪れる客も多い。

⚫︎花屋 商店街を彩る花が並ぶ「フラワー・スミレ」

季節の花を多くの人に楽しんでもらいたいという気持ちで花屋を営む。予算に応じて、花束、アレンジメントなどを用意。

女性スタッフの細やかな気配りが花の美しさを引き立てるフラワーショップ。季節柄か、入り口には、かわいい透かし鬼灯が飾ってあった。

⚫︎魚屋 新鮮な鮮魚が安く買える「伊豆屋」

午前中に訪れると、店主が魚を丁寧に並べていた。氷で鮮度を保つ理想的な陳列の仕方は、魚に対する愛情と、美味い魚を客に食べてほしいという気持ちがあふれている。

今日から入ったという新サンマやアジが並べられていた。きっと腑まで美味いのだろう。

⚫︎八百屋 表通りに面した商店街の顔「岡田果実店」

女性3人で頑張っている安くて美味い野菜と果物を扱う店。大量に仕入れることはせず、つねに新鮮なものを並べるように心がけている。

この店のフルーツの盛り合わせは匠の技といわれるほど美しい。話好きのお嫁さんが横浜産の小松菜を手に写真に収まってくれた。

⚫︎日用品店 懐かしの道具に出合えるかも「原金物店」

洒落たキッチン用品や雑貨などではない、昭和に使われていた道具がしっかりと並んでいる店内を見ると、懐かしさを感じる人は少なくないはず。

ヤカンやホーローの鍋などを手に入れたいなら、こういう店を訪れたい。丈夫な亀の子束子(たわし)も健在だ。

浜マーケット
神奈川県横浜市磯子区久木町20-5
TEL/045-751-3737
定休日/9日、19日、29日(そのほか店舗により休業日あり)
営業時間/9:00~18:00(店舗により異なる場合あり) 
アクセス/(車)首都高速道路湾岸線「磯子IC」より約10分。(電車)JR「根岸駅」より徒歩約15分。

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

文/今村博幸(レトロイズム) 撮影/米屋こうじ

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