105962酒を学び、酒を楽しむ! 世界を旅する酒 A to Z

酒を学び、酒を楽しむ! 世界を旅する酒 A to Z

男の隠れ家編集部
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「さけ」と口に出せば、本来は日本酒のこと。だが飲めば気分が高揚するアルコール飲料は世界各国に存在している。素材は米に麦にブドウ、あるいは芋……。

それでも「百薬の長」であることに変わりはない。世界の酒を探求してみよう。

■世界各国で「酔い」が発見され そして独自の酒文化が花開いた

ギリシャ神話にこんな逸話がある。葡萄酒の神であるディオニソスは、とある村で村長に葡萄酒の製法を伝授した。村長は葡萄酒を村の衆に振舞うが、初めて酒を飲んだ彼らは「酔い」が理解できず毒を盛られたと勘違い、ひと騒動持ち上がる……。

人類が「酔い」に接したのはいつなのだろうか。熟れ過ぎて発酵した果物を食べたときか、偶然に微生物が作用した穀物を口にしたときだろうか。

いずれにせよその香りを芳香と解釈し、酔いを好ましいものとして受け入れたことで酒文化は世界中に広まることになる。

でんぷん質をアルコールにするには、カビの作用、あるいは麦芽、はては唾液による消化作用を利用する。糖分がたっぷり含まれた果実を酒にするのはもっと簡単だ。洗わずそのまま絞るだけで、果皮に付いた酵母がそのまま作用して酒になる。

技術の発達で「蒸留」という工程を経て強烈なアルコールが生み出され、薬草を漬け込み成分を抽出するなどして新たなジャンルが生まれる。

この項では世界各国の主な酒の関連用語を網羅した。もちろん酒の世界は無限、数項ではとても語れない。

■お酒って何? お酒の分類

⚫︎醸造酒

ビール、日本酒、黄酒、ワイン、シードルなど

穀物や果物を「発酵」させアルコール化したもの。米や麦をコウジカビやクモノスカビで、ブドウを酵母で、あるいは麦を麦芽でと素材や発酵の素「スターター」はさまざま。

アルコールを造り出す微生物はアルコールに弱いので自然に発酵は止まり、醸造酒の度数は最高でも20度ほど。

⚫︎蒸留酒

ウイスキー、ジン、アクアヴィット、白酒、ブランデーなど

アルコール発酵した「もろみ」を加熱すれば、水より沸点の低いアルコール分がまず気化する。気化したアルコール蒸気を冷やせば液化する。

この「蒸留」の原理で造られるのが蒸留酒。蒸留を重ねることで酒のアルコール度数は高まる。ポーランド産の蒸留酒「スピリタス」は度数98度!

⚫︎混成酒

ヴェルモット、サングリア、梅酒、シャルトリューズなど

すでにできあがった酒に、薬草や果物などを漬け込みそれぞれの風味を付けた酒。日本の梅酒、あるいは「マムシ酒」がこのタイプだ。

古代ギリシャ時代から薬草を漬けたワインが存在したが、風味が薄く、防腐効果に優れた蒸留酒が登場した後はリキュールなどさまざまな種が生まれた。

■世界で造られている主な酒

◯は醸造酒 ■は蒸留酒 ★は混成酒

日本の日本酒、中国の白酒に黄酒、欧米のワインにビールにウイスキー……ほかにも朝鮮のマッコリや東南アジアのやし酒など。世界各国の民族に、彼らが住む土地の風土や生業に伴う独自の酒が伝承されている。酒の魅力は尽きることがない。

■世界を旅する酒 A to Z

■Aspergillus Oryzae

ニホンコウジカビ(アスペルギルス オリゼー)

日本酒に味噌、醤油と日本食に欠かせない「糀」は、蒸した米にニホンコウジカビを繁殖させたもの。一方で朝鮮や中国、東南アジアの「麹」は、小麦粉の団子にクモノスカビを繁殖させたもの。酒仕込みには団子を砕いて仕込む。

■Absinthe

アブサン

Glass of absinthe with lime and sugar cubes

フランスをはじめヨーロッパ各国に伝わる、ニガヨモギを漬け込んだ度数70度程度の薬草系リキュール。画家のゴッホやロートレックなど多くの芸術家に愛されたが、強烈な度数ゆえ中毒者も多く、退廃のイメージで語られた。

■Beer Purity Law

ビール純粋令

Image from Wikimedia Commons

1516年4月23日、バイエルン公ヴィルヘルム4世(右)が「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」とのお触れを出した。これは希少な小麦をパンの原料にまわすためだったが、結果的にビールの質を向上させた。

■Boukha

ブッハ

北アフリカの地中海沿岸、チュニジアで生産される、度数36度ほどの「イチジクの蒸留酒」。ストレートで、あるいはコーラ割りやオレンジジュース、パイナップルジュース割りなど、イスラム圏にありながら愛されている酒。

■Baijiu

白酒

日本語では「しろざけ」だが、中国で「白酒」は「パイチュウ」と読み、焼酎を指す。キビや高粱を発酵させたもろみの蒸留を繰り返せば度数70度に達する。強烈な個性は脂っこい中華料理のクセを洗い流し、体を温める効果がある。

■Diacetyl

ダイアセチル

日本酒仕込みでもろみの酵母の増殖が遅れたときに生まれるヨーグルトのような香り。ビールでは発酵のし過ぎで生まれ、バターのような香りになる。「つわり香」とも呼ばれ嫌われるが、ワインの世界では魅力の一つとして評価されている。

■French Creole Rhum

フレンチ・クレオール・ラム

カリブ海にあるフランス領マルティニーク島などで生産されるラム酒。通常は製糖の副産物である糖蜜から造られるが、当地のラム酒は搾ったサトウキビ汁をそのまま発酵、蒸留させる。砂糖になるべき成分も生かされたぜいたくなラム。

■Cider

シードル

撮影/三輪卓護

欧米に古くから伝わる「リンゴの酒」。リンゴを圧搾した汁を放置するだけで、皮に付いていた天然酵母で発酵するため、かつては農家で自家製シードルが親しまれていた。タンクから瓶に詰めれば瓶の中で発酵し炭酸ガスが発生するため、瓶を開けて注げばサイダーのように泡立つ。弘前のシードルも有名。

■Grappa

グラッパ

ワイン製造の副産物「ブドウの搾りカス」を発酵、蒸留させたイタリアの蒸留酒。度数は30~60度ほどで、透明ながらブドウの香りが生きる酒。イタリアで親しまれ食後酒として飲まれるほか、カクテルの素材としても用いられる。

■Ester

エステル

発酵で生じる香気成分。日本酒の世界では「吟醸香」とされるが、ビールの世界では「エステル臭」と称され嫌われていた。だが近年では「果実のようなフルーティな香り」として、酵母の種類や育成方法を操作し香りを高める向きもある。

■Flash Pasteurization

フラッシュ・パストリゼーション

ビール製造所での工程の一つ。製品のビールを殺菌した上で缶や瓶に詰める、大手メーカーでの製法。生ビールを缶や瓶に詰めた上で熱処理するのは「トンネル・パストリゼーション」といい、小規模製作所で用いられる。

■Gin

ジン

ジャパンインポートシステム提供

セイヨウネズの実で風味を付けた度数40度ほどの蒸留酒。16世紀のオランダで薬用酒として生まれ、18世紀の英国で庶民の酒として大流行した。キレのある味が特徴で、マティーニなどカクテルのベースにもされる。写真はスコットランド、キングスバリー社のビクトリアンバット・ジン。琥珀色が特徴。

■Head Retention

ヘッドリテンション

ビールをグラスに注げば泡立つ。その泡(ヘッド)が長持ちする「泡持ち」を意味する。プロが注いだビールはとりわけヘッドリテンションが良く、飲み干した後のグラスには「口を付けた回数ごとに段状」の泡が残る。

■Hangover

二日酔いとは?

Image from Wikimedia Commons

大量飲酒により体がアルコール分解に対応できず、不快感に苛まれる状態。酒好きの宿命。解消には十分な水分の摂取、並びにオレンジジュースや干し柿、汁粉など「甘いもの」が良いとされる。図は原因とみなされるアセトアルデヒド。

■Horse milk liquor

馬乳酒

中国北方の騎馬民族に伝承される、家畜の乳を発酵させた酒。モンゴルではアイラグ、カザフスタンではクミスと呼ばれる。アルコール度数は数パーセント程度。遊牧民の人々は健康飲料として愛飲している。

■Champagne

シャンパーニュ

Stock Food/アフロ

フランス北東部の一地方。シャルドネ種などこの地で育ったブドウのみ搾り、瓶の内部で二次発酵を経て熟成させた発泡性白ワインのみを「シャンパーニュ」と呼ぶ。他地域の発泡性ワインがシャンパーニュを名乗るのは違法。

■Islay Whisky

アイラ・ウイスキー

スコットランドの北西、人口約3500人のアイラ島で生産されるシングルモルトウイスキーの総称。スモーキーなピート(泥炭)香と海浜由来のヨード(海藻)香が特徴とされる。

■Juniper Berry

ジュニパーベリー

ヨーロッパ原産の針葉樹・セイヨウネズの実で、古代ギリシャ時代より薬用、あるいは肉料理のスパイスにされた。この実で香りを付けたオランダ生まれの薬用酒が「ジン」の起源。

■Kin

「菌」という文字は元々キノコを意味していたが、現在はさまざまな微生物を指す。乳酸菌や麹菌など酒造りに欠かせないものも多いが、反面「病原菌」も多数存在する。

■Lager Yeast

ラガー酵母

ビールのうち低温で下面発酵したものを「ラガー」と呼ぶ。「カールスベルゲンシス」という酵母を用い、低温で熟成させながら長時間発酵させる。

■Louis Pasteur

ルイ・パストゥールの低温殺菌法とは?

Image from Wikimedia Commons

細菌学者、パストゥール(1822-1895)が発見した、100℃以下の温度による殺菌法。酒類の風味やアルコール分を損なわない利点がある。

■Mezcal

メスカル

メキシコで生産される、アガベ(竜舌蘭)の根株の搾り汁を発酵、蒸留させた酒。アガベの品種や生産地ごとにさまざまな銘柄がある。小規模工房の製品ゆえ、根株を蒸す土釜の風味などが濃厚に酒に香る。

■Negroni

ネグローニ

ジン、ヴェルモット、カンパリを合わせたカクテル。イタリアはフィレンツェの老舗レストランの常連客であるカミーロ・ネグローニ伯爵が食前酒として愛飲していたものである。

■Ouzo

ウーゾ

ギリシャやキプロス島で生産されるリキュール。ブドウやレーズン由来の蒸留酒にアニスの風味を付ける。14世紀に修道士が発明したとされ、食前酒として親しまれる。

■Parshot

パルショータ

アフリカのエチオピアで伝承される醸造酒。トウモロコシやモロコシを乳酸菌発酵させ、麦芽を加えさらに発酵させる。なお同国には、この酒を「主食」とする民族がいる。

■Quinine

キニーネ

ジントニックの強い苦味成分として有名。南米原産の薬木キナノキの樹皮に含まれるアルカロイドで、マラリア治療の特効薬でもある。解熱や強壮、健胃剤として用いられる。

■Rhum

ラム

カリブ海などで生産される蒸留酒。サトウキビ製糖の副産物「糖蜜」を発酵、蒸留させたもの。炭で濾過したホワイトラムと、樽熟成させたダークラムがある。ダークラムは独特の甘い風味があり、ラムレーズンなど菓子作りにも使われる。

■Sparkling Sake

スパークリング日本酒

シャンパンのように瓶から注げば「泡立つ日本酒」。昭和初期には製品化されていたが、平成以降、改めて人気を博した。冷たいままで飲むのが基本。魚介類と相性が良い。

■Tequila

テキーラ

メキシコで生産される竜舌蘭の根株を蒸し、搾り汁を発酵、蒸留させた酒「メスカル」のうち、ハリスコ州で特定の一品種のみを原料としたものをとくに「テキーラ」と呼ぶ。

■Uwadachika & Fukumika

上立ち香 & 含み香

ともに日本酒の香りを表現する語。上立ち香は、注いだグラスから立ち上る香。含み香は、口に含んだ折に鼻に抜ける香。冷酒より常温で楽しむことで、より香りを感じやすくなる。

■Vermouth

ヴェルモット

白ワインにニガヨモギほか薬草類を配合したフレーバーワイン。イタリア式のスイートタイプとフランス式のドライタイプがあり、それぞれマティーニなどカクテルに使う。

■Whisky

ウイスキー

大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽で糖化し、アルコール発酵させた上で蒸留した酒。スコットランド、アイルランド産が有名だが、近年は日本産も評価が高い。

■Xeres

シェリー酒

スペイン南部で生産される酒精強化ワイン。スペイン語でビノ・デ・ヘレスと呼ばれる。シェリー酒樽にウイスキーなどほかの酒を詰め熟成すると甘く芳醇な風味が加わる。

■Yellow Wine

黄酒

北京語で「ファンジョウ」と発音。中国酒のうち醸造酒を指す。黄色味を帯びた深みのある色合いが特徴。浙江省紹興の街の「紹興酒」がとくに有名。

■Zymurgy

ザイマージー 醸造学、発酵化学

アメリカ自家醸造協会の機関誌。醸造学は微生物の持つ機能を研究する学問で、日本では東京農業大学が有名。発酵化学は微生物の機能を研究し、新たな微生物を開発する研究。

文/角田陽一 撮影/遠藤 純

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