登山の醍醐味を問われたとき、山歩きの疲れを癒す“オアシス”ともいえる山小屋の存在をそのひとつに挙げる人は多い。ここでは北アルプスに数ある山小屋の中でも、明治から大正の創業という長い歴史を誇り近代登山の発展に尽力した3つの山小屋のエピソードを紹介する。

第一話 槍ヶ岳山荘

1926年(大正15年)創業の北アルプスを代表する山小屋として名高い「槍ヶ岳山荘」。槍ヶ岳の山頂直下に築かれ、日本の近代山岳史と共に歩んだその歴史をのぞいてみよう。

度重なる苦難の末に山頂直下に築かれた山荘

宗教登山の霊地であるとともに、近代登山発祥の地でもある槍ヶ岳。開山者・播隆上人(ばんりゅうしょうにん)をはじめとする〝宗教登山者〞、小島烏水やウェストンら登山家を中心とした〝近代登山者〞、古くより槍ヶ岳はそれらの山を愛する人々にとって憧憬の地だった。険しい山の頂上直下に、今や650人の収容が可能な「槍ヶ岳山荘」を築いた穂苅三寿雄(ほかりすみお)も、この山に魅せられたひとりである。

「あんな場所に山小屋を作って君は何をするつもりなんだ?」

大正6年(1917)、三寿雄は槍沢の入口「ババの平」に槍沢小屋を建設すべく、松本小林区署に借地願いを申し出た際、署員にこう言われたという。当時、山中に山小屋を築くという三寿雄の構想は、他者からすればそれほど突拍子もないことだった。しかし、その心中には山小屋の必要性が確固たる決意として固まっていたのである。三寿雄と槍ヶ岳との出会いは、その3年前に遡る。

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第二話 白馬山荘

北アルプスに数ある山小屋の中でも、最も古い1906年(明治39年)創業という歴史をもつ「白馬山荘」。“花の山”と称されるほど高山植物の宝庫としても有名な白馬山の地における物語を紹介する。

明治期にいち早く開業し山小屋の黎明期を支えた草分け

北アルプスの数ある山小屋の中でも、最も古い歴史を持つのが白馬岳の「白馬山荘」である。その創業者・松沢貞逸(まつざわていいつ)が山荘を開業させたのは、営業小屋が次々と誕生した大正初期より10年近く前、明治39年(1906)のことであった。

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第三話 燕山荘

北アルプスの人気縦走コース”表銀座”にある一番人気の山小屋「燕山荘」。大正の創業という長い歴史を誇り、これまで数多くの登山者を惹きつけてやまない存在へと至った、創業物語を紹介する。

山への熱意と厚い人望が実を結んだ燕岳の稜線上に建つ山小屋

北アルプスの人気縦走コースである〝表銀座〞。この登山道を歩くのであれば、立ち寄りたい山小屋が燕岳(つばくろだけ)の稜線上に建っている。大正10年(1921)の創業という、北アルプス有数の歴史を持つ「燕山荘(えんざんそう)」だ。この人気の山小屋は、創業者・赤沼千尋(あかぬまちひろ)の並々ならぬ山への熱意、そして彼の厚い人望によって生み出されたともいえる。

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