本格設備で楽しむお気軽卓球と酒
店の中央に大きな卓球台が置かれている。ちょっと不思議な空間だ。卓球台は本格的で、国際競技用のアディダス「Pro 800」だという。
「卓球はどこかダサいイメージがあるので、卓球台は本物を用意、ラケットもプロ仕様を使っています」と話すのは店長の藤原さん。
卓球台は誰でも気軽に利用することができるが、初めての客が気になるのは店に集う人たちのレベルのようだ。中学高校で卓球部だった藤原さんによれば、ほとんどの人が初心者レベル。びっくりするほどうまい人は滅多に来ないらしい。だから、卓球経験が乏しくても気軽に楽しめる。
この日もカップル2組で訪れた客が、注文した酒がくる前に早速ラケットを選び始めた。「11点先取で……」と簡単なルールをその場で決めてダブルスの対戦。真剣な表情でラケットを握って球を追うが、ラリーはなかなか続かない。たまにラリーが続くと一気にヒートアップ! 観客も拍手して店内は一気に盛り上がる。
「卓球は競技をしながらおしゃべりができるスポーツなので、コミュニケーションツールになります。ミスしても爆笑になるのが、このスポーツのいいところではないでしょうか」と藤原さん。
店で卓球の面白さを知った客が増えて、今では靴箱にシューズが並び、マイラケットも多数置かれている。壁際の席に一点モノのソファなどが置かれているが、ほとんどは床に座布団を敷いて座りながら、卓球に興じる人たちの姿を眺めている。店内はまるで、大人の部活といった雰囲気なのだ。
文/阿部文枝 写真/渡部健五