654Wodka Tonic|東京・港区のオーセンティックバー

Wodka Tonic|東京・港区のオーセンティックバー

男の隠れ家編集部
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酒を愛するバーマンが紡ぐ 旨い料理と酒が待つ店

西麻布交差点のほど近くにある、なだらかな坂道の途中に佇むバー「ウォッカトニック」。昭和61年(1986)、伝説のバーマン・明坂節郎氏が、当時まだ店の数もまばらだったこの地に誕生させたバーは以後、多くの文化人が集まるサロンとしてこの街のバー文化を牽引して来た。

1番から135番まで、客一人ひとりの好みに合わせたオリジナルカクテルを作り出し、提供していた氏が引退を決めたのは10年前。店を引き継いだのは、バーテンダー修業を始めた18歳の頃からこの店に通っていたという山田一隆氏だ。

「当時はこの辺も真っ暗で、坂の下から店の灯が見えたら、あ、今夜は開いてるな、とわかったくらいです。今はお店が増えましたけれど」

山田氏をはじめ、師から店を託されたスタッフはカウンターとバックバー以外のフロアをゆったりとした椅子席に変え、食事も愉しめる空間に進化させた。「ワインに合う角煮」から贅沢にも「マッカランで煮込んだ牛丼」、ダシ香るシメの「塩ラーメン」まで、メニューは実に多彩。

一番人気はもともと同店の名物だった「カレー」。実はここ、「バーカレー発祥の店」として知られている。明坂氏が肉屋で安く仕入れた牛スジを煮込み、賄いで作っていたカレーが客の評判を呼んだことに始まるが、もちろんこれは酒の知識・技術が一級だからこそできる、店の余技のひとつ。

「当時から、お酒に関しては何を聞いても答えてくれた店。今日発売されたばかりの酒がもうその日にある、というような情報発信地でもあって。食事が増えてもそれは変えません。数ですか? だいたい2500本だと思います」。

良い酒をなるべく安く提供したいと、数年前からは海外の蒸留所から直接ウイスキーやワインを樽で購入している。全ては「人との縁が直接感じられるバーという場所が好きだから」だと山田氏。営業時間も朝までだ。客がいる限りは開ける(とはいえ翌日の昼前まで飲んでいた客には、そっと帰宅を促したそうだ)。

変わらないバーマンの仕事が、変わりゆく街の中で、今夜も時代を超えて受け継がれてゆく。

文/奥 紀栄 写真/遠藤 純

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