心に寄り添う接客を心掛ける、オーナーバーテンダーの人柄
オーナーの渡辺昭男氏は、多くの銀座のベテランバーテンダーから慕われている。昭和20年代の終わり頃、大学進学と共に佐賀から上京するも、当時全盛だったトリスバーでのアルバイトがきっかけとなり、この世界へと足を踏み入れた。
「銀座の『静』に勤めた後、湯島の『琥珀』に手伝いに入ったら、20年も在籍することになりました。それから昭和48年(1973)に独立したのです。店名はラテン語で〝ここだ!〟という意味で、名付け親は醸造研究の第一人者だった東大農学部の坂口謹一郎教授です」。
渡辺氏がバーテンダーとしてのキャリアをスタートさせた当初は、酒だけでなく氷やフルーツなどが手に入りにくかった。カクテルのレシピもわからないことが多く、客の反応を見ながら調整を重ねた。
それが渡辺氏のモットー「お客様の心でせよ」ということ。それは常に客の舌と心を探り、最上をお届けする接客を心がけることなのだ。
文/野田 伊豆守