42189東北唯一のウイスキーブランド 「安積蒸溜所」

東北唯一のウイスキーブランド 「安積蒸溜所」

男の隠れ家編集部
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戦前から少量ながらウイスキーを造っていた笹の川酒造。東北最古の地ウイスキーブランドは、満を持して新たな蒸溜所を開業。早くも多くのファンをときめかせた。

■本格的なモルトウイスキーを東北から届ける老舗蔵元

笹の川酒造は緑豊かな大地と清冽な阿武隈川に抱かれた安積盆地で、明和2年(1765)に産声を挙げた歴史ある蔵元である。手造りの麹や地元産の米を使った酒造りには定評があり、多くのファンを持つ。

そんな笹の川酒造が平成28年(2016)から稼働を開始させたのが「安積蒸溜所」だ。道奥の新星と評される小規模蒸溜所なのだが、ウイスキー造りは意外に歴史が深い。昭和21年(1946)にはウイスキー製造免許を取得し、輸入したモルトウイスキーの「原酒」に、自前のアルコールをミックスしたブレンデッドウイスキーの生産を始めている。それは日本酒の原料である米の不足と、戦勝国による占領状態がウイスキー需要を生み出すのではないかという予測がなされたからであった。

山口哲蔵社長は「経済成長期になると、人々の舌が肥えてきたことから手づくりのスチルによる独自のモルトウイスキー造りを試みたと記憶しています。ところが80年代後半になると、英国サッチャー首相の外圧で日本のウイスキー市場に陰りが見えたため、中断したのです」

当初は言葉やメンテナンスの関係もあり、国産のポットスチルを模索し、ようやく見つけた三宅製作所に依頼。

それでも貯蔵庫で熟成させるのに、十分な量のウイスキーを保有していたため、今日まで供給できる在庫を保持することができた。そして平成27年(2015)、創業250周年を迎えた笹の川酒造は、日本のウイスキー需要の高まりを敏感に察知。本格的なモルトウイスキーの蒸溜所を設立することに決めたのであった。

空きスペースになっていた貯蔵庫の一画に2基のポットスチルが設置され、郡山がかなり暑くなってしまう夏場以外、蒸留を行う。貯蔵はバーボン樽を主体に、一部はシェリー樽やワイン樽でも熟成。「1日1樽」を目安にして、年間200〜250樽のウイスキーを貯蔵している。

老舗だけあって、その佇まいには重みが感じられる。貯蔵はバーボン樽が主体だが、一部はシェリー樽やワイン樽でも熟成。「1日1樽」を目安に、年間200〜250樽の貯蔵が目標。

■1日1樽を目標にして日々精進す

ウイスキー造りの全工程がひとつの屋根の下で完結。ステンレスの糖化槽がひとつに3,000Lの木製発酵槽が5つある。ポットスチルは小型で、2,000Lの初溜釜(ウォッシュスチル)、1,000Lの再溜釜(スピリットスチル)という組み合わせとなっている。

蒸留の熱源はパーコレーターが使われている。郡山が暑くなる夏場を除いて蒸溜が行なわれている。今後もウイスキーの完成が待ち遠しい。

■歴史ある酒蔵に新たな蒸溜所が誕生

・ブレンデッドウイスキー山桜
マイルドな口当たりが呑むほどに愉しい。厳選したモルトウイスキー原酒にグレーンウイスキーをブレンド。ハイボールなどにも最適。

容量:700ml
アルコール度数:40度
価格:2310円
【色】山桜というネーミングに似合う華やかな琥珀色
【香り】ドライでウッディ、スパイシーな樽香が主体
【味わい】オレンジや杏を思わせる軽めのフルーティっぽい風味
【余韻】樽材のウッディ・スパイシーさやバニラを思わせる風味、少しスモーキーな余韻を感じる

ピュアモルト山桜
オーク樽で熟成されたモルトとシェリー樽熟成モルト、ピーテッドモルトをブレンド。

容量:700ml
アルコール度数:48度
価格:6380円

ASAKA The First
まだ若々しい蕾を連想させる味わいは、長く熟成させることで変化する楽しみがある。

容量:700ml
アルコール度数:50度
価格:8800円

文/野田伊豆守

安積蒸溜所 (あさかじょうりゅうじょ)

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