せせらぎの音が心地よい渓流沿いの宿で、乳白色の癒し湯に浸かる
「松川荘」は、渓流に架かる小さな橋を渡った先にある。「今日は大変な雪の中を……」そんな言葉にねぎらわれつつ、入った館内は実に暖かく、迎えてくれる女将の笑顔もまた温かい。
部屋でひと息ついたらさっそく風呂だ。渓流のほとりに設えられた、ひょうたん形の混浴露店風呂はこの宿一番の名物。露天風呂はいったん浴衣を着て内湯を出た隣にある。広い湯船に満ちる白濁の湯は青みを帯びている。浸した手さえ見えないほどだ。ここまで濃くにごるのは、常に外気に触れているからなのだろう。
フロントに頼んだ熱燗を湯桶で浮かべ、雪見で一杯。顔にかかる雪もひんやりと気持ちいい。ついつい長湯になってしまうのも致し方あるまい。
「この湯は血流が良くなるようです。一番効くといわれるのは骨折と打撲」と女将さん。そう聞けば、心なしか体も軽くなっている気がする。
山里の美味な名物を、心ゆくまで楽しむ
天然素材を贅沢に楽しめる夕食のなかでも、ホロホロ鳥は見逃せない。かつては村の特産品だったホロホロ鳥を、宿の名物にしているのは松川温泉の宿だけだ。陶板焼きのほか、要予約の「ホロホロ鳥のしゃぶしゃぶ」は柔らかく風味を一層楽しめる。また宿のスタッフが方言で食事の説明をしてくれるのも楽しい。
湯の良さ、人の良さが心を満たす。また訪れたいと思わせる懐かしい温もりが、この宿にはある 。
(写真/渡部健五)