秋田駒ヶ岳が生む青い湯に リピート客が多い素朴な宿

体の芯から温まる湯を求めて常連客が通う

秋田駒ヶ岳。その懐に20軒ほどの宿が点在している水沢温泉郷。とはいっても温泉街にあるような高層ホテルや飲み屋、土産物屋はここにはない。そんな環境がこの温泉郷に緩やかな空気を作りだしている。「元湯 水沢山荘」には秋田駒ヶ岳山腹の標高950mで自然湧出する源泉が引かれている。

まずは内湯を楽しむ。硫黄臭がほんのりと漂う湯は、青みがかり爽やかな印象。腕をなでる手が止まるほど肌に湯が吸いつくような独特な感触だ。

内湯でこの宿の湯に体を慣らしたところで露天風呂に入る。露天へは内風呂の奥の扉から出入りする。扉を開けて目に飛び込んだのは、雪で化粧された木々。山の湯だと実感する景色の中で、遠くに雪で囲まれたおぼろげな田沢湖が。露天風呂のお湯は内湯よりも熱い。冷めた体がそう感じさせるのか。しかし再び入った内湯は前より優しい。そこで交互に楽しみ、この宿の内湯と露天を堪能することにした。

温泉宿のもう一つの楽しみである料理にも満足できる

全体に甘さを抑えた薄味の料理は、丁寧に取った出汁が使われ、食材の味を大切にしている。鍋は比内地鶏のガラスープが美味しい「きりたんぽ鍋」が通常だが、予約の時に頼めば「山の芋鍋」に変更できる。

宿のスタッフは「7割は県外からのお客さまです。遠方から来る方の中には、うちを観光の拠点にして連泊されるお客さまも多いんですよ」と言う。遠くへも観光で足を延ばす客が、このにごり湯に浸かりたいと戻ってくる。体の芯から温まる湯と、地物を使った丁寧な料理。連泊したいと思わせる魅力がこの宿にはある。


(写真/渡部健五)