31686惜しまれつつも復旧を断念した路線「高千穂鉄道 高千穂線」(宮崎県/延岡~高千穂)|失われたローカル線

惜しまれつつも復旧を断念した路線「高千穂鉄道 高千穂線」(宮崎県/延岡~高千穂)|失われたローカル線

男の隠れ家編集部
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もともと高千穂鉄道は、大正11年(1922)に制定された「改正鉄道敷設法」で「熊本県高森より宮崎県三田井を経て延岡に至る鉄道」と定められた、九州横断鉄道路線のひとつであった。昭和3年(1928)には熊本側の立野駅~高森駅間が、宮地線として開業する。

渓谷美を堪能できた反面 自然災害に泣かされた

遅れていた宮崎側は、昭和10年(1935)に延岡駅~日向岡元駅間が日ノ影線として開業した。その後も工事は続けられ、昭和47年(1972)には高千穂駅までが開通し、路線名を高千穂線に改称した。だがその先の工事は、高森トンネルが掘削中に異常出水事故を起こしたことで中断。昭和55年(1980)、工事は凍結されてしまう。

その後、第2次特定地方交通線として廃止が承認されたが、昭和62年(1987)4月1日の国鉄民営化の際、JR九州が承継。そして平成元年(1989)4月28日、第3セクターの高千穂鉄道として始動する。

高千穂駅に並んだTR−200形気動車。

蛇行する川に沿って上流へと向かい、深山幽谷の世界に分け入って行ったこの路線最大の魅力は、全長353m、水面からの高さが105mの「高千穂橋梁」であった。これは当時、営業路線の鉄道橋としては日本一の高さを誇っていたのだ。

この橋梁上からの眺望は素晴らしく、旧国鉄時代から橋梁上は徐行運転し、乗客にその高さや景観を味わってもらう、という趣向が凝らされていた。窓の外に目をやると、クラクラするほどの高さに驚き、列車に乗っているにもかかわらずお尻がムズムズしたほどである。

乗務員にタブレットを渡す風景。

だが急峻な山と深い渓谷を走る路線だったため、常に自然災害の危険に晒されていた。平成17年(2005)9月6日、九州地方を襲った台風14号による増水で、ふたつの橋梁が完全に流失。さらに土砂崩れ箇所もあり全線運休となる。結局、復旧は断念され、平成19年(2007)に延岡~槇峰間、翌年の12月28日に槇峰~高千穂間が廃止された。

川水流駅の行き先表示板は、何とも言えない味わいの手書きであった。
駅員による腕木式信号機の切り替え作業も見ることができた。

鉄道復活を夢見て 高千穂あまてらす鉄道のスーパーカートで旧鉄路を疾走する

廃線となった高千穂鉄道の線路を活用し、2008年3月から運行開始された「あまてらす鉄道」。高千穂駅から日本一の高さを誇る高千穂鉄橋最高地点までの約5.1kmの間を、オリジナルの「グランド・スーパーカート」で往復するアトラクション鉄道だ。この車両は30人乗りで、牽引する動力車が2台あり、それぞれに2500㏄のディーゼルエンジンを搭載。これは空港で荷物を運ぶトーイング・トラクターがベースとなっている。

客車の床の中心部には強化ガラスを敷設して、走り過ぎる線路の様子や高千穂鉄橋最高地点(105m)での直下の眺めを楽しめる。さらに2つあるトンネル内では、美しいイルミネーションを堪能することができる。

客車はオープンなだけでなく、床の一部がガラス仕様になっているため、鉄橋では目がくらむ光景を楽しめる。

高千穂あまてらす鉄道
宮崎県高千穂町三田井1425-1 旧駅舎内 
TEL/0982-72-3216
営業時間/9時40分~15時40分
定休日/第3木曜(雨天や強風時は運休) 
乗車料/高校生以上1,500円

写真/米屋こうじ、高千穂あまてらす鉄道 文/野田伊豆守

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