行商専用列車とは?

列車に魚や野菜などを載せて運行する列車。長距離かつ一度に大量の物資を運べるため重宝された。一編成全てが行商用のタイプや、普通の客車に行商用の車両が付くタイプがあったが、輸送の発展に伴い、徐々に姿を消していった。

終着駅に着くと次々と新鮮な食材が降ろされる光景があった。福知山駅にて。
福知山駅は平成17年(2005)に高架化した。今では行商の面影は見当たらない。

昭和61年(1986)夏 JR山陰本線(浜坂~福知山)にて

兵庫県の浜坂は上質なカニを始め、日本海の新鮮な魚介類が豊富に獲れる町だ。昭和61年(1986)まで、浜坂駅からは行商専用の車両が走っていた。発車時刻は午前4時41分。明け方には新鮮な魚介類を持ち込む行商の人々が集まる。終着地は京都府の福知山駅。そこから大阪や京都のなどの都市部へと移動する。

発車前の行商列車。

行商列車に使われていた車両が「オハ二36」。客車の最後尾に連結されており、半分が座席で、半分が荷物室という、まさに物資輸送のための車両であった。その荷物室へ商品が乗せられ、行商の人々は客席で列車に揺られて移動する。

途中、餘部(あまるべ)駅や鎧駅などからも多くの行商人が乗り込む。福知山駅に近づくにつれて、車内は満席状態に。とはいえ、都市部のラッシュに見られるようなそれとは違い、座席には乗り切らない荷物が置かれ、シートでくつろぐ行商人の姿があった。睡眠をとる人、食事をする人や顔見知りと談笑する人など様々だ。

3時間ほどの長旅の中、車内には多くの行商人でいっぱいになっていく。

福知山駅に到着するのは午前7時40分。ホームにはたくさんの行商人が姿を見せ、次々と荷物を降ろしていく。こんなに乗っていたのかと驚くほどの大量の荷物が積み上げられ移動していく。活気あふれる姿が行商列車にはあった。

行商用車両は普通列車に連結していたので、一般客の姿も。

行商列車が消えていく運命であっても、この車両の文化が忘れられないようにと願うばかりである。

エネルギーあふれる男性や、大きな籠を軽々と背負う年配の女性など様々な人に出会えた。

写真◎金盛正樹

近畿日本鉄道「鮮魚列車」の後継車両が運行スタート! 鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」

令和2年(2020)3月13日、日本で唯一運行を続けていた行商列車が運行終了となった。「鮮魚列車」と呼ばれた三重県の宇治山田駅から大阪府の大阪上本町駅を結ぶ近鉄の貸切車両だ。伊勢湾の新鮮な魚介類を大阪に届けていたが、ついに57年という長い歴史に幕を閉じた。

しかし、それで行商列車が終わったわけではない。入れ替わりに運行が始まったのが鮮魚運搬車両「伊勢志摩お魚図鑑」だ。今までの「鮮魚列車」と違い、旅客運転している車両に一両連結する方式となった。伊勢志摩の海に生息する様々な魚介類が描かれた車体のデザインはとてもチャーミングで目を引く。鉄道ファンだけでなく、子供たちからの人気も予感させる新たな鮮魚運搬車両の活躍に期待が膨らむ。