しばれるような寒さのなか ストーブ列車でぬぐい旅を
津軽鉄道を象徴する冬のストーブ列車。車内に入るとダルマストーブの暖気が漂ってきた。木造の車両は摩耗した椅子や床板、懐かしい木の窓枠などに歴史を感じられる。
津軽の冬を感じられる ストーブ列車、ぬくもりの旅
「津軽五所川原駅」を出た列車は、「五農校前駅」を過ぎると広大な田園風景のなかを走る。気がつくと、車内にはスルメのいい匂いが漂っている。アテンダントが、ストーブで焼いたスルメをちぎってくれた。事前に購入した「ストーブ酒」をカップに注いで、熱々のスルメをかじる。口いっぱいに広がる旨味が、酒とも絶妙の案配だ。
こうしてストーブを囲んでいると、自然と乗客同士やアテンダントとも会話が始まる。観光客にとって、鉄道で働く職員や地域住民の温かい人情に触れる効果も大きいのではないだろうか。
太宰治の小説に描かれた 津軽の魅力は失われていない
中間地点にあたる金木駅では団体客の乗り降りが多くなる。これは太宰治の生家、斜陽館があるためだ。太宰治の自伝的小説『津軽』では、かつて栄えていた頃の五所川原を「善く言へば、活気のある町であり、悪く言へば、さわがしい町である」と書かれている。
「金木駅」を過ぎた列車は森に包まれた「芦野公園駅」にたどり着く。ここには小説『津軽』にも登場する駅舎の建物が現存。そのものずばり「駅舎」という名の喫茶店として営業をしているのだ。途中下車して立ち寄ってみると、当時の改札や案内板などが飾られており、まるで時が止まったかのような空間がそこにはあった。
巡る季節のなかで様々な顔を魅せてくれる津軽鉄道。これからも北限の平野を走り続ける。
(写真/米屋こうじ)