昭和の香り漂う風景を、懐かしの列車が往く

JRで「東京駅」から1時間半ほど。「大原駅」が目的であるいすみ鉄道の起点駅だ。懐かしの車両と風景を目的に出発しよう。

風景だけでなく 列車も昭和そのもの

「いすみ鉄道」の「大原駅」はJRの駅に寄り添うようにあった。売店で「急行券付き一日フリー乗車券」を買い、ボックスシートに乗り込む。列車は間近に家が建つ小さな町並みを抜け、「西大原駅」に数分で到着。その先に待っていたのは、冬枯れの田園風景だった。

今回の旅では国鉄型のキハ52とキハ58の併結列車に乗ることも楽しみにしていた。キハ52は昭和 30年代に、勾配が厳しい地域を走るローカル線用ディーゼルカーとして誕生。本州のみならず四国や九州でも活躍した昭和の香りを放つ車両だ。地元の人たちだけでなく、昭和の中頃に生まれた50代以上の人も懐かしく感じるだろう。

ガタゴトと走る列車で田舎の景色を楽しんでいると、「風そよぐ谷 国吉駅」への到着を告げるアナウンスが流れる。その駅の名に誘われて列車を降りると、目の前には奥を林で囲まれた休耕田。次の上総中野行きが来るまで1時間弱をこのほのぼのとした景色の中で過ごすことにした。

歴史の街並みを楽しんだら、車窓は徐々に山里へ

いすみ鉄道には、同じ時代を過ごしてきた人たちが共感できるものが多い。今ではテーマパークでも作らない限り、味わえないであろう昭和の時代が随所で見られる。

国吉の町を歩き再び列車に乗り、次は「大多喜駅」へ。古の風情が漂う「房総の小江戸」で食事をしてからキハに乗ろう。駅で見つけたチラシによれば、大多喜町ではタケノコやジネンジョ、イノシシなど、地元の旬の食材を使った「大多㐂里山膳」を推しているらしい。

「大多喜駅」まで急行運転してきたキハは、ここから「上総中野駅」まで各駅停車に変わる。そして田園が中心だった車窓の風景は、山里へと変わっていく。

今回、楽しんだのは、昔懐かしい何もない景色。今の都会では味わうことのできない〝思い出への旅〞だったのかもしれない。
(写真/金盛正樹)