料理好きの人、または、アウトドア好きの人は「シーズニング」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれない。シーズニングは料理に関する言葉であり、その意味を知ることで、より料理の美味しさを追求でき、楽しさも発見できるようになるだろう。
しかし、シーズニングという言葉を知っていたとしても、正しい意味は知らないという人も少なくない。実は、シーズニングには2つの意味がある。
普段、あまり料理をしない人でもシーズニングは簡単に覚えることができるので、ぜひ本記事を参考に、ワンランク上の味を目指してほしい。
2つの意味がある「シーズニング」とは
そもそもシーズニングには、2つの意味がある。
- 油ならし
- 粉末のミックス調味料
一つ目の意味は「油ならし」。調理器具(スキレット・鉄フライパン・ダッチオーブンなど)の表面を乾燥させ、油で手入れする方法のことをシーズニングと呼んでいる。
そして二つ目の意味は「粉末のミックス調味料」。塩やハーブ、スパイスなど、複数の調味料や香辛料をミックスしたもののことをシーズニングと呼ぶことがある。
シーズニングの2つの目的や方法をきちんと理解することで、家族や友人に美味しい料理を振る舞うことができ、アウトドアでは手軽に本格的な味に仕上げられるようになる。
以下の項目では、それぞれのシーズニングの目的、道具、種類などを詳しく紹介していくので、気になる方はぜひ参考にしてほしい。
シーズニングの「油ならし」について
ここではシーズニングの1つ目の意味「油ならし」について紹介しよう。鉄製の調理器具を扱う上で、シーズニングはとても大切な手入れ方法だ。
シーズニングが必要な鉄製の調理器具は、以下のようなものがある。
- 鉄フライパン
- スキレット
- ダッチオーブン
- ストウブ
- アルミクッカー
フライパンやスキレットのような片手鍋だけではなく、ダッチオーブンやストウブのような鍋類もシーズニングをしなければならない。また、キャンプなどで重宝されるアルミクッカーも、シーズニングのような手入れが必要とされている。
これから紹介するシーズニングの目的や正しい手順を覚えて、持っている調理器具でぜひ試してほしい。
調理器具をシーズニングする目的
調理器具をシーズニングする主な目的は、以下の通りだ。
- 表面に油を塗って空気を遮断し、サビつき・焦げつきの防止
- 品質を長持ちさせるため
鉄製の調理器具は、きちんとシーズニングしなければ、サビつき・焦げつきが蓄積され、劣化するスピードが非常に早くなる。さらに、料理の味が台無しになる可能性も高くなるため、シーズニングはとても大切な手入れだと認識してよいだろう。
調理器具をシーズニングするタイミング
調理器具をシーズニングするタイミングは、次の通りだ。
- 購入したばかりの新品の調理器具
- 調理器具で料理するたび
新品の調理器具には、サビつきを防止するためのワックスやクリアラッカーなどといった塗料が塗られている。そのため、購入して一度も使ったことがない調理器具は、シーズニングして塗料をきちんと洗い流すことが非常に重要だ。
新品の調理器具をシーズニングせずに使ってしまうと、せっかく作った料理に塗料の匂いがついてしまい味が落ちてしまう。
そして、調理器具を使うたびにシーズニングする必要があることもしっかりと覚えていてほしい。「料理で使うたびに手入れしないといけないのか」と思うと手間がかかるように感じるかもしれない。
しかし、調理器具の品質を保ち、より美味しい料理を作るためには、シーズニングという作業はとても大切だということをきちんと理解していてほしい。
シーズニングに必要な道具と手順
ここでは、シーズニングに必要な道具と手順について紹介しよう。シーズニングの手順は「新品の調理器具」と「料理で使用した後の調理器具」の2パターンに分けて紹介するため、しっかりと確認して手入れを行ってほしい。
シーズニングに必要な道具は、以下の通りだ。
- スポンジ(初回のみ)
- 食器用洗剤(初回のみ)
- 亀の子たわし
- タオル
- トング
- キッチンペーパー
- 食用油
- くず野菜(初回のみ)
「新品の調理器具」のシーズニング
新品の調理器具のシーズニングする手順は、以下の通りだ。
- 洗剤をつけたスポンジで塗料をしっかりと洗い流す
- タオルで水滴を拭き取る
- 弱火でゆっくり時間をかけて空焼きする
- しっかりと空焼きできたら火を止める
- キッチンペーパーに食用油を染み込ませ、トングを使って調理器具全体に油を馴染ませる
- 油を馴染ませる作業と弱火での加熱を3〜4回繰り返す
- くず野菜(ネギやニラなど)を焦げるまでじっくり炒める
- くず野菜を取り除き、キッチンペーパーで余分な油を拭き取る
- 最後に弱火で空焼きをして完了
くず野菜を焦げるまでじっくり炒める理由は、鉄製品の鉄臭さを消すためだ。ネギやニラなどの香味野菜を炒めると鉄臭さを消すことができるため、シーズニングの工程の一つとして「くず野菜を焦げるまでじっくり炒める」を組み込んでいる。
注意すべきポイントは、必ず弱火で空焼きすることが大切だ。空焼きするときの火が強すぎると、調理器具の表面に気泡ができたり、傷めたりするので注意して火を扱わなければならない。
十分に空焼きできると、次第に白い煙が調理器具から出始める。白い煙が出たら、塗料が焼かれて溶け出しているサインであるため、火を止めて次の工程に進んでよいだろう。
頑丈な鉄とはいえ火の扱い方次第で傷つける恐れがあるため、慎重に手入れを行う必要がある。とくに、普段あまり料理をしない人やシーズニングを初めてするという人は、火加減に注意し、火傷をしないように気をつけて作業を進めよう。
「料理で使用した調理器具」のシーズニング
続いて、料理で使用した調理器具のシーズニングを説明しよう。先述したとおり、鉄製の調理器具は料理で使うたびにきちんと手入れしなければならない。
シーズニングされた調理器具は数十年と長持ちするため、料理で使ったあとはちゃんと手入れすることが重要である。
料理で使用した調理器具のシーズニングの手順は、以下の通りだ。
- 亀の子たわしとぬるま湯を使って調理器具についた汚れを洗い流す
- 調理器具に水を溜め、弱火で加熱する
- 汚れや焦げが浮いてきたら火を止めて流し捨てる
- 再度、弱火で調理器具を空焼きする
- 調理器具が熱くなったら火を止めて、キッチンペーパーを使って油を全体に馴染ませる
- 調理器具が常温に戻ったら完了
料理で使った後の調理器具をシーズニングするときの注意すべきポイントは、洗剤を使わないことだ。洗剤を使うと、せっかく馴染んできた油が洗い流されてしまう。そのため、2回目以降のシーズニングは、洗剤を使わずにきれいに洗い流すようにしよう。
また、金たわしを使って調理器具の汚れを取ろうとすると、表面に傷がついてしまう恐れがあるので、亀の子たわしでのこすり洗いがおすすめだ。どうしても汚れや焦げが落ちない場合は、重曹とお湯を調理器具に入れてしばらく放置しておくと効果的なので、ぜひ試してほしい。
鉄製の調理器具は、料理で使いシーズニングするたびに油がよくなじみ、より長持ちするので、手入れを怠らないように心がけよう。
シーズニングの「粉末のミックス調味料」について
ここでは、シーズニングの2つ目の意味「粉末のミックス調味料」について説明しよう。この、粉末のミックス調味料のことを通称「シーズニングスパイス」と言ったりもする。
シーズニングスパイスと一言でいっても、その種類は実に豊富で、あらゆる料理に活用することができる。スーパーなどのスパイスコーナーに置いてあるものを使ってオリジナルのシーズニングスパイスを作ることができるため、ちょっと凝った味付けの料理もあっという間に作れるようになるだろう。
これから紹介するシーズニングスパイスの種類や必要な道具を知って、自宅やキャンプなどの料理で活用してみてほしい。
シーズニングスパイスに使う調味料・香辛料
シーズニングという言葉は「油ならし」のほかに「調味料・乾燥・香辛料」などといった意味を持っている。これらの言葉が派生してシーズニングは「粉末のミックス調味料」という意味を指すようになった。
しかし、料理があまり得意でない人からしてみれば、調味料・香辛料の数は豊富に感じるだろう。どんな調味料・香辛料を使ってシーズニングスパイスを作ってよいのか分からないかもしれない。
シーズニングスパイスとしてよく使われる調味料・香辛料は、以下のようなものがある。
- 砂糖
- 塩
- ブラックペッパー
- ガーリックパウダー
- オニオンパウダー
- バジル
- イタリアンパセリ
- オレガノ
- タイム
- クミンシード
- コリアンダー
- ナッツ
- アーモンド
- クローブ
- シナモン
上記に書いてある調味料・香辛料を使ってシーズニングスパイスを作ることができる。また、上記の調味料・香辛料はほんの一部でしかないため、ほかにもさまざまな種類のものを使ってシーズニングスパイスを作ることができるだろう。
シーズニングスパイスの種類
シーズニングスパイスは、数種類の調味料・香辛料を混ぜ合わせて作るため、どんな味になるのかが気になるはずだ。選ぶ調味料・香辛料によって、海外風の味付けになるため、配合の仕方を知っておくとよいだろう。
例えば、アメリカ南部に位置するルイジアナ州の郷土料理であるケイジャン料理には「ケイジャンスパイス」というシーズニングスパイスを使う。このケイジャンスパイスは、パプリカパウダーやクミン、ガーリックパウダーなどを使って作るシーズニングスパイスで、イメージでいうと「チリタコス味」といった感じだ。
ほかにもシーズニングスパイスには、以下のような種類がある。
- タコスシーズニング
- デュカスパイス
- ジャークチキンスパイス
- イタリアンシーズニング
- 五香粉(ウーシャンフェン)
- チリパウダー
- ケバブシーズニング
- タンドリーチキンシーズニング
まずは、スーパーなどで販売されている上記のシーズニングスパイスを試して、好みを味を見つけるとよいだろう。シーズニングスパイスの作り方がわからないまま、調味料・香辛料をイチから揃えて自作すると、味の正解がわからず費用が大きくかさむ可能性がある。
好みの味を発見できたら、市販のシーズニングスパイスと同じ調味料・香辛料を集めて配合してみると要領が掴めるようになるはずだ。シーズニングスパイスはなじみのある調味料・香辛料を使ったものが多いため、無駄になることが少なく、健康にもよいとされている。
できあがったシーズニングスパイスを使った料理を一人で楽しむのも贅沢でよいが、ぜひ家族や友人にも美味しい料理を振る舞ってみてはいかがだろうか。
シーズニングスパイスを作るための道具
シーズニングスパイスを作るには、いくつか道具が必要になってくる。もともと粉末状のドライスパイスであれば、ボウルなどで混ぜ合わせるだけでよいのだが、より美味しさを追及したい場合は道具を一式揃える必要がある。
また、粉末状のドライスパイスでも十分に美味しいシーズニングスパイスを作れるが、生のハーブや加工されていない素材使ったほうが香り高くなり、味に深みが感じられるようになる。
では、シーズニングスパイスを作るための必要な道具は、以下の通りだ。
- すり鉢
- ブレンダー
- フードプロセッサー
- ボウル
- 保管用の瓶
すり鉢・ブレンダー・フードプロセッサーに関しては、3つのうちのどれか1つだけ揃えるとよいだろう。中でも、おすすめなのはすり鉢だ。すり鉢だと、調味料や香辛料をすり潰すときの力加減が調節でき、素材が持つ味や香りを最大限に引き出しやすくなる。
ブレンダーやフードプロセッサーでも、シーズニングスパイスは手間がかからず簡単に作れて非常に便利だ。しかし、ブレンダーやフードプロセッサーを使うと、機械が持つ熱が素材に伝わり痛みやすくなったり、力加減が調節しにくいため香りが出にくくなったりする。そのため、できるだけすり鉢を使って調味料や、香辛料をほどよい力加減ですり潰し、混ぜ合わせるほうがよいだろう。
ただし、すり鉢で調味料や香辛料を潰すことが面倒であれば、ブレンダーやフードプロセッサーを使ったほうが手間がかからないため、用途に合わせて利用することをおすすめする。
調味料や香辛料がミックスされたシーズニングスパイスは、いつでも料理に使えるように保管用の瓶に移しておくとよいだろう。また、数種類のシーズニングスパイスを作り置きして保管用の瓶に詰めておくことで、家族や友人にもいざというときにさまざまな味の料理を振る舞うことができ、アウトドアなどにも持ち運びがしやすくなる。
シーズニングのアレンジレシピおすすめ7選
それでは最後に、シーズニングを使って作れるおすすめのレシピを紹介していく。
シーズニングのアレンジレシピは、普段の料理にシーズニングスパイスをかけて違う味わいにするのが一般的。代表的な調味料にはマジックソルトがあるが、料理の下ごしらえはもちろん、仕上げに使えばいつもとは一味も二味も違う風味に味変できる。
忙しい時に手軽に作れる料理が多いので、アウトドアだけではなく自宅でも作ってみよう。
アクアパッツァ
イタリアンの定番である「アクアパッツァ」は、シーズニングの定番であるマジックソルトをふりかけると豪華な味わいにしてくれる。
魚料理との相性がとにかく抜群なので、アクアパッツァだけではなく蒸し料理、グリル、チキンなどとの相性も抜群。メイン料理をより濃厚な味わいにできる。
作り方は至ってシンプルで、白身魚にマジックソルトを両面まぶした後、深めの耐熱容器に唐辛子を並べてオリーブオイルをかけ、電子レンジで加熱したら完成。
下ごしらえだけではなく最後に振りかけても問題ないが、より濃厚な味わいを実現するためには下ごしらえと両方にマジックソルトを採用することをおすすめする。
スクランブルエッグ
朝食の定番であるスクランブルエッグも、シーズニングを加えることでいつもより美味しく味変することが可能だ。
- ボウルに卵を割る
- バターとマジックソルトを加えてよく混ぜる
- 淡く色が変化してきたら生クリームを加えて混ぜる
- 後はいつも通りスクランブルエッグを作る
バターとマジックソルトが均等に行き渡るようにするため、かき混ぜる際は手ではなく泡だて器を採用することをおすすめしたい。
いつものスクランブルエッグとは違うふんわりとした食感になるため、気軽に味変したいと考えている方は試してほしい。
パスタ
定番料理であるパスタもシーズニングで簡単アレンジが可能だ。
材料と調理法は普通にパスタを作る過程と変化なし。唯一の違う点は、パスタを作る際にシーズニングを加える工程だけである。
すると、普段から食べているパスタの味わいがより濃厚になり、本格的な風味を気軽に感じられるようになる。加えるシーズニングは適量なので、好みで調節してみよう。
野菜揚げ
シーズニングは野菜との相性も抜群。なかでもアレンジレシピとしてぜひ紹介しておきたいのが、ゴボウやニンジンをシーズニングとまぶして揚げる料理だ。
- ゴボウとしっかりと洗う
- 表面を軽くそげ落として好みのサイズに切る
- ラップをかけて電子レンジで加熱する
- ゴボウ全体にシーズニングと薄力粉をまぶす
- サラダ油に入れて揚げる
歯ごたえを完全に失わせないようにするためには、電子レンジでチンする時間を上手に調整することが重要。おすすめは3分から4分だ。
揚げる前にシーズニングを混ぜ合わせることで、野菜の本来の味わいを残しながら風味を豊かにしてくれる。お酒のおつまみもに最適である。
ポーチドエッグトースト
朝食の定番であるポーチドエッグトーストは、シーズニングを上からかけて食べるだけで大きく味変される。手間なく簡単に作れるのでアウトドアにも最適だ。
卵を電子レンジでチンしてほうれん草などと盛り付けるだけの簡単料理なので、主に朝食の定番として多くの方が食べているだろう。
一緒にトーストに盛り付けて完成できる料理なので、シーズニングの量も自分の好みに合わせて自由に調整してみてほしい。
ピーマンの肉詰め
これからは、ピーマンの肉詰めの味付けはシーズニングに任せてみてほしい。
ピーマンの苦味が絶妙な人気料理だが、実は味付けが大変だということでも知られている。しかし、シーズニングであれば完成されたピーマンの肉詰めにかけるだけなので、手間なく最高の味付けを完成させることができる。
上記でも説明した通り、シーズニングは野菜本来の味を引き出してくれるため相性が抜群だ。串刺しで提供すれば見ても楽しめるので、大人だけではなく子どもでも満足できるはずだ。
チキン
シーズニングはチキンとの相性もいいため、鶏むね肉の料理やソテーの味付けにぜひ利用してみてほしい。調理が完了した後にシーズニングをかければいいだけなので、いつもとは違う味で楽しみたい場合の調味料に最適だ。
チキンはタンパク質の含有量が多い食材なので、繰り返し食べている方も少なくない。しかし、毎日チキンを食べていると同じ味で飽きてしまうため、時々こうやってシーズニングをかけて味変してみると、長く継続できるはずだ。
まとめ
本記事では、シーズニングが持つ2つの意味「油ならし」と「粉末のミックス調味料」を紹介したが、理解できただろうか。
シーズニングの2つの意味はずいぶんと違ってはいるものの、食生活をより豊かにしてくれるはずだ。
鉄製の調理器具をシーズニングすることで、美味しい料理を作り出すことができ、長く使えるパートナーになってくれる。また、調味料のシーズニングをキッチンに常備しておくと、いざというときに活躍すること間違いなしだ。
これから本格的な味の料理を作りたい人は、ぜひシーズニングにチャレンジしみてほしい。