3712「今だって山に行きたい」。自分の焚き火がしたくてひとり、山へ向かう| ヒロシ

「今だって山に行きたい」。自分の焚き火がしたくてひとり、山へ向かう| ヒロシ

男の隠れ家編集部
編集部
コーヒーカップに映る木々、静かに燃える焚き火、炎の上で焼き色をつける肉――。思わず男が見入る“萌えポイント”の羅列ともいえるソロキャンプ動画で42万人以上を魅了。芸人・タレントとは異なる新たな生き様を見せている男・ヒロシにとっての“隠れ家”とは?
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【プロフィール】芸人 タレント ヒロシ
1972年熊本生まれ。コンビ芸人、ホストを経てソロ活動へ。以降お笑い、俳優、ラジオパーソナリティ、執筆など幅広い分野で活躍。近年では、自身が自ら趣味であるソロキャンプ動画の撮影編集を行うYouTube「ヒロシちゃんねる」の登録者が42万人(※)を超える 。 ※YouTube「ヒロシちゃんねる」登録者数(2019年7月現在)

初のソロキャンプは「楽しいけど怖えな」。仲間が楽しみ方を教えてくれた

僕も昔はみんなでキャンプをしていた時期がありました。でも、だんだんグループで行くことが煩わしくなってきて。自分一人なら、行きたいと思い立ったときにすぐ行けるのに、誰かと行くとなると日程を調整しなくちゃならない。

食べるものもみんなの好みに合わせたり、「キャンプに行こう」と誘うのはいつも僕で、だいたい言い出しっぺがいろんな準備をしなくちゃで。僕は特に周囲に気を使ってしまうタイプなので、余計に疲れて面倒になってしまいました。

そこで、一人でキャンプに出かけてみたけれど、はじめからソロキャンプの醍醐味を楽しめたわけじゃない。楽しいんだけど、怖えなって。夜の山の中に一人でいると恐怖心がなかなか拭えず、しばらく行かない時期が続いたんですが、ソロキャンプ好きな人たちと知り合ってからは山に対する抵抗感がなくなってきました。

ソロキャンプといっても、仲間と行ったりするんですよ。別々なんだけど、一緒にその場を楽しむというか。現地までの移動も別なら、食事や焚き火も別、テントも別。たまに話したりもするけれど、近づきすぎずほかの人の時間を邪魔しない。一緒に、別々に自分の時間を過ごす。自由にやりたい人の集まりだから成り立つんですよね。感覚の似ている人しかいないけれど、それさえ嫌な時は誰にも声をかけず黙って一人で行けばいいわけで。

自分しか楽しくない映像だと思ってたら、そうじゃなかった

本格的にソロキャンプを始めて1年くらい経ってから、キャンプの様子をYouTubeにアップし始めました。みなさんも、旅行に行くと食べたものの写真とか撮りますよね。僕は、焚き火を撮って動画で残した。

仕事で行くキャンプとは違って、自分で行くときは、自分が楽しければいいと思いながら好きな動画を撮っている。焚き火や、カリカリに焼いた餃子や、ランタンの光に群がる虫とか。僕の萌えポイントの羅列なんですよね。

結婚式の動画みたいに、自分が楽しいことしかしていないから、自分しか楽しくないんじゃないかなって思っていました。基本的に、僕は動画にほとんど映らず、コーヒーをすする音や息を吐く音が入るだけ。「はい、どうもこんにちは」みたいな語りかけもできない。誰も見てないと思っていたし、一人でキャンプしていたら何もしゃべらないのが普通だから、自然体というか、そんな意識すらなくて。

でもそこにハマる人たちが見てくれて、「ソロキャンプはじめました」「クルマ買いました」って言われるとすごく嬉しい。共感してくれる人がいるんだと実感するようになって、続けてきているんだと思います。

人のいないところで焚き火をする、それだけでそこが隠れ家になる

昔、ホストをしていた頃はお酒を飲みましたが、もともと体質に合わなくて、今はまったく飲まない。だから「男の隠れ家」からバーや酒場を頭に浮かべることはなく、僕にとっての隠れ家は、山の自然に囲まれて一人で過ごす時間。日常から解放されて、自由を感じて、誰にも邪魔されずリラックスできる時間と空間なんです。

特に旅が好きというわけでもなく、運動が嫌いなので登山も興味がなく、山でも基本は何もしない。コーヒーを飲んで、タバコを吸って、火をいじって、それだけです。

結局、焚き火がしたくて山に行くんですよね。人はそれぞれ好みの焚き火があると思うんですよ。それがみんなでキャンプに行くと、ひとつの焚き火を囲まなくちゃいけないでしょう。あれも嫌で、僕は僕の好きな焚き火がしたい。キャンプファイヤーみたいに燃え盛るような下品な焚き火ではなく、僕は自分の好きな範囲でチマチマとやるのがいい。「今日はこんな組み方をしよう」と火をいじっているだけですごく楽しいんです。

(「ヒロシちゃんねる」より)

キャンプが人気なのはいいけれど、そうなると一人になれる自分の山が欲しいと思い始める。人がいないところに行って、焚き火ができたら、そこがもう僕の隠れ家。仕事が忙しくて行けないときが多く、ずっと隙を狙っている生活です。今も行きたいと思っています。

もうひとつ、キャンプの次のステップとして興味があるのは「ブッシュクラフト」。必要最低限の荷物だけ携えて山に入り、テントを使わず、木を切って櫓を組んで小屋を作って、そこで眠る。キャンプよりもサバイバル寄りで、すごく挑戦してみたい。でも、キャンプ場では勝手に木を切れないし、なかなかできる場所がない。自分の山を持ち、そういうことができる自分だけの場所があれば最高の隠れ家になりますよね。

一円もくれない人に気を使うより、究極の自由を楽しむ方がいい

僕はいま47歳ですが、あと何十年かすれば、確実に死ぬ。僕だけじゃなく、誰にも死は必ず訪れます。人生は意外と短いから、やりたいことがあるならすぐに始めたほうがいい 。

例えば、お店をやりたいのなら、定年してからなんて言わずに、週末だけでも今から始めてみればいい。失敗したって、若いうちのほうがダメージは少ないはずで、たとえ周囲に何を言われても知ったこっちゃない。だって、自分に一円もくれない人に気を使ってもしょうがないですからね。

僕は、やりたいことは全部やって、やりきったと思って死にたい。自分では何も行動を起こさずに、他人の批判をするのは本当にダサいし、死ぬ間際になって「やっておけばよかった」って後悔することだけはしたくない。そう考えると、おのずと行動するしかないんです。

周りに支配されて終わる人生より、自分のいいようにできる人生を楽しみたい。その究極の自由が、僕にとってはキャンプで、究極の隠れ家なんです。

文◎伊藤裕香 撮影◎井野友樹

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