73131「自分の表現力やパッションを高めて、エンターテインメントの可能性を追求する」| エンターテイナー・城田優

「自分の表現力やパッションを高めて、エンターテインメントの可能性を追求する」| エンターテイナー・城田優

合同会社エーライト
菅堅太(エーライト)
目次

恵まれたスタイルと幼少期から磨き上げた表現力を武器にミュージカル、お芝居、音楽といったエンターテインメントの世界で多岐に渡る活躍をしている城田優さん。近年は演出家としての一面も持ち、エンターテイナーとして数多くの観客を魅了している。

そんなアクティブな生活を送る城田さんにとっての隠れ家とは。表現者としてのこだわりや今後の展望も語ってもらった。

【プロフィール】エンターテイナー 城田優
1985年12月26日生まれ、東京都出身。2003年の俳優デビュー以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。最近の主な出演作品は、TBSドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、NHKドラマ『カムカムエヴリバディ』(語り手)、映画『コンフィデンスマンJP英雄編』『バイオレンスアクション』など。舞台では『エリザベート』や『ブロードウェイと銃弾』などのミュージカルで数々の賞を受賞。近年は舞台作品のプロデュース・演出も手がけ、2021年には米倉涼子氏との共同プロデュースによる『SHOW TIME』をはじめ、オリジナル舞台作品「あいまい劇場 其の壱『あくと』」をプロデュースし、話題となった。

■幾つもの挫折にも負けなかったエンターテインメントに懸ける日々

7歳まで、スペインに住んでいたんですけど、その頃からテレビの世界(エンターテインメント)に対しての憧れがありました。それで、日本に帰ってからは母親に連れられて、CMやモデルのオーディションを受けていました。

けど、鳴かず飛ばずで全く受からず、月日だけが経ったんですよね。それでも諦めずに何度も受け続けていたら事務所に所属できるようになりました。それが中学2年(13歳)のタイミングで、本気で芸能活動を頑張ろうと決意した瞬間です。そこからレッスンやオーディションの日々が始まるんですけど、なかなか日の目を浴びる瞬間が訪れずに悶々とした時間が数年間続きました。16歳までは、地方のカタログの1ページやドラマのエキストラなどしか出演していません。

当時は、すごく繊細で多感な年頃でもあったので、ハーフという容姿のことを言われることも多くて悔しい思いや非常に傷つく時間でもありました。上手くいかずに「もう嫌だ!」って泣きながら家に帰る日もあったんですが、寝て起きると「やっぱり音楽がやりたい、ドラマや映画、テレビに出たい」という気持ちになるんです。なぜなら、それ以外に夢を持ったことがなかったから。当時を振り返ると、自分の意思が負けても負けても、それでも立ち向かうぞという気持ちが強くありましたね。

そんな自分に転機となったのが、16歳の時にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』のオーディションに合格してからです。そこから徐々に城田優としての役者人生が始まり、そして今に至ります。最近の自分を定義するなら、俳優でもなければミュージシャンでもない、“エンターテイナー”という肩書きを掲げています。

■エンターテイナーとして譲れない“パッション”に込めたメッセージ

僕がエンターテイナーとして特に力を注いでるのがミュージカルです。それは、エンターテインメントの中で一番難しい表現だから。歌って踊ってお芝居して、時にはアクロバットして、時には泣いたりと感情的なことも含めて、プロフェッショナルな表現が求められる。そして、作品によって求められるスキルも変わります。

例えば、最近やっていたブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』なら、ドラァグクイーンのローラ役なので、女性のしぐさや儚さを兼ね備えながら、14cmのヒールを履いて踊るという。舞台に立つ直前は、役を全力で演じるプレッシャーなどで孤独な気持ちになります。

だけど、そんな状況下で一番大事にしてるのは、パッション(情熱)です。スキルやセンスも大事なんですけど、何よりもパッションです。そんなパッションがパフォーマンスや作品のクオリティに必ず繋がります。だからこそ、出演者が全員同じパッションを持ってることが大切なんです。それぞれ色や形は違えど、同じ熱量を持っていれば、作品の完成度は必ず高くなる。僕は、舞台に出演してる時は出演者の誰よりもパッションを持って挑みたいと常々思っています。

他にも僕がミュージカルの表現で大事にしていることは、作品ごとに声を変えることです。それをやってる人は限りなく少ない。本来役者は、声や表情を変幻自在に操れる存在であるべきだと思っています。そこもパッションが高くなればなるほど、その役を生きる上でのエネルギーやどれだけ作品を信じられるかが表現力にも表れる。僕は自分を信じるというよりは、周りを信じて作品を信じるっていう。それが結果的に、エンターテイナーとしての成長に繋がっていると感じています。

■演出家として役者のストレスを全部背負う、それでも届けたい作品の世界観

最近は、演出家としての役割も増えてきています。その中でも、「もっとエネルギーを出してくれ」と気持ちの部分を役者さんに伝えています。例えば、技術的に足りてない人に技術面を指摘するのは、誰にでもできること。だけど、お芝居を通じてキャラクターの軸がブレてたり定まっていなくて、表面上で芝居をしていると感じた時には、「どれぐらい、その役を掴んで演じられてるかな?」というディスカッションを重ねます。

役者としっかりと向き合いたい。自分勝手な演出はしたくありません。僕自身、役者として演出家にうるさく言われたこともたくさんあります。全てを一通り経験しているので、自分は役者さんがストレスを感じないよう、のびのびとお芝居ができるよう心掛けています。というのも、お客さんの前で最終的に作品を表現するのは役者だからです。本番直前でも、みんなに「大丈夫だよ。何かあっても全部俺が背負うからね」って言えるし、自分も役者たちもすごく強気になれる。観客席にいるお客様たちに対しても、「楽しみにしててね、今から最高の作品を見せるぞ!」という気持ちでいます。

演出家は、総合的に考えると大変な役割ですが、その代わりに自分が頭の中で描いている世界観をお客様に共有できる。それを客席から見てる時の楽しさは、本当にかけがえのない時間ですね。

■隠れ家だったお店は、気づいたら業界人が集まる場所に

自分が20歳になってからの15年間、ずっと通っているお店があります。普段は、お店に行く時は少し気を遣っちゃったりするんですけど、そこに行く時は何も気にせずに家にいるような感覚なんです。

店主が絶対的に信頼できる人で、美味しいご飯を食べるだけでなく、お店でパソコン作業をすることもあります。自分がよく行くところだから、「教えてください」って言われても、1回も紹介したこともない、なぜなら隠れ家だからです(笑)。

とても落ち着く場所で、自分が仲のいい友人だけを紹介してきたつもりなんですけど、気づいたらすごい業界の人がたくさん集まる場所になっています。様々な業界人が行く理由として、店主が男性なんですけど、みんなが彼と話しに行ってる気がします。業界の人間でもないから、仕事の話もフラットに話せる。現場では言えないような悩みや愚痴を聞いてもらう場所になっているのかもしれない。

一人で過ごしても良いし、誰かと一緒に行っても居心地が良い。だからこそ僕にとっての隠れ家なんだと思います。

■エンターテイナーとして海外展開を見据えての挑戦を決意

2020年に独立してから感じているのは、自分が本当にやりたいエンターテインメントを探究する時間になってきたということ。演出を始めてからは、裏方の魅力も感じていて、そういったマインドも強くなっています。

2023年の上半期は、裏方のマインドを強めにしつつ、もう一つの目標として海外展開を描いています。自分自身、スペインの血が入ってたりと世界でエンターテインメントを表現する上でプラスになるものがあります。今までは、コンプレックスだと思っていたことが武器になる瞬間がきている。自分がどの国で需要があるのかを含めて、世界を見に行こうと決めました。海外でエンターテインメントの仕事がどうなってるのか、そこにインプットの時間を割きます。

そして、上半期が終わったら『ファントム』のミュージカルが始まります。2019年に1度主演と演出をやらせていただけているので、0から作る作業ではないんですけど、必ず初演を超えたい。どのミュージカルでも言われてることなんですけど、初演を超えるのはとてもハードルが高い。そういった意味でも大きな挑戦です。

本来なら、劇場全体を使ってのエンターテインメントをお届けしたいと考えていますが、コロナ禍の影響で演出にも様々な制限があります。しかし、どこかのタイミングで絶対に戻さなければならない。僕らは、作り手としてエンターテインメントを本来あるべき姿に戻さなければならなくて、そこを一生懸命頑張りたい。

『ファントム』という作品を通してエンターテイナー、クリエイターとしての城田優をしっかりと届けられるように、「この人すごいな」って思ってもらえるように、自分は精一杯やるだけです。

【出演情報】
ミュージカル『ファントム』


19世紀後半のパリを舞台に描かれた本作は、『オペラ座の怪人』を原作にしたミュージカル。主人公・エリック(加藤和樹 / 城田優)は、“怪人ファントム”として次々に恐ろしい事件を引き起こしていくが、彼の背景にはどのような物語があったのだろうか。
ファントムとエリック、2つの顔を持つ主人公に焦点が当てられた奥深いストーリーは、ぜひ舞台でご覧いただきたい。また、演出・主演だけでなく、ファントムの恋敵となるシャンドン伯爵役の三刀流に挑む城田さんの活躍にも注目が集まる。

演出:城田優
出演:加藤和樹/城田優(Wキャスト)真彩希帆/sara(Wキャスト)、大野拓朗 ほか
期間:【大阪】2023年7月23日(土)〜8月6日(日)、【東京】8月14日(月)〜9月10日(日)
チケット:S席14,000円、A席9,000円、B席5,500円(全席指定・税込)
公式URL:「ファントム」

その他の出演情報


城田さんは、2023年の3月17日(金)から配信されるAmazon Originalドラマ『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で遺体処置のスペシャリスト・柊秀介役を演じる。
また同年5月5日(金)には、帝国ホテルにてランチーショーのYu Shirota GW Special Show「立夏〜大人も主役のこどもの日〜」を開催予定だ。
最新の出演情報については、オフィシャルサイトを確認してもらいたい。

▶︎YU SHIROTA 公式サイト

文/池田鉄平 撮影/井野友樹 スタイリスト/橘昌吾 ヘアメイク/Emiy(エミー)

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