62762「自分を見失っていた時期にLAへ渡り学んだ、コミュニケーションの美学」|AAA・與真司郎

「自分を見失っていた時期にLAへ渡り学んだ、コミュニケーションの美学」|AAA・與真司郎

合同会社エーライト
菅堅太(エーライト)
目次

男女混合パフォーマンスグループ「AAA」のメンバーで、日本の音楽シーンの一世を風靡した與真司郎さん。幼少期にダンスと出会い、エイベックスでデビューして才能を開花させた。27歳で2年間LAの大学に進学するLA留学を決意し、表現者としての分岐点となる価値観を手に入れた。現在はLAに移住しながら日本での活動を行き来している。そんな與さんに、これまでの人生やキャリアを振り返りながら、揺るぎない美学やスタイル、自身が描く未来像までを語ってもらった。

【プロフィール】AAA 與真司郎
14歳でエイベックスに入り、2005年9月14日にAAAのメンバーとしてシングル『BLOOD on FIRE』でデビュー。2016年6月には、初のソロ作品をリリース。アーティスト活動以外にも自身のライフスタイルを表現するアパレル、雑貨、アクセサリーのブランド「446 – DOUBLE FOUR SIX – (ダブルフォーシックス)」を展開している。現在は、日本とLAを拠点に活動し様々なスタイルでメッセージを発信している。

■アーティストとしてぶれなかった、“人に流されない”スタイルの確立。

幼少期から明るいタイプで意見の言える性格で、みんな「Aが正しい」って言っても、Bがよかったら「B」って言うタイプでした。そんな自分が小学校5年生でダンスと出会い、初めて「これが好きだ」って思えて、そこで人生が変わった気がしますね。

ダンススタジオに行って扉を開いたことを、とても鮮明に覚えているんです。みんながヒップホップを汗かきながら楽しそうに踊っていた。音楽も好きだったので、「こんな表現があるんだ」って衝撃でした。今でこそダンスが一般的ですけど、当時は誰もやってなかった。自ら行くしかなかったので、行ってよかったなって本当に思いましたね。

そこから、ダンスにずっとのめり込んでいたので、「オーディションを受けなよ」って周りから言われて、エイベックスの初男性オーディションを受けることにしました。

基本はダンスしか経験がなかったんですが、オーディションで歌わないといけなかったから歌いましたけど、ダンスを思い切りやった結果、ラッキーなことに合格することができて……。

当時のエイベックスは、浜崎あゆみさん、BoAさんなど歌姫がめちゃくちゃいたので、所属するのが不思議でした(笑)。最初はデビューするのに必死でしたが、AAAとしてデビューしてからは売れるのに必死。自分たちがデビューしたら売れると思っていたんですが、思うようにいかず、売れなかった時期がずっと続きました。その分メンバー、スタッフさんとみんなで苦労を分かち合いました。

2021年に行われたAAAのライブ「AAA DOME TOUR 15th ANNIVERSARY -thanx AAA lot-」

今のポジションに辿り着くまでいろんな道のりがありましたけど、一貫して“ぶれなかった姿勢”が成功の要因だったと感じています。人の意見は聞けるタイプなんですけど、“絶対ここは変えたくない”っていう部分があって。行動力と決断力はずば抜けてると思います。

周りを見てて、みんな「やりたいけどできない」っていう人が多い印象ですが、「いや、やらないと分からないじゃん」と実行しないと駄目なタイプです。

個人的にアーティストや表現者にとって、人に流されないっていうのが一番重要だと思っていて。今は、情報社会で流行りに敏感すぎて、何かを真似するっていうのが多くなってる。そこで、みんなぶれちゃう。流行りが終わったら、自分がどこに行けばいいのかを見失っちゃう。自分を持って自分らしく生きていかないと。それに感銘を受けてくれるファンの方たちが集まってくるっていうのが、アーティストとして本当のあり方だと思います。

■自分を見失っていた27歳でアメリカに渡り、衝撃を受けた“自己愛の姿勢”。

AAAが10周年を迎える頃、他のメンバーがソロ活動するのを聞いてたので、自分も何をやろうかって考えていました。14歳からエイベックスや芸能界にいるので、その時期は自分を少し見失ってるタイミングでした。聞いてもらって当たり前、やってもらって当たり前っていうのがちょっと嫌だなと。その中でずっと“海外に行きたい”っていう夢を持っていたので、カリフォルニアの大学に2年間行ってたんです。そこでおもいっきり考え方が変わりましたね。

カリフォルニアの大学で勉学に励む與さん

一番影響を受けたことが、海外の人は自分を愛する姿勢をみんなが常に持ってること。日本は、ストレスが当たり前という社会だと感じていて。僕もそうでしたが、ストレスがあって有名になってお金を稼ぎ、仕事がうまくいく。

しかし、その考えがアメリカにはなくて。自分は、普通のことなのに気付いてなかった。若いときから芸能界で休み無しで働いてたので、自分と向き合えたらこういう思考になる、そこが衝撃でしたね。

日本特有の“人に合わせる文化”って、良いところもあれば、もちろん悪いところもあって。決してアメリカの考えが全て正解とも思ってないですし、逆に日本のカルチャー、考え方で良いところもたくさんある。どっちが良い悪いじゃなくて、両方の良いところを自分の中に取り入れて生きていきたい。

失敗を恐れるからみんな海外に出づらいと思うんですけど、「失敗して何が悪いの?」って思います。失敗をしたから学ぶことってほんとにたくさんある。自分も10代、20代のときは怖かったですけど、30代になって、「あの失敗を経験してよかった」というのがすごく多い。特に秒で動くタイプなので、失敗もするんです。でも、やっぱり自分で体験をしないと。

周りからは、「いや、それやめといた方がいいよ」って言われるんです。けど、やってみないと分からないし、できないんじゃなくて、できる方法を見つけることが一番重要。そういうことを、ファンのみんなにも、もっと伝えていきたいですね。

■LAは、思考もリセットされクリエイティブになる。そんな瞬間が一番、安らぐ。

自分にとっての隠れ家となると、やっぱりLAかな。一方でLAだけじゃなくて、アジアでも、日本から離れて環境が変わると、考え方が変わって、クリエイティブにもなる。

“一回リセットされる”、そこが一番、安らぐところなんです。

自分のことなんて、誰も知らない環境で、全部自分で動いていかないといけないし、積極的に動かないと友達もできない。そこでできた友達とは、メンタルヘルスの話とかもするし、毎日が新鮮なんですよね。そういうコミュニケーションでリラックスできるし、リセットされる。

僕は忙しくするタイプで、プライベートも仕事も、常にスケジュールを朝からばんばん入れたいタイプです。2021年の12月25日にAAAのドームツアーが終わって、アーティスト活動を休止していて、今までより時間があって一日家にいることを試してみたんですけど、全く合わなくて。休みの日こそ朝から、人と話したり、運動している方が明日からまた頑張ろうという活力になります。

仕事以外だったら、人と会ってるときが一番楽しいですね。ただ遊ぶだけじゃなくて、意見の交換や話すことが全てにおいてプラスになってる。

日本は、「読み取って文化」とか「察して文化」が少なからずあると思います。でも、自分は小学生の頃から、「言わないと分からない」ってずっと思ってたんです。それがアメリカでは、「言わないと分からないよね」っていうコミュニケーションを大事にしている。フレンドシップ、家族とのリレーションシップも全てにおいて。お互いが受け入れる態勢、努力をしながらも話し合うことがすごく重要なんじゃないかなって思います。

忘れられないエピソードとして、カリフォルニアの大学に行って、初めて授業を受けたときに先生が、「質問ある人」って言った瞬間、全員が手を挙げたんです。そのときに、みんなすげえな。日本人だったら手挙げないじゃないですか。そんな経験を経て、話さないと分からない、聞かないと分からないよねって。日本でも、お互いが少しでも分かり合うために話し合うことが、これからの時代はすごく重要になってきてほしいですね。

■幸せな人が増えるために綴った、『すべての生き方は正解で不正解』

今後も人生楽しく生きていきたいなって思います。同時に少しの我慢も必要なんです。自分も10代、20代と本当に休みもなく、精神的にも頑張った。AAAで辛かったときに、母から「取りあえず10年続けてみなさい」ってアドバイスされて駆け抜けました。今は、走り続けた自分へのご褒美として、ゆっくり仕事をしながら発信している。またどこかで頑張らないといけないときが絶対に来るので、それまでに充電して、思考をもっともっと成長させていきたいなと思ってます。

その中で、出会った人の思考やカルチャー、価値観を吸収し、自分が日本の皆さんに伝えたいメッセージを『すべての生き方は正解で不正解』という本にまとめました。

自分の考えが100%合ってるわけではないし、この本を読んで、何個かは共感するけど何個かは共感しないっていう方もいると思う。だけど、コロナ禍で環境、世界の情勢は変化していく中で、自分の思考変化も必要になっている。ひとつの考え方で人生は本当に変わるから、そこを一人でも多くの人に知ってもらいたいです。

自分も葛藤してた時期が長かったので、できるだけそういう人が減ったら、もっと日本は幸せな人が増えるのかなと願いも込めています。アメリカに移住したことで、日本の素晴らしさにも再認識しているので、それぞれの文化を伝える、架け橋のような役割を担えたらと思います。

【書籍情報】
『すべての生き方は正解で不正解』



與真司郎さんの人生を大きく変えたポジティブ思考を軸に、仕事からプライベートまで幅広いシーンで活かせる思考・視点をまとめた一冊。人生の決断に迷うとき、あなたの背中を押すポジティブ語録がきっと見つかるはずだ。

▶︎Amazon『すべての生き方は正解で不正解
刊行日:2022年8月23日(火)
価格:1760円(税込)
サイズ:四六判(ソフトカバー)
ページ数:176P(うちカラー写真32P)

文/池田鉄平 撮影/井野友樹 ヘアメイク/佐藤真希 スタイリスト/村井素良

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