63446「みんなに気づきや変化をもたらすヒットを生み出したい」|実業家・常田俊太郎

「みんなに気づきや変化をもたらすヒットを生み出したい」|実業家・常田俊太郎

男の隠れ家編集部
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コロナ禍で激変したエンタメ市場において、エンターテインメント×デジタル領域で様々なサービスや事業を行い音楽業界の革新に挑戦している実業家・常田俊太郎さん。

人気バンド「King Gnu」リーダー・常田大希さんの兄であり、ミュージシャンとしても、ストリングスを中心にアレンジやレコーディング、プロデュースなどの活動も展開。これまでのキャリアを振り返ってもらいながら、クリエイティブな日々を送るために欠かせない愛用品とのストーリーを語ってもらった。

【プロフィール】実業家 常田俊太郎
大学卒業後は、戦略系コンサルティングファームのプロジェクトマネージャーを経て、テクノロジー×ビジネスの視点で音楽家やクリエイターの活動を支援する事業を展開。2歳下の弟の常田大希「King Gnu」が主宰する音楽プロジェクトmillennium paradeのメンバーとしても活動中。

■音楽の道に進むのを辞め、ビジネスの世界へ

「音楽が中心の環境で育ちまして、父はジャズピアノ、母はクラッシックピアノを演奏し、僕はバイオリンで弟の大希はチェロを習っていたんです。3歳とか4歳ごろの話なので、最初はやりたいっていうより、そんな意識もないというか。気づいたら親にやらされていたみたいな感じでしていましたね」

母親が音楽家志望だった影響もあり、音楽を習わされた。しかし、常田さんが中学生くらいになると、徐々に音楽に興味を持ち始め、「東京にいる、この先生のレッスンに通ってみたい」など能動的にバイオリンを練習するようになる。

将来の夢はクラシック音楽の演奏家を志し、毎日5〜6時間はコンスタントに練習し、バイオリンで全国のコンクールで入賞するレベルになっていた。だが高校2年生になると、自分の進路について思い悩むようになる。

「演奏者として自分がいなかったところで、そんなに大勢に影響ないというか。いない穴を誰かが埋めて、大体似たようなクオリティーで演奏する人もいるだろうし。それだったら、そもそもクラシックの演奏っていうフレームの中で戦うんじゃなくて、“それの在り方自体をどうしていくか”という部分に興味が出てきて。芸術やカルチャーを盛り上げていく方面に行った方がレバレッジできるんじゃないかなって」

こうして音楽家になるための道を歩むのを辞め、東京大学工学部に進学した。卒業後は新卒で戦略系コンサルティングファームに就職し、ビジネスの道に進むことを決心。6年ほどその会社で働いたあと、徐々にやりたいことも明確になってきたところで会社を辞め、独立を決意し、株式会社ユートニックを立ち上げる。

現在は音楽家やクリエイターが専用のオリジナルアプリを簡単に開発・リリースできる「U-SERIES」をはじめ、アーティストの活動を支援する様々なアプリを開発している。

■デジタルでの取り組みに課題を感じるアーティストや事務所が増えている

現在、独立して4年目の常田さん。これまでのYouTubeやテレビなどの「メディアプロデュース」と、「U-SERIES」での「アプリ開発」の2つが組み合わさって化学反応を起こし、徐々に手応えを感じてきていると言う。

「色々積み上がってきているなという感覚はありますね。例えばIT企業的な側面もありつつ、クリエイティブのところもやっているが故に信頼してもらえる。逆にメディアだけじゃなくて、アプリとか、別の出目を持っているからこそ、ただのメディアにとどまらずにマネタイズもできて広がる。それぞれやっていることがつながりかけてきている感覚はあります」

近年ではコロナの情勢もあり、アーティストもデジタルでの活動展開やマネタイズを加速させる動きがある。ユートニックでは、これからも音楽家やクリエイターたちの課題を解消するような事業を展開していくと言う。

常田さんが行っている活動の一つ「With ensemble」は、本記事の最後に紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。

■弟のKing Gnu(常田大希)は「1つのことを突き詰めていくタイプ」

音楽の道から、ビジネスの道へと進路転換して成功した常田俊太郎さん。一方で、音楽の道を進み続けた弟の常田大希さんも、King Gnu(キングヌー)のリーダー兼プロデューサーとして、日本の音楽シーンを引率する活躍を見せている。そこで弟の活躍が兄の視点からどのように映っているのか。

「やっぱり要所要所ですごく周りに恵まれているなってふうに思いますね。もちろん才能はあるとは思うんですけど、1人でできることは限られている。仮にビジネスマンとして会社に入ったら、個性や強みを生かしきれないかもしれませんね(笑)」

常田さんは、活躍する人のタイプは2つに分かれると語る。一つは、どんな仕事でもちゃんと活躍するオールマイティなタイプ。もう一つは、あることにだけ特化していて、他の仕事は全くできないようなスペシャリスト的なタイプだ。兄の視点から見ると、弟の大希さんは後者のスペシャリストタイプだそうだ。

今、弟の大希さんが活躍できているのは、事務所の方々や活動をサポートしてくれているレーベル、音楽仲間など、さまざまな人の支えとタイミングに恵まれたおかげだと俊太郎さんは語る。

「デビューする何年か前まで、親から『あいつはおまえが面倒を見ろよ』みたいな感じで言われていたので、だいぶ負担は減ったというか、羽ばたいて行ったので安心しました」

■これが無ければ生活が成り立たない【ポールスミス キーケース】

はじめに紹介する常田さんの愛用品は、こちらの財布。ブランドはイギリスのウィットに富んだデザインが特徴の「ポールスミス」である。こちらの財布の1番の特徴は、財布・名刺ケース・キーケースの3つの機能がついていること。

「もともと財布と名刺ケースとキーケースはバラバラのものをそれぞれ使っていたんですが、なくしものをしやすいので危ないんですよね。だから本当に最低限、マジで必要なものだけを1個にまとめられる革小物が欲しくて」

こうした3つの機能が一つにまとまっているものは、意外にも少ないそうだ。基本的にはQRやカードで決済を済ませるため、現金は滅多に使わない。だが時々現金でしか支払えないお店もある。そのためだけに財布を持ち歩くのもめんどくさい。

そんな繊細なニーズに応えてくれるのが、こちらの財布だ。

「これだけあればどこでも行ける。愛用というか、もはやこれがなければ生活が成り立たない感じですね。免許証とか保険証とかも全部入っているので、逆にこれを忘れたら全部終わります(笑)」

常田さんの財布への長年の愛着が、ポールスミスの財布にシワとして刻まれている。

■【スケッチブック&ペン】は「書いたら破って捨てる」のが常田流の活用術

続いては、こちらのスケッチブックとペンだ。ペンは、水性のラミーというブランドである。とても軽く、ストレスなくサラサラかける点がお気に入りのポイント。

また、スケッチブックは「書いたページは破って捨てる」のが常田流の活用術だ。

「僕は、昔からノートを取るのがめちゃめちゃ苦手なんですよね。最初の数ページは綺麗に書いているけど、途中で飽きてあとは何も書いていないノートが大量にあって。常にまっさらな状態から書きたいんです。なので、破って捨てています。また見返したいページがあれば、破ってクリップで留めていますね」

スケッチブックは何かのアイデアを出すときや、将来の構想といった抽象的なことを考えるときによく使う。その際、スケッチブックに過去のページが残っていると、自分が過去に考えたアイデアに引っ張られてしまい、良いアイデアが出せないそうだ。だから、書いたページはその都度捨てて、ゼロベースで書き始めている。

ちなみにこのスケッチブックはコンサルファーム時代に最初に支給された種類のもので、紙がサラサラしていて非常に使いやすいそうだ。

■思わず衝動買いした、お気に入りのカメラ【ライカ】

最後に紹介する常田さんの愛用品は、カメラである。ブランドはドイツのメーカー「ライカ(LIECA)」だ。以前、一眼レフの大きなフィルムカメラを買ったそうだが、大きすぎてあまり持ち歩かなかった。

そこでコンパクトな機種が良いと思い購入に至ったのが、こちらの機種だ。

「コンタックスは普通に人気だと思うんですけど、見た目がこっちの方が可愛いなと思って、1年前くらいに衝動買いしたのがこれですね。ポケットにヒョコって入れて、プライベートやスタジオなどで使っていましたね」

ポケットに気軽に入るくらいのサイズ感のカメラがあると、思い立った時に気軽に風景を写真に収めることができる。「これを撮りたいな」とふと思ったときに、その場でパシャリと取れてしまう、そんなコンパクトなカメラが常田さんのお気に入りのようだ。

■「みんなに気づきや変化をもたらすヒットを生み出したい」

普段からお気に入りのスケッチブックとペンを使って、新しいアイデアを生み出し続けている常田さん。最後に、今後の展望について思いの丈を語ってもらった。

「シンプルにヒット作を出したいと思っています。それは楽曲でも、チャンネルでも、サービスでも、フェスでも、ジャンルはなんでも良いです。みんなに気づきや変化をもたらすヒットを生み出したいですね。それに触れたことでちょっと考え方が変わったとか、興味を持ったとか、変化をもたらす存在。僕が活動している意味が、それを生み出すことだと思っています。自分の場合は興味の幅が広いので、“絶対これじゃなきゃいけない”みたいなものって、あんまりありません。自分にしかない強みが1個ある人って強いなって思うんですけど、自分は逆に広いのが個性だと思っています。今のYouTubeチャンネルもやりたいことだし、アプリもやりたいこと、でもバイオリン弾くのも嫌いじゃないみたいな。いろんな可能性があるので、それぞれで気づきを与えるヒット作を生み出したいなと思いますね」

【常田俊太郎さんの愛用品】

ポールスミス キーケース

1、2年前に購入したポールスミスの財布。これ一つで「財布」「名刺ケース」「キーケース」の役割を担っている。3つの機能が一つにまとまった財布は、なかなか出会えないそうだ。
片手に収まるコンパクトなサイズで、持ち運びも楽々。ブラックのシンプルなデザインが、引き手のストライプ柄を一層引き立たせる。

■水性ペン「ラミー」&クリッパーノート「ライフ」

ラミー(LAMY)の水性ボールペンと、ライフ(Life)のクリッパーノート。ペンは驚くほど軽く、力を入れずにサラサラ書けるのが、常田さんのお気に入りポイント。ノートはコンサルティングファーム時代からずっと同じ種類を使っている。
ゼロベースで斬新なアイデアを生み出すために、一度書き込んだページは破って捨てるのが常田流だ。

■ライカ minilux SUMMARIT 40mm f2.4

1年前に買ったライカ(LIECA)のデジタルカメラ。なによりも見た目が可愛くて、衝動買いしてしまったという。大きくて重い一眼レフのカメラと違って、ポケットに入れて持ち運べるサイズなので、ふと思い立った瞬間に風景をカメラに収められる。
「やっぱり、これくらいのサイズ感のやつが1個あると日々の過ごし方も違いますよね」

<メディアプロデュース>
With ensemble

常田さんが行っている活動の一つ「With ensemble」。オリジナルアレンジのオーケストラ演奏に毎回ゲストアーティストを迎えてパフォーマンスを行い、その日限りのライブ・アンサンブルを切り取ることをコンセプトにしている。
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アーティストとアンサンブルが出会って、いま、ここだけの音が生まれる。
あの曲の、もうひとつの姿が現れる。
いま、この時代だからこそ、声とクラシック楽器だけで向き合う、渾身のアコースティック・バージョン。
その思いを、丁寧に、区切ることなく、収める。
その瞬間を、しっかりと、余すところなく、届ける。
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これまでのパフォーマンスは、Youtubeにて視聴できる。
With ensemble

文/池田鉄平 撮影/井野友樹

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