103052時代は移り変わっても、消えることはない「商店街の灯り」

時代は移り変わっても、消えることはない「商店街の灯り」

男の隠れ家編集部
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商店街は不思議な空間である。ひとたび店の人に話しかけられると、ふと馴染み客になったような心地よさを覚えて、話が弾んでしまう。昭和のあの頃に戻ったような、郷愁に満ちた商店街に行ってみよう。 

(※その他の写真は【関連画像】を参照)

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

■夕陽に包まれて、どこか懐かしい商店街の世界へ

谷中銀座商店街は戦後、昭和23年(1948)頃に自然発生的に生まれた。戦前、日暮里駅近くの谷中近辺に人々が集まって商いを始めたが、戦火の被害により一旦は焼け野原となる。

戦後、戦災にあった商店の人たちが日暮里駅に続く今の場所に集まってきて商店街となった。その後、協進会・協同組合を経て谷中銀座商店街振興組合となり、現在まで商店街を保ち続けている。

八百屋、尽誠食品の様子。店主の元気のいい掛け声が響く。

平成28年(2016)頃に大きな世代交代があり、現在の理事長に交代、メンバーも30〜40代など、新しいアイデアを取り入れやすい環境となっている。

商店街の構成としては、さまざまな業種の店舗が約60店、全長約170mの通りに並ぶ。地元民の暮らしを支える生活必需品が多く、意外にも専門店が多い。

これは、戦後商いを始めた人たちが、当時売ることができるものが限られていたため、それを続けていくうちに専門店という形式に落ち着いたからだ。

谷中銀座商店街振興組合理事長の福島さんが営む丸初福島商店も、最初期は戦後に親戚のつながりから仕入れを行い、売ることができるものが貝類であったため、貝の専門店になったという。街中は懐かしさを想起させる雰囲気を残しつつ、近頃聞かなくなった店主の元気のいい声が響く。

アーケード街はまっすぐ一本道になっており、古風な建物が多い。屋根の上には、幸運の七福猫が飾られている。これは谷中ぎんざがある一帯では七福神信仰があったことに由来しているが、猫なのは制作を行った東京藝術大学の学生のイメージとのことだ。

商店街の七福猫の内の1匹。それぞれ表情や毛並みが違う。

「夕やけだんだん」といわれる階段はその名の通り、夕焼けの名所として知られている。買い物客で賑わう商店街を見下ろす階段の上に立つと、夕焼けの時間帯に街がオレンジ色に染まっていく姿を見ることができる。家々に徐々に灯りがついていく光景とあいまって、郷愁を掻き立てられる。

谷中ぎんざは地域密着の姿勢を大事にしているため、地元の人向けのイベントも欠かせない。夏は、ひゃっこい祭りというものが行われている。この名称は、江戸時代の冷や水売りの掛け声「ひゃっこい」に由来する。

通行止め看板。昔の商店街のロゴにあったようなポエムナードという文字が懐かしさを誘う。

出店や福引きなどのほか、熱い夏に涼をとってもらいたいということで、氷の彫刻の実演ショーや、泥鰌つかみ、子ども向けに氷に埋め込んだおもちゃを取り出す催しなどが開かれる。昭和から行われていた谷中銀座祭りを時代に合わせて、「下町の涼」をコンセプトに練り直したものだ。

また、冬の時期には、この地域に江戸最古の七福神信仰があることから、近隣の寺院と協力して「七福神巡り&商店街巡り」を行っている。これはお寺を巡ってスタンプを集めてくると商店街で福引きができるというイベントだ。

また、つきたてのお餅の振る舞いなどもされる。また7月と12月には、大感謝祭として、買い物の際にもらえるスタンプを2倍にするセールや福引きなどを行っている。これらのイベントは、地域住民の方に楽しんでもらいたいという商店街の思いから企画されている。

一方、最近は若い人の来客も増えているという。理事長の福島さんは、「最近は商店街を好きになってくれて、新しく出店してくれる人も増えています。日暮里駅に近いという、交通の便もあるとは思いますが、東京の下町の雰囲気と、専門店が多い環境に魅力を感じてくれる人が多く、すでにある商売を始めるのでなく、新しいことを始める人が多いと思います」と語る。

「夕やけだんだん」と商店街。名前の通り、夕焼けに階段の影が映える。

商店街の魅力は、やはり現地の人との交流である。何度も通って顔を覚えてもらったり、常連になっていつもの注文を覚えてもらったりした時には、昨今のシステム化された対応にはない、人と人との血の通ったつながりを実感する。

まるで故郷に帰ってきたような気持ちになれる温かい触れ合いを求めて、全国の商店街を訪れてみるのはいかがだろうか。

⚫︎下町の香りが色濃く残る「谷中ぎんざ」

日暮里駅から、ほど近い距離にある昔ながらの商店街。店舗のジャンルもバラエティに富んでおり、交通の便の良さから、外国人旅行客にも人気。

戦前から続く老舗がいくつもある歴史ある商店街だ。猫の町ともいわれ、人慣れした猫が多くおり、商店街にも猫の像が設置されている。また谷中は落語家、古今亭志ん生ゆかりの地でもある。

東京都台東区谷中3-13-1  

⚫︎商店街の発足からともにある老舗「丸初福島商店」

商店街が発足した当時からある、貝専門の店。店主の福島さんは現在の理事長でもある。豊富な品揃えは毎朝豊洲へ行って買い求めてきたもの。

初めてで貝類の食べ方がわからなくても、経験豊富な店主が美味しい食べ方を教えてくれる。

新鮮な岩ガキ。濃厚なうま味で、まさに海のミルクだ。
赤貝やミル貝、さまざまな種類の貝が売られている。

東京都台東区谷中3-13-4
TEL/03-3822-2315
営業時間/11:00~19:00
定休日/日曜

⚫︎自分が一番うまいと思う味で届ける「肉のサトー」

谷中商店街の名前が付いた、メンチカツ「谷中メンチ」(230円)を看板商品としている肉屋さん。

店主は、「自分がうまいと思う味で作っている。この味が好きな人に来てもらえれば」と語る。正直な味付けが多くの人に好まれている。

揚げたての谷中メンチ。肉厚で、食べごたえがあり、懐かしい味わいだ。遠赤外線で揚げているため温めなおしても美味しい。
サラミなど加工肉や焼肉のタレも取り扱う。

東京都台東区谷中3-13-2 
TEL/03-3821-1764
営業時間/10:30~19:30
定休日/月曜
※揚げ物販売12:00〜17:00頃(売り切れ次第終了)

■一度は行きたい全国の商店街

⚫︎北海道 北海道最古の商店街「狸小路商店街」

明治政府が開拓使を置いた頃の明治6年(1873)創業の商店街。1丁目~7丁目に分かれており、古着店からラーメン屋まで幅広い。

北海道札幌市中央区南2・3条西1~7

⚫︎福島県 蔵とラーメンの街で広く知られる「レトロ横丁商店街」

江戸時代に物資集積地として栄えた土地で、江戸、明治以来の店舗蔵が連なる。昭和レトロを切り口にさまざまな取り組みを行う。

福島県喜多方市字2-4658

⚫︎栃木県 280m全蓋アーケード「オリオン通り商店街」

昭和23年(1948)発足の商店街。名前は3つの町にまたがる長さを持つことから、3つの星が並ぶオリオン星座にちなんで付けられた。

栃木県宇都宮市江野町1-9

⚫︎東京都 おばあちゃんの原宿と名高い「巣鴨地蔵通り商店街」

おばあちゃんの原宿として古くから有名な商店街。近隣の大学生が地域の事業に参画することも多くあり、活気があふれている。

東京都豊島区巣鴨4-22-8

⚫︎愛知県 徳川縁の名古屋城城下町「大須商店街」

大正時代に寺が土地を開放したことで歓楽街となった。ごった煮といわれるほどアングラからメジャーまでさまざまなものが揃う。

愛知県名古屋市中区大須3

⚫︎大阪府 松尾芭蕉も立ち寄った地「天神橋筋商店街」

元々は寺町として栄えていた歴史を持つ、2.6㎞という日本一の長さを誇る商店街。総勢約500名で踊る天神天満阿波おどりで有名。

大阪府大阪市北区天神橋3-5

⚫︎兵庫県 全国有数の魚市場がある「魚の棚商店街」

約400年前の明石城築城の頃に起源を持つ商店街。「うおんたな」と呼ばれるその名の通り、鮮魚・海産物店が多く並ぶ。

兵庫県明石市本町1-1-16

⚫︎沖縄県 現地客と観光客入り交じる通り「市場本通り」

国際通りから約160mにわたって続く商店街。60店舗ほどが連なり、郷土菓子や地元客向けの老舗から観光客向けの店など多様。

沖縄県那覇市松尾2-8

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

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