我々日本人は湯に浸かることで温泉の恩恵を受けてきた。その効能は料理の味を引き立て、食することで体を整えることもある。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
※この記事は2024年12月号に掲載されたものです。
■知恵と文化の結実 日本人には温泉が流れる

温泉水で豆腐を煮た嬉野温泉の「温泉湯どうふ」は、江戸時代から長崎街道を行き交う行商人や旅人たちが食していたという。
温泉成分が豆腐に作用することで、煮汁に溶け出すほどのトロトロの食感を生む。まさに温泉文化と人間の知恵が結実した奇跡の料理である。
このように温泉の魅力は、浸かるだけにとどまらず私たちの食文化とも深く関係がある。鉄輪温泉の「地獄蒸し」は温泉蒸気を利用したものだが、こうした蒸し料理は各地にも見られる。
有名な「温泉まんじゅう」「温泉卵」もその一群で泉質ごとのミネラル成分の違いで味わいにも違いがある。卵本来の栄養素を最大限に引き出してくれる健康食なのである。
「飲泉」については文字通り温泉を飲むことで効能を積極的に体に吸収しようとする試み。その最古の記録は奈良時代の『日本書紀』の記述にまで遡るという。
こうして自然の恵みであるいで湯を、人々は健康と食の追求のためにさまざまに活用してきた。これらの取り組みは新たな伝統として受けつがれていく。
体の内と外から、存分に温泉の力を取り込みたい。
■湯どうふ[嬉野温泉]
豆腐本来の味わいがとろけだす

「温泉湯どうふ」発祥の店「宗庵 よこ長」では豆腐の自家製造から行う。弱アルカリ性の温泉水が豆腐のタンパク質を分散させ、豆腐のうま味が煮汁に溶けだし、口の中でとろける。
とくに女性にうれしい美容効果も期待でき、肌の潤いやターンオーバーの促進にもつながる。コクのある白いスープまで味わいたい。


宗庵 よこ長
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙2190
TEL/0954-42-0563
営業時間/10:30~15:30(15:00LO)、17:30~21:00(20:30LO)
定休日/水曜
■鉱泉おにぎり[湯之元温泉]
湯上がりの味

明治35年(1902)に湯治場として創業。田植えや稲刈りの疲れを癒す湯治客の間で、自炊の際に温泉水を使用してご飯を炊くと美味しいと評判になった。炭酸鉄泉の効果で米が薄く緑がかり、もともちとした食感となる。

湯之元温泉
宮崎県高原町大字蒲牟田7535
TEL/0984-42-3701
営業時間/10:00~22:00
定休日/水曜
■温泉食パン[出湯温泉]
温泉水100%でパンを仕込む

出湯温泉の観光客の減少から地域おこしのため、温泉水を使用したパン作りを始めた。“ここだけのパン”をめざし、要である水と酵母は阿賀野市で採れたものを使用。弱アルカリ性の温泉水と天然酵母の働きでパサつかず、ふわふわ、もちもちの食感だ。


出湯温泉パン工房
新潟県阿賀野市出湯809-1
TEL/0250-62-1566
営業時間/8:00~16:00(金曜は9:00〜)
定休日/水、木曜
■ラーメン「淡麗」[千石温泉]
温泉スープのために移転

ラーメンのスープ作りのため、千葉県から移転。爪や関節に効果的なシリカを豊富に含み、出汁も取りやすい超軟水の「千石温泉水」。温泉水そのものの甘みが加わり、まろやかで優しい味わいでありながら魚介のうま味たっぷりの一杯ができあがる。


ラーメン専門店 凜
鹿児島県霧島市国分新町846-4
営業時間/11:30~14:30
定休日/水曜
■炭酸泉せんべい[有馬温泉]
有馬の地に受け継がれる銘菓

明治時代に有馬温泉の炭酸泉が飲用にも適していることから考案された「炭酸せんべい」。昔からの手法で職人が1枚1枚丁寧に焼き上げ、ほんのりと甘い“いつまでも変わらない味”が好評。炭酸泉を用いることで、パリッとした軽い食感に焼き上がる。


有馬せんべい本舗
兵庫県神戸市北区有馬町266-10
TEL/078-904-0481
営業時間/8:30~18:00
定休日/不定休
※この記事は2024年12月号に掲載されたものです。
▼あわせて読みたい
いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。
我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。
