107092地下から探る宇宙の秘密「Super-Kamiokande(スーパーカミオカンデ)」|あなたが知らない謎の世界へ「地下迷宮ワンダーランド」

地下から探る宇宙の秘密「Super-Kamiokande(スーパーカミオカンデ)」|あなたが知らない謎の世界へ「地下迷宮ワンダーランド」

男の隠れ家編集部
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ニュートリノ物理学において数々の業績を残し、ノーベル賞にも貢献したスーパーカミオカンデ。宇宙の神秘に迫るその性能を、めったに見られない姿とともに紹介する。

画像提供/東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

■宇宙の謎を見つめる物理学約1万3000の目

岐阜県は飛騨市の山奥に位置する、スーパーカミオカンデは、前身であるカミオカンデの2代目として建造された実験装置である。実験装置といってもその規模は直径39.3m、高さ41.4mにも及ぶ巨大なものだ。

建設は平成3年(1991)に神岡鉱山内にて長期間をかけて行われた。硬い岩盤を掘り抜いた地下1000mもの底に位置している。

神岡鉱山が選定されたのは地質が硬い片麻岩でできており、巨大な空洞の掘削に耐えうるという理由からだった。

見える範囲すべてを埋め尽くすほど大量の光センサーはまさに圧巻。

岩盤の圧力に耐えるために壁面には固定用ロックボルトが2〜3m間隔で埋め込まれ、コンクリートで強化し、さらにはステンレス板が取り付けられている。

モジュール化された光電子増倍管が無数に取り付けられ、内部は5万tもの大量の超純水で満たされている。その様はまるで古代の神殿を思わせる威容だ。

これほどまでの大規模施設建設はいくつもの企業が参加したことで実現したものだ。地下空間の掘削は神岡鉱山の運営元である三井金属鉱業が、5万tもの水を溜めておけるタンクの製造は三井造船が行った。

タンク上部に存在するメンテナンス用の開口部。ここから整備に必要な機材などを吊り下げて搬入する。

またデータ取得の電子回路に関しては富士通が担当し、タンクを満たす超純水を供給するシステムはオルガノによるものである。

スーパーカミオカンデは、ニュートリノという粒子を主に観測・研究し、これまでにさまざまな成果を挙げている。平成27年(2015)にはスーパーカミオカンデによる観測でニュートリノが質量を示す、ニュートリノ振動を発見した東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章がノーベル物理学賞を受賞している。

ニュートリノは1930年にオーストリアの物理学者ヴォルフガング・パウリが放射線のエネルギー分布を研究する過程において、エネルギーの消失が起こっていることに「電気を帯びていない幽霊のような粒子」の存在を仮定した。

このときの粒子に「ニュートロン」として仮名が付けられ、これがニュートリノの先駆けとなった。1932年に中性子が発見されると、学会はこれをニュートロンとするものの、パウリの「幽霊のような粒子」の存在がさらにあると考えたイタリアの物理学者エンリコ・フェルミは改めてそれを「ニュートリノ」と名付け直して自論を説いた。

タンク内に水が満水寸前まで入った様子。稼働中はここからさらに注水される。

このニュートリノが実際に我々の前に姿を現すのは、1956年。アメリカのライネスとコーワンが原子炉から生まれるニュートリノをついに捕捉したのだ。仮説から発見まで20年以上かかったことになる。

しかし、その後もニュートリノの観測数が理論よりも少ない「太陽ニュートリノ問題」など、数々の難問で物理学者を悩ませている。

ニュートリノは、物質の最小単位である「素粒子」の一つである。そもそも物体はさまざまな物質で構成されているが、元をたどれば、分子の集合体である。

そしてこの分子もいくつもの原子が集まって構成されている。さらに原子自体も陽子と中性子という小さい物質であり、これ以上分解できない限界の粒が、「素粒子」である。

ニュートリノはこの素粒子の一つであり、宇宙のさまざまな場所でさまざまなときに生まれる。

タンクの模式図。坑道と比べるとその桁違いの大きさがわかる。

太陽などの恒星内部の核反応や、超新星爆発、宇宙の始まりといわれるビックバンからも生まれたというほか、宇宙線が大気と衝突したときなど、じつに多様な所からニュートリノは発生する。

こう聞くと壮大に思えるが、ニュートリノは目に見えないだけで非常に身近に存在する素粒子であり、現に宇宙は1㏄あたり平均300ほどのニュートリノで満たされているともいわれる。

また、数ある素粒子のなかでも、ニュートリノと電子は電荷の有無が違う親戚のような関係であり、電子の種類(電子、ミュー、タウ)に対応して、ニュートリノも電子型、ミュー型、タウ型の3種類が存在する。

さらに、ニュートリノに対応する反ニュートリノも同様に3種類が存在する。

⚫︎Question「ニュートリノとは?」

物質を構成する最小限度の単位である、素粒子の一つであり、なんでも通り抜ける性質を持つ。これはニュートリノがほかの素粒子と違い、電気を帯びていないからである。質量を持たないとされていたが、2015年に質量を持つことが発見された。

■星の最期を彩る華麗な爆発「かに星雲」

⚫︎Question「超新星爆発」

非常に重い質量を持つ星が寿命を迎える際に起こる爆発。星の内部で起こっていた核融合の結果、自分の質量を支えきれなくなった星が崩壊し、反動で大爆発を起こす。このときにニュートリノを含むエネルギーが解放される。

⚫︎Question「ガンマ線バースト」

通常の超新星の10倍以上の爆発力を持つ、極超新星が爆発する際に起こるとされる現象。大量のガンマ線が近隣の星系に大きな影響を与える。地球の近くでも4億年前に起こった可能性があり、それが生物の大量絶滅を招いたとする説がある。

超新星爆発が起きた後の残骸は有形無形に関わらず、数万年にわたり残留する。

⚫︎Question「かに星雲」

地球から約6500光年離れた、おうし座のあたりに存在する超新星残骸で現在も膨張を続けている。爆発は1054年頃とされ、これを目にしたという記録が世界各地に存在する。星雲自体は1731年にイギリス人のアマチュア天文家ジョン・ベヴィスが発見。

■宇宙誕生の謎に迫る? ニュートリノ実験の目的とは

ニュートリノはほかの物質とほとんど反応しないため、生まれたときの情報を持ったまま地球にも届く。そのため、ニュートリノが誕生した場所のことを直接調べることができる。

例えば太陽の中心部では核融合反応により絶えずニュートリノが放出されているが、そのニュートリノは太陽から8分で地球にやってくる。それに比べて光や熱は太陽の外に出てくるまで数万年かかる。

つまりニュートリノで太陽を見ることで、リアルタイムに太陽活動を観測することができるのだ。

職人が手吹きで製作したガラスを使っている光電子増倍管。繊細な扱いが求められる。

しかし宇宙からは、ニュートリノ以外に宇宙線といわれる粒子が降り注いでいて、検出器に入ってくるとニュートリノと同じような信号を出すため、ニュートリノ観測のノイズとなってしまう。

これを防ぐために、スーパーカミオカンデは地下に造られている。宇宙線は、物質とぶつかると止まるので、地下に検出器を置けば、ノイズとなる宇宙線は山で遮られ、ニュートリノだけが山を通り抜けて検出器にやってくる。

地下1000mに検出器を置くことで、宇宙線ノイズは地表の10万分の1に減ることになり、ニュートリノの観測がしやすくなるのだ。

ニュートリノは、未ださまざまな謎に包まれている素粒子である。同じ素粒子である「電子」の100万分の1よりも軽いといわれており、最小単位である素粒子としてもあまりの軽さのため、平成10年(1998)にスーパーカミオカンデの観測によって、ニュートリノ振動が発見されるまでは、「質量がない(ゼロ)」と信じられていたほど。

注水されたスーパーカミオカンデ内での作業はボートに乗りながら行う。

なぜこんなにも極端に軽いのか、現在も謎だ。スーパーカミオカンデ実験の目的の一つは、こうした性質の全容を解明することである。それは、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫ることにつながるのだ。

貴重なニュートリノの観測機会である超新星爆発は、スーパーカミオカンデの前身であるカミオカンデにて昭和62年(1987)2月23日に観測された。

これは地球から16万光年離れた大マゼラン星雲で起きた「SN1987A」という爆発だった。このときカミオカンデは11個のニュートリノを検出した。

これは超新星爆発からの検出としては世界初であり、その仕組みの解明に大きく寄与した観測だった。この成果はのちにスーパーカミオカンデ建設にもつながる「ニュートリノ天文学」の誕生に貢献した。

⚫︎Question「チェレンコフ光とは?」

1934年にソ連の物理学者パーヴェル・チェレンコフによって発見された現象。媒質中で粒子が光の速度を超えて移動するときに発される青い光。本来光を超えるスピードで移動することは不可能なため、水中などの環境下で起こる。

■星が最期を迎えるとき超新星爆発が起こる

星が生まれるときにはまず、宇宙に漂うガスが集まっていく。次第に質量が増大していくと、内部が高密度かつ、高温高圧になる。次に星内部で水素ガスが燃焼することで核融合が発生し、光る星が誕生する。

これに対して超新星爆発はこうした星のなかでも非常に質量のある重い星に起こる現象で、星が自分の重力に耐えられなくなったときに大爆発が起こり、エネルギーと衝撃波が宇宙に広がっていく。

これを重力崩壊といい、爆発の後も中性子星やブラックホールなどの残骸が残り、それらは10万年以上もの間、宇宙に残り続けるという。

超新星爆発とその残骸は古くから肉眼でも観測されており、平安時代には「かに星雲」の記録が残っていたこともある。この爆発の瞬間、大量にニュートリノが宇宙に放出されるが、スーパーカミオカンデは、これらを捉えるために24時間稼働している。

水底から宇宙に迫る約1万1129本の光センサー。

超新星爆発は銀河系内で30年~50年に1回、宇宙全体では1秒に1回起きるといわれているが、それがいつ起きるのかは予測できない。

そのうえ、そのニュートリノが観測できる時間はわずか10秒間しかない。この貴重なニュートリノを観測するには、鋭敏なセンサーが必要だ。そのためにスーパーカミオカンデ内には、光電子増倍管という光センサーが設置されている。

スーパーカミオカンデで使われている光電子増倍管は、直径50cmの電球のような形をしたガラス管の中に電極が入っている。光を受ける光電面と呼ばれる箇所には、金属が蒸着されており、ニュートリノとスーパーカミオカンデタンクの水の粒子が反応したときに放出される、チェレンコフ光というとても弱い光を検知する。

チェレンコフ光とはソ連時代にパーヴェル・チェレンコフによって1934年に発見された現象で、粒子が水や空気などの物質中を、光より速く進んだ場合に見られる。このチェレンコフ光の観測のために、スーパーカミオカンデのタンクには5万tもの水が満たされている。

建設中のスーパーカミオカンデを撮影した写真。山の岩盤をくり抜いて造られていることがよくわかる。壁面にはステンレス板が張られている。

スーパーカミオカンデの場合は、ニュートリノがタンク内に入ったとき、水の原子核と衝突し、その余波で飛び出した粒子や電子が、光以上の速度に達した場合、発生する。このとき、光は粒子の進行方向上に円錐状に発生する。これが光電子増倍管の光電面に当たると、光電効果により、金属から電子が放出される。

ガラス管内の電極には2000Vの高い電圧がかけられており、放出された電子を1000万倍に増幅して、電気信号として取り出せる。光電子増倍管は、受けた光の量と光を受けた時間についての情報が得られる。

それらをもとに、ニュートリノの荷電粒子のエネルギー、進行方向、位置、粒子の種類を決定する。スーパーカミオカンデ内にはこの光電子増倍管を多数設置。

内向きに直径50㎝のものが1万1129本、外向きに直径20㎝のものが1885本取り付けられている。ガラスは、職人の手で一つひとつ手作りされたものだ。

スーパーカミオカンデのタンクは、観測のために大量の水に満たされており、大規模整備のとき以外はタンクの水が抜かれることはない。

前回水が抜かれたのは平成30年(2018)だが、このときはメンテナンスを行いながら少しずつ水位を下げていった。タンク内を満たす水を汚染しないよう、作業服を着用し、また光電子増倍管を傷つけないよう、繊細な作業となる。

タンク外側の外水槽から水を抜いた様子。

近年は新たな挑戦としてタンク中の純水にレアアースの一種、ガドリニウムを導入し、宇宙誕生から蓄積されたニュートリノ「超新星背景ニュートリノ」などの観測に挑んでいる。

宇宙には数千億個もの銀河が存在し、どこかで今も超新星爆発が起きている。爆発で放出されたニュートリノは宇宙に拡散、蓄積される。

これを調べることで宇宙のどの時期に多くの超新星爆発が起きていたかという「超新星爆発の歴史」や、超新星爆発でブラックホールが発生する割合などを知ることができるという。

スーパーカミオカンデではこれらを観測することはできなかったが、ガドリニウムにより観測精度を上げることで、ノイズと超新星背景ニュートリノの反応を見分けることができるようになった。

スーパーカミオカンデは鉱山内という環境のため見学機会は限られており、東大が毎年秋に主催する「スーパーカミオカンデ一般公開」などが見学するわずかな機会だ。

スーパーカミオカンデの検出器内部はつねに稼働中のため見学できないが、坑道を通って実験施設を見ることができ、宇宙線研究所で働く現役の研究者の講座を受けることもできる。

事前予約が必要で、多数の応募が殺到する超人気イベントだ。最先端研究が行われている施設を、希少な機会を逃さずぜひ一度見てほしい。

スーパーカミオカンデ
岐阜県飛騨市神岡町東茂住456

[スペック]
直径/39.3m
高さ/41.4m
水の体積/5万t
光センサー/直径50cm:1万1129本、直径20cm:1885本

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